Tテレの新しい報道番組『日本大変革 私たちの暮らしはどう変わる』のメインキャスターのT場聖乃は、会議室に揃ったメンバーの顔を順番に眺めていた
テレビの報道番組が出来る事とは何だろう。そんな自問自答を繰り返しながら、前メインキャスターのO倉から番組を引継いで早や3年、番組タイトルこそ変わったものの、この国の世相をカメラアイで切り取って、オンエアしてきた積りだった
いつの間にか日本は世界と距離を置く国になり、国民の関心は自分たちの周囲のできごとと、政府が発表する最新テクノロジーの成果、そして、日本守護神となったGの動静に注がれたままだ
若い頃A国に留学して、A国流の個人第一主義を謳歌した聖乃にとって、現在の日本第一主義にはなにか引っかかるものがある。それでもこんなご時世だから、やむ得ないことだと自分に言い聞かせていたのだ
ふと、自分に注がれている眼差しに気付いたT場が見返した先に、出張キャスターとしていつの間にか企画の中枢を占めているDがいた
「Dさん、なにかアイディアがあるの?」ストレートに発言したT場と、訊ねられたDの二人に企画会議の出席メンバーの視線が集まる
「どうでしょうか、この日本をどこに連れていきたいのか、Gに直接質問するってぇのは」
「はぁ、そりゃそれができればいいけど、貴方、まだGとコネクション持ってるの?」
「いやいや、Gとのコネクションがまだあるなんて思ってませんけど、ちょっと心当たりのある人物なら」
D以外に、これはというような案が出ないまま会議を終わることになった聖乃は、なんとかDの伝手が本ネタであることを祈った
DもDで、停滞していた企画会議に一石投じるくらいの気持ちで言い出した案が、いつの間に『日本大変革』の目玉企画になることを背負い込まされて、ちょっと自分で自分を追い込みすぎたなと後悔していた
Gが脚光を浴びたTT作戦を、ほぼTテレだけに独占取材させてもらえたことで、仲介者Aとの繋がりを局のお偉方が認めることになったのは事実だ
そのAが、T山荘のガス爆発事故で亡くなると縁も切れたかと思われたが、なぜか警察上層部からF原発廃炉処理の取材許可が出たことで、思っていたより深いコネがあることが認知されたのだった
そんなDには、誰にも(TT作戦放映後に結婚した幼馴染の咲江にも)話していない秘密がある
T山荘事件が、単純なガス爆発事故ではなく、某国のスパイ集団の襲撃によるもので、それを防いだ公安らしき集団との攻防戦があったらしいと、取材を始めると、影忍者と名乗る人物が接触して来て、Dをグリーンマンのサブメッセンジャーにすることで、T山荘事件を探らないことを約束させられていた
D自身、警察のK刑事に当ってはいたものの、捗々しい返答は得られていなかったこともあり、表面は渋々、内面は渡りに船と、この話に乗った。ただ、その後影忍者からの接触は無く、一応もらっていた連絡先は常にお話し中のまま、2年近くが過ぎていた
企画会議で、思わず脈のありそうなことを言い出した手前、なにがなんでも今日中に通話できないとまずいと思い、Dは覚悟して教えてもらった電話番号にかけ続けた
本当に無駄な番号なら、お話し中などでなく番号解約するだろうというのが、あきらめない根拠だった
2025年03月13日
2025年03月08日
StageV ネオ鎖国日本 揺籃期…鳴動(2)
A県警組織犯罪対策局捜査第四課課長補佐になったばかりのK警部は、第一係二係全員が出払って、がらんとなっている室内を眺めて、自分も現場に出張りたい衝動と闘っていた
かれこれ10年くらい経つのだろうか、今や日本守護神となったグリーンマンの配下の忍者男が単身潜入し、大打撃を与えたR会と三国人ギャングたちの合併組織P連合は、今やC国マフィア中心の外国犯罪組織になっていたが、警察庁の海外犯罪組織完全撲滅方針の徹底により、A県警でもP連合壊滅作戦が佳境を迎えていた
第二係は機動隊と共に港区にあるP連合第2支部を、第一係も機動隊と共同作戦で中区のP連合第1支部を急襲していた
警察庁の指令は苛烈なもので、組織員は誰彼かまわず、全てしょっ引けというものであり、昨年末に可決されていた“新暴対法”によって、外国籍の犯罪組織員には日本の弁護人を付けず、即国外追放処分という方針が示されていた
もちろん、海外犯罪組織の日本上陸は、最新AIシステムによる身分チェックが完璧に作動し、同時に、外国諜報員の侵入まで、緊密に防いでいた
さらに、一時期活況を呈したインバウンド需要の促進策は影を潜め、本当に日本の文化や風景を体験したい者以外、いわゆる買物優先の外国人観光客には、かなり厳しいビザ発給規制が施行されていた
窓外のN市中心部を行き来している車の数には、左程変化は見られないものの、夜の繁華街の人出は大分減っているらしいが、それでも一本芯が通ったかのような昨今の風潮は、Kには好ましいものに思えている
そう言えば昔、グリーンマンが親分のデスクを県警の駐車場に持ち込んだS会はつぶれたが、その時の若頭のT野が興したT組は、N市の夜の街を仕切っている
大層な後ろ盾が居たと言うが、どうやら昔ながらの(や)組織は、壊滅もされず、ある意味夜の街の調整役として、機能しているようだなとKは独り頷いた
*
千代田区内幸町1丁目にそびえるT電本社ビル屋上ヘリポートに降り立ったH池は、ローターが止らぬうちに機外に出たことを後悔していた
綺麗に整えられていた銀髪は乱れ、ネクタイもよじれたようになってしまっている
傍らのD島専務は見事に禿げ上がった頭を振りながら「社長、御髪が大変なことになってますなあ」と、笑いながら声を掛けて来る
F県の第2原子力発電所のプルサーマル化を終え、保安対策を優先したN潟県のK崎原発も暫時稼働が決まっている今、Gがやってくれた廃炉跡の汚染土処理を、銀河連盟の超技術が全て整備してくれた結果、今日の新第1原発の竣工式が迎えられ、これで自分の役割が終えられるなと、感慨深いものがあった
政府から、日本の発電量の6割を超える石炭・LNG・石油による火力発電を、全て原子力発電(総発電量の6%に満たない)に置き換えるという指針が示されたとき、その裏に守護神Gと政界の黒幕の意向があることを知り、先行していたK西電力と共に銀河連盟の技術供与によるプルサーマル発電の確立と、超蓄電池による配電方式に舵を切った
さらに、総延長約138万kmと言われる“鋼心アルミより線”を全て回収することで、資源の僅少なこの国の新たな鉱物資源に充てるという計画に、社を挙げて邁進することを決めたのだった
また、海外ゲリラの攻撃が想定されるK崎原発の、建屋と敷地をすっぽり覆う高電磁鍍金を施されたドームは、恐らくどのような武力攻撃にも耐えうると言うし、それは巨大地震や大津波にも耐久力を発揮してくれるはずだ
*
霞が関1丁目の経産省本館ビル15階小会議室で、貿易経済安全保障局 経済安全保障課の課長N林駿は、同期入省の通商政策局通商戦略課課長K谷宙生と声を潜めて情報交換している最中だった
「次官は本気で悩んでますね」とK谷「だよなぁ。大臣は総理の方、見過ぎだな」と返すN林
「とにかく我が国の、国際的な貿易収支の規模は縮小の一途ですからね」とK谷「G7どころか、東南アジア諸国よりも経済規模が小さくなりそうなんだから…」
「国連への貢献度も縮小、ODEなんかほぼ0」「世界から見たら、この国の存在価値はダダ下がりだからな」「国内的には、火力発電の全面停止に向けて原発依存と宇宙太陽光発電に、順調にチェンジ中ですがね」
「あれだろ、科技庁が推進してる光合成システム製の合成飼料の成績もいいんだろ?」「ええ」
「なんと言っても銀河連盟さまさまだよな」「だから、それが日本一国だけの恩恵なんで、世界が日本を見る目がキツくなるんですよ」
「でも、擦り寄って来る国も結構あるんだろ」「ええ、主にアジア圏ですが、何ヶ国かとあとは南米のあの国、欧州でもEUに内緒で何ヶ国か、あと豪州が日本寄りのシグナル出してるようですね」
「アラブはどうなの?」「あちらは化学製品材料としての原油輸入が残ってますから、様子見中ってとこですかね」「金の切れ目が縁の切れ目ってぇのは、古今東西皆同じだからな」
「まあ、どっちにせよはっきりとは言ってないものの、日本が世界経済から距離を置こうとしているのは、見え見えだもんな」「ネオ鎖国だって、マスコミは騒いでますけど、私的には未来図が明確になりそうで、全く反対ではないですが。後は、世界の強国の表立った抗議があったとき、総理はどうなさるか、ですよね」
「北の方はどうなの?」「様子見のようですが、外務省は戦々恐々のようですね」「防衛省は、強気なんだって?」「そうそう、外装強化と超蓄電池による動力革命が、銀河連盟さまの技術援助で、爆上がりらしいですね」
「C国派どうなの?あれ以来EEZの侵犯も激減してるんだろ」「こちらの企業のC国離れも随分進んでますし、文化スポーツ交流以外、貿易規模は縮小また縮小ですよ」
二人は顔を見合わせると、まあお互い頑張っていこう、と言って話を切り上げた
かれこれ10年くらい経つのだろうか、今や日本守護神となったグリーンマンの配下の忍者男が単身潜入し、大打撃を与えたR会と三国人ギャングたちの合併組織P連合は、今やC国マフィア中心の外国犯罪組織になっていたが、警察庁の海外犯罪組織完全撲滅方針の徹底により、A県警でもP連合壊滅作戦が佳境を迎えていた
第二係は機動隊と共に港区にあるP連合第2支部を、第一係も機動隊と共同作戦で中区のP連合第1支部を急襲していた
警察庁の指令は苛烈なもので、組織員は誰彼かまわず、全てしょっ引けというものであり、昨年末に可決されていた“新暴対法”によって、外国籍の犯罪組織員には日本の弁護人を付けず、即国外追放処分という方針が示されていた
もちろん、海外犯罪組織の日本上陸は、最新AIシステムによる身分チェックが完璧に作動し、同時に、外国諜報員の侵入まで、緊密に防いでいた
さらに、一時期活況を呈したインバウンド需要の促進策は影を潜め、本当に日本の文化や風景を体験したい者以外、いわゆる買物優先の外国人観光客には、かなり厳しいビザ発給規制が施行されていた
窓外のN市中心部を行き来している車の数には、左程変化は見られないものの、夜の繁華街の人出は大分減っているらしいが、それでも一本芯が通ったかのような昨今の風潮は、Kには好ましいものに思えている
そう言えば昔、グリーンマンが親分のデスクを県警の駐車場に持ち込んだS会はつぶれたが、その時の若頭のT野が興したT組は、N市の夜の街を仕切っている
大層な後ろ盾が居たと言うが、どうやら昔ながらの(や)組織は、壊滅もされず、ある意味夜の街の調整役として、機能しているようだなとKは独り頷いた
*
千代田区内幸町1丁目にそびえるT電本社ビル屋上ヘリポートに降り立ったH池は、ローターが止らぬうちに機外に出たことを後悔していた
綺麗に整えられていた銀髪は乱れ、ネクタイもよじれたようになってしまっている
傍らのD島専務は見事に禿げ上がった頭を振りながら「社長、御髪が大変なことになってますなあ」と、笑いながら声を掛けて来る
F県の第2原子力発電所のプルサーマル化を終え、保安対策を優先したN潟県のK崎原発も暫時稼働が決まっている今、Gがやってくれた廃炉跡の汚染土処理を、銀河連盟の超技術が全て整備してくれた結果、今日の新第1原発の竣工式が迎えられ、これで自分の役割が終えられるなと、感慨深いものがあった
政府から、日本の発電量の6割を超える石炭・LNG・石油による火力発電を、全て原子力発電(総発電量の6%に満たない)に置き換えるという指針が示されたとき、その裏に守護神Gと政界の黒幕の意向があることを知り、先行していたK西電力と共に銀河連盟の技術供与によるプルサーマル発電の確立と、超蓄電池による配電方式に舵を切った
さらに、総延長約138万kmと言われる“鋼心アルミより線”を全て回収することで、資源の僅少なこの国の新たな鉱物資源に充てるという計画に、社を挙げて邁進することを決めたのだった
また、海外ゲリラの攻撃が想定されるK崎原発の、建屋と敷地をすっぽり覆う高電磁鍍金を施されたドームは、恐らくどのような武力攻撃にも耐えうると言うし、それは巨大地震や大津波にも耐久力を発揮してくれるはずだ
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霞が関1丁目の経産省本館ビル15階小会議室で、貿易経済安全保障局 経済安全保障課の課長N林駿は、同期入省の通商政策局通商戦略課課長K谷宙生と声を潜めて情報交換している最中だった
「次官は本気で悩んでますね」とK谷「だよなぁ。大臣は総理の方、見過ぎだな」と返すN林
「とにかく我が国の、国際的な貿易収支の規模は縮小の一途ですからね」とK谷「G7どころか、東南アジア諸国よりも経済規模が小さくなりそうなんだから…」
「国連への貢献度も縮小、ODEなんかほぼ0」「世界から見たら、この国の存在価値はダダ下がりだからな」「国内的には、火力発電の全面停止に向けて原発依存と宇宙太陽光発電に、順調にチェンジ中ですがね」
「あれだろ、科技庁が推進してる光合成システム製の合成飼料の成績もいいんだろ?」「ええ」
「なんと言っても銀河連盟さまさまだよな」「だから、それが日本一国だけの恩恵なんで、世界が日本を見る目がキツくなるんですよ」
「でも、擦り寄って来る国も結構あるんだろ」「ええ、主にアジア圏ですが、何ヶ国かとあとは南米のあの国、欧州でもEUに内緒で何ヶ国か、あと豪州が日本寄りのシグナル出してるようですね」
「アラブはどうなの?」「あちらは化学製品材料としての原油輸入が残ってますから、様子見中ってとこですかね」「金の切れ目が縁の切れ目ってぇのは、古今東西皆同じだからな」
「まあ、どっちにせよはっきりとは言ってないものの、日本が世界経済から距離を置こうとしているのは、見え見えだもんな」「ネオ鎖国だって、マスコミは騒いでますけど、私的には未来図が明確になりそうで、全く反対ではないですが。後は、世界の強国の表立った抗議があったとき、総理はどうなさるか、ですよね」
「北の方はどうなの?」「様子見のようですが、外務省は戦々恐々のようですね」「防衛省は、強気なんだって?」「そうそう、外装強化と超蓄電池による動力革命が、銀河連盟さまの技術援助で、爆上がりらしいですね」
「C国派どうなの?あれ以来EEZの侵犯も激減してるんだろ」「こちらの企業のC国離れも随分進んでますし、文化スポーツ交流以外、貿易規模は縮小また縮小ですよ」
二人は顔を見合わせると、まあお互い頑張っていこう、と言って話を切り上げた
2025年02月23日
StageV ネオ鎖国日本 揺籃期…鳴動(1)
当時、日本の外交姿勢の激変にC国外交部を始め、ひっそり事の成り行きを注視していた各国外交機関も大いに驚くと同時に、その後の進展を興味深く窺ったが、その日以降なんの動きも見せずに、静まり返っているのが不気味だと、囁かれていた
*
*
*
窓のカーテンの隙間から射し込む陽光の眩しさに起こされて、K市役所観光課勤務のY村次利は、今日は日曜日だったよな、と自問自答しながらも、それでも若さに任せてひょいと起き上がる
これぞ五月晴れという天気が窓の外に広がっている
瀬戸内海に面した、明治以来の軍港のあるK市で生まれ育ち、H大学で経済学を学んだのだが、昨今の日本経済は、独自路線を進み始めたので、学校で学んだことは、ほとんど役に立っていない
それでも母の実家のコネで市役所に入れたし、この春からは市民課からなにやら楽しそうな観光課に異動できて、やりがいも感じ始めているところだ
自宅を出て、自転車で坂道を下って行けば、目の前に瀬戸内海の穏やかな景色が広がり、海自の艦船がきれいに並んでいるのと、N郵船の巨大なタンカーも見える
その全長330mを超える巨船よりひとまわり大きい灰色の巨大な物体は、この春、日本の守護神グリーンマンが、K港に飛来して海上に設置した超大型高電磁鍍金浮きドックだ(そのとき、それを偶然見た者は、まるで遊園地のふわふわが膨らむように、簡単に海に浮かんだと言うことだ)
それから1ト月もしないうちに、K港配備の護衛艦群は、大は空母から小は補助艦艇に至るまで、浮きドックで強化加工されたのだと、市民は噂している
海自の艦艇の半数が配備されているY須賀基地では、至近に駐留しているA国太平洋艦隊に配慮して、強化加工は遅れているようだとも、皆は言っている
強化加工はK市の日常でも増えていて、先日もタクシーに衝突した乗用車の事故を見たが、どちらも凹みひとつ無く、乗っていた人は笑顔でお互いに無事だったことを喜んでいた
K市では市役所の駐車場と、運動公園内、大型ショッピングセンターの駐車場に無料の強化ドームが設置されていて、市民なら誰でも金属製の製品ならなんでも、強化加工(正式には高電磁鍍金と言う)してもらえる
次利も今乗っている自転車を強化加工してもらっているので、もし転んでも自転車は無事なはずだ(タイヤはゴム製なのでどうなるかはわからないが…)
日本は今やもったいない精神の国になっていて、車もマイナーチェンジは影を潜め、電化製品も同様だ(プラスチックもある程度強化されるらしい)
その傾向が一番現れているのが、公共設備の再強化で、市でも水道管、下水管の埋設交換をどしどし進めているし、電気の利用はいち早く電線による給電から、各戸に配置された超蓄電池に切り替わっている
そう言えば、自動車も従来の化石燃料エンジン車から、電動車にほぼ切り替わっている。これも超蓄電池の性能アップが大きく貢献している
グリーンマンが主導したNEO鎖国計画は、初動時こそ物議を醸したが、実際展開され始めると、ごく一部の高所得者層を除き、国民の大多数を占めるそうでない層”の支持を得ることができている
反対勢力と言えば、高所得者層とは言えずとも、自分たちより恵まれない世界の難民たちに同情を示す、人類愛至上主義者たちも、激しく反対の声を上げた
この人たちは、首都圏や大都市に多く、休日にヒステリックなシュプレヒコールを上げて、デモ行進をすることで、マスコミの注視を浴びていた
地方都市に住んでいる次利や。その周りの人たちは、身近な物事が、以前よりスムーズに進展していることに、満足感を覚えこそすれ、大都会の住民がことさら声高に叫ぶ世界の窮状を日本の技術で救おう!”の標語には、無関心だった
ただ、海自の軍港があるお蔭で、そういった主張よりも日本再軍国化反対!”と主張する、いわゆる9条見直しデモの方が、気になることではあった
そうした世相の変化は、日本の外貨獲得の主力産業であった製造業の、中でも機械製造業界に顕著に表われ、海外への銀河文明由来の製造技術はおろか、日本で改良改変した製品類は、改正輸出法により一切輸出禁止となって、製造業界は大幅な縮小を見ていた
製造業のみならず、第一次産業である農林水産業においては、光合成システムによる優良炭水化物の工場生産により、畜産業の飼料問題は画期的な生産単価引き下げにより、既に輸出体制が整っていた米や果物に続いて、肉質において輸出競争力が格段に伸長していた
水産業も然りで、強化された海上保安庁の巡視船は、領海内は当然、EEZ水域における自国漁船団の保護を積極的に推進して、日本独自の海産物漁獲コントロールを可能にしていた
そのように、産業構造が大きく変化した国内労働人口の移動は、当時の日本政府が掲げた日本に適した生産体系の実現を成していった
もうひとつ大きな社会変革として、子どもの養育と教育体制の拡充があった
過去の日本において、大きな社会問題であった新生児の健全養育体制”と育児支援制度に、金と優秀な人材がつぎ込まれたこと
学校教育において、生徒個々の理解度に見合う適正教育制度の確立がある
具体的には、教員資質の向上を目的とした文科省の大改革と、学校施設への資金投入が円滑に動き始めたことにある
NEO鎖国体制の根本政策である、目的意識の高い国民優遇政策により、かつて議論を呼んでいた移民政策は実現を見ず、警視庁に新設された日本版FBIの活躍で、いわゆる不良外人や海外諜報員は、この国から徐々に締め出されつつあり、いち地方公務員のY村にも、庶民の暮らし向きは随分改善されている実感があった
*
警察庁の、対外国諜報活動抑止局次長になったD田は、自分が見込んだグリーンマンが、この国の守護神として、国際社会から一目置かれる存在として、後ろ盾になってくれた日のことを鮮明に覚えている
今は亡き富士の老人が、残った命の炎を燃やして、政府与党の民自党幹部たちに活を入れ、腹を括ったS部首相が誠意を尽くした名演説で閣内をまとめ、野党の幹部たちと渡り合ったあの日、この国は地球人類として未知の未来に向かって踏み出したのだが、早速起きた他国からの干渉を、グリーンマンが排除してくれた
4つの重要な銀河文明の先進技術を、この国にのみ与え、次の地球人類の危機に備えると言う、壮大なビジョンに、いやがうえにも政治家と官僚たちは得心し、一気に国を挙げてNEO鎖国という荒唐無稽にも思える未来に向けて舵を切ったのだ
日本の弱点であった乏しい資源と、ままならぬ食料事情という問題は解消され、他国の軍事的恫喝を跳ね返すだけの軍事力を有し、勤勉で自然との共生を愛する日本人の良さを、自国だけで成し遂げられる未来を、手に入れる目星が立ったのだ
この先、様々な国際社会との軋轢は起ころうが、それを押しのけてこの国は前に進むのだと、思うD田だった
*
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窓のカーテンの隙間から射し込む陽光の眩しさに起こされて、K市役所観光課勤務のY村次利は、今日は日曜日だったよな、と自問自答しながらも、それでも若さに任せてひょいと起き上がる
これぞ五月晴れという天気が窓の外に広がっている
瀬戸内海に面した、明治以来の軍港のあるK市で生まれ育ち、H大学で経済学を学んだのだが、昨今の日本経済は、独自路線を進み始めたので、学校で学んだことは、ほとんど役に立っていない
それでも母の実家のコネで市役所に入れたし、この春からは市民課からなにやら楽しそうな観光課に異動できて、やりがいも感じ始めているところだ
自宅を出て、自転車で坂道を下って行けば、目の前に瀬戸内海の穏やかな景色が広がり、海自の艦船がきれいに並んでいるのと、N郵船の巨大なタンカーも見える
その全長330mを超える巨船よりひとまわり大きい灰色の巨大な物体は、この春、日本の守護神グリーンマンが、K港に飛来して海上に設置した超大型高電磁鍍金浮きドックだ(そのとき、それを偶然見た者は、まるで遊園地のふわふわが膨らむように、簡単に海に浮かんだと言うことだ)
それから1ト月もしないうちに、K港配備の護衛艦群は、大は空母から小は補助艦艇に至るまで、浮きドックで強化加工されたのだと、市民は噂している
海自の艦艇の半数が配備されているY須賀基地では、至近に駐留しているA国太平洋艦隊に配慮して、強化加工は遅れているようだとも、皆は言っている
強化加工はK市の日常でも増えていて、先日もタクシーに衝突した乗用車の事故を見たが、どちらも凹みひとつ無く、乗っていた人は笑顔でお互いに無事だったことを喜んでいた
K市では市役所の駐車場と、運動公園内、大型ショッピングセンターの駐車場に無料の強化ドームが設置されていて、市民なら誰でも金属製の製品ならなんでも、強化加工(正式には高電磁鍍金と言う)してもらえる
次利も今乗っている自転車を強化加工してもらっているので、もし転んでも自転車は無事なはずだ(タイヤはゴム製なのでどうなるかはわからないが…)
日本は今やもったいない精神の国になっていて、車もマイナーチェンジは影を潜め、電化製品も同様だ(プラスチックもある程度強化されるらしい)
その傾向が一番現れているのが、公共設備の再強化で、市でも水道管、下水管の埋設交換をどしどし進めているし、電気の利用はいち早く電線による給電から、各戸に配置された超蓄電池に切り替わっている
そう言えば、自動車も従来の化石燃料エンジン車から、電動車にほぼ切り替わっている。これも超蓄電池の性能アップが大きく貢献している
グリーンマンが主導したNEO鎖国計画は、初動時こそ物議を醸したが、実際展開され始めると、ごく一部の高所得者層を除き、国民の大多数を占めるそうでない層”の支持を得ることができている
反対勢力と言えば、高所得者層とは言えずとも、自分たちより恵まれない世界の難民たちに同情を示す、人類愛至上主義者たちも、激しく反対の声を上げた
この人たちは、首都圏や大都市に多く、休日にヒステリックなシュプレヒコールを上げて、デモ行進をすることで、マスコミの注視を浴びていた
地方都市に住んでいる次利や。その周りの人たちは、身近な物事が、以前よりスムーズに進展していることに、満足感を覚えこそすれ、大都会の住民がことさら声高に叫ぶ世界の窮状を日本の技術で救おう!”の標語には、無関心だった
ただ、海自の軍港があるお蔭で、そういった主張よりも日本再軍国化反対!”と主張する、いわゆる9条見直しデモの方が、気になることではあった
そうした世相の変化は、日本の外貨獲得の主力産業であった製造業の、中でも機械製造業界に顕著に表われ、海外への銀河文明由来の製造技術はおろか、日本で改良改変した製品類は、改正輸出法により一切輸出禁止となって、製造業界は大幅な縮小を見ていた
製造業のみならず、第一次産業である農林水産業においては、光合成システムによる優良炭水化物の工場生産により、畜産業の飼料問題は画期的な生産単価引き下げにより、既に輸出体制が整っていた米や果物に続いて、肉質において輸出競争力が格段に伸長していた
水産業も然りで、強化された海上保安庁の巡視船は、領海内は当然、EEZ水域における自国漁船団の保護を積極的に推進して、日本独自の海産物漁獲コントロールを可能にしていた
そのように、産業構造が大きく変化した国内労働人口の移動は、当時の日本政府が掲げた日本に適した生産体系の実現を成していった
もうひとつ大きな社会変革として、子どもの養育と教育体制の拡充があった
過去の日本において、大きな社会問題であった新生児の健全養育体制”と育児支援制度に、金と優秀な人材がつぎ込まれたこと
学校教育において、生徒個々の理解度に見合う適正教育制度の確立がある
具体的には、教員資質の向上を目的とした文科省の大改革と、学校施設への資金投入が円滑に動き始めたことにある
NEO鎖国体制の根本政策である、目的意識の高い国民優遇政策により、かつて議論を呼んでいた移民政策は実現を見ず、警視庁に新設された日本版FBIの活躍で、いわゆる不良外人や海外諜報員は、この国から徐々に締め出されつつあり、いち地方公務員のY村にも、庶民の暮らし向きは随分改善されている実感があった
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警察庁の、対外国諜報活動抑止局次長になったD田は、自分が見込んだグリーンマンが、この国の守護神として、国際社会から一目置かれる存在として、後ろ盾になってくれた日のことを鮮明に覚えている
今は亡き富士の老人が、残った命の炎を燃やして、政府与党の民自党幹部たちに活を入れ、腹を括ったS部首相が誠意を尽くした名演説で閣内をまとめ、野党の幹部たちと渡り合ったあの日、この国は地球人類として未知の未来に向かって踏み出したのだが、早速起きた他国からの干渉を、グリーンマンが排除してくれた
4つの重要な銀河文明の先進技術を、この国にのみ与え、次の地球人類の危機に備えると言う、壮大なビジョンに、いやがうえにも政治家と官僚たちは得心し、一気に国を挙げてNEO鎖国という荒唐無稽にも思える未来に向けて舵を切ったのだ
日本の弱点であった乏しい資源と、ままならぬ食料事情という問題は解消され、他国の軍事的恫喝を跳ね返すだけの軍事力を有し、勤勉で自然との共生を愛する日本人の良さを、自国だけで成し遂げられる未来を、手に入れる目星が立ったのだ
この先、様々な国際社会との軋轢は起ころうが、それを押しのけてこの国は前に進むのだと、思うD田だった
2025年02月12日
StageV ネオ鎖国日本 揺籃期…創生(6)
日本変革の胎動に、最初に気が付いたのは近隣の大国C国と、太平洋を隔てた大国のA国だった
どちらも想定内ではあったが、初動時にあれやこれやを言われたくなかった政府(特に外務省)部内は、相当動揺したが、S部総理は富士の老人の後ろ盾もあって、表面は粛然と政務をこなしていた
私は私でこの時期は、かなり頻繁にジュブブとの意見交換(というより私も分からないこの先の展望の確認)に、時間を費やしていた
そもそも私の疑問は、超人として人類全体を救済の対象にすべきではないかと言う点にあった
肌の色や宗教の違い言葉の違いを超えた、普遍的な人類愛を尊重すべきなのではと、その一点に執着した
ジュブブの意見はこうだった
『最初の超人も2番目も、そのような観点で任務を遂行しようとしていたが、一人は自分が関わった人間を救いたい衝動に悩み、二人目は行動を起こす前に、超人の行動規範を作ろうとして挫折したのだ』
『君がここまでうまくやれたのは、自らの感知した事象を素直に対象にし、それを拡大しない所にあったのだ。左程大きくは無いとは言え、いち惑星に一人だけの超人では、全てを救済対象とすることは、元々不可能なことは前提で、最上位種のノーマル個体の対応を記録することが、銀河連盟の主目的だったのだ』
やはりそうだったのか、と言うのが私の反応だった
人類より遥に進んだ銀河文明からすれば、いち惑星の最高位生物の盛衰など、些細な問題に過ぎないのは理解出来るが、そこにわざわざ超人化した原住民を任命する意味が分からない
それをジュブブに質問すると『これまで銀河文明を形成していた融合積層型生命体は、極限形態において成長停止から衰退に至ることが判明した。結果、常に不確定因子を内包する分裂進化型生命体の不確定進化の存在意義が、改めて脚光を浴びることになったのだ』
『加えて官の意見を付記するなら、その努力の方向性こそ尊重すべきなのだ』…なるほど
なにやら分かったような分からぬような、ジュブブとの問答をしていると、人類が直面している諸問題など、取るに足らないものに思えてくる
そんな私の個人的な葛藤など無視するように、緒に着いた日本完全独立国家計画は、自衛隊の装備が高電磁鍍金により、無敵のレベルになれると確信できると、防衛省の制服組の鼻息が荒くなった
それは、世界を襲った新型ウイルスのパンデミックが収まり、世界には従来通りの経済循環が復活し、各国は再び他国の動静にも、気を配り始めていたことに所以する
折しも欧州では、突然国境を越えてR国が隣国に攻め入り、日本近海ではC国沿岸警備隊の大型巡視船が、日本領海の端にあるS島付近に、頻繁に出没するようになった
諸島ゾーンの警備は、日本でも海上保安庁の管轄になっていて、海自が出てしまえば相手も軍が出て来ることになるので、相手よりひと回り小さい巡視船が出張ることになる
そんなきな臭い海域で、事件は起こるべくして起きたのだった
その日、ひと回り以上大きなC国沿岸警備隊の大型巡視船が、威圧感満載で、ひと回り小さな日本の巡視船に、邪魔だとばかりに体当たりをかました
両船が接触したとたん、バチバチッと激しい火花と爆音が響いて、C国巡視船は弾かれるように進路を変えられ、さらに船腹は大きく破損していた
両船の船長はともに驚いたが、日本の巡視船の船長と操舵室のクルーたちには笑みが浮かび、C国巡視船の船長以下には驚愕の表情が張り付いていた
C国巡視船海防47”の船長の報告により、C国外交部に呼び出された駐C国大使のN前は、丸こい顔に申し訳なさそうな表情を浮かべ「御国巡視船が当方の巡視船に故意に接舷した結果、弾き返された事故だと承知しております。謝罪でしたらお受けしたいと思いますが」と強気な言葉を返した
どちらも想定内ではあったが、初動時にあれやこれやを言われたくなかった政府(特に外務省)部内は、相当動揺したが、S部総理は富士の老人の後ろ盾もあって、表面は粛然と政務をこなしていた
私は私でこの時期は、かなり頻繁にジュブブとの意見交換(というより私も分からないこの先の展望の確認)に、時間を費やしていた
そもそも私の疑問は、超人として人類全体を救済の対象にすべきではないかと言う点にあった
肌の色や宗教の違い言葉の違いを超えた、普遍的な人類愛を尊重すべきなのではと、その一点に執着した
ジュブブの意見はこうだった
『最初の超人も2番目も、そのような観点で任務を遂行しようとしていたが、一人は自分が関わった人間を救いたい衝動に悩み、二人目は行動を起こす前に、超人の行動規範を作ろうとして挫折したのだ』
『君がここまでうまくやれたのは、自らの感知した事象を素直に対象にし、それを拡大しない所にあったのだ。左程大きくは無いとは言え、いち惑星に一人だけの超人では、全てを救済対象とすることは、元々不可能なことは前提で、最上位種のノーマル個体の対応を記録することが、銀河連盟の主目的だったのだ』
やはりそうだったのか、と言うのが私の反応だった
人類より遥に進んだ銀河文明からすれば、いち惑星の最高位生物の盛衰など、些細な問題に過ぎないのは理解出来るが、そこにわざわざ超人化した原住民を任命する意味が分からない
それをジュブブに質問すると『これまで銀河文明を形成していた融合積層型生命体は、極限形態において成長停止から衰退に至ることが判明した。結果、常に不確定因子を内包する分裂進化型生命体の不確定進化の存在意義が、改めて脚光を浴びることになったのだ』
『加えて官の意見を付記するなら、その努力の方向性こそ尊重すべきなのだ』…なるほど
なにやら分かったような分からぬような、ジュブブとの問答をしていると、人類が直面している諸問題など、取るに足らないものに思えてくる
そんな私の個人的な葛藤など無視するように、緒に着いた日本完全独立国家計画は、自衛隊の装備が高電磁鍍金により、無敵のレベルになれると確信できると、防衛省の制服組の鼻息が荒くなった
それは、世界を襲った新型ウイルスのパンデミックが収まり、世界には従来通りの経済循環が復活し、各国は再び他国の動静にも、気を配り始めていたことに所以する
折しも欧州では、突然国境を越えてR国が隣国に攻め入り、日本近海ではC国沿岸警備隊の大型巡視船が、日本領海の端にあるS島付近に、頻繁に出没するようになった
諸島ゾーンの警備は、日本でも海上保安庁の管轄になっていて、海自が出てしまえば相手も軍が出て来ることになるので、相手よりひと回り小さい巡視船が出張ることになる
そんなきな臭い海域で、事件は起こるべくして起きたのだった
その日、ひと回り以上大きなC国沿岸警備隊の大型巡視船が、威圧感満載で、ひと回り小さな日本の巡視船に、邪魔だとばかりに体当たりをかました
両船が接触したとたん、バチバチッと激しい火花と爆音が響いて、C国巡視船は弾かれるように進路を変えられ、さらに船腹は大きく破損していた
両船の船長はともに驚いたが、日本の巡視船の船長と操舵室のクルーたちには笑みが浮かび、C国巡視船の船長以下には驚愕の表情が張り付いていた
C国巡視船海防47”の船長の報告により、C国外交部に呼び出された駐C国大使のN前は、丸こい顔に申し訳なさそうな表情を浮かべ「御国巡視船が当方の巡視船に故意に接舷した結果、弾き返された事故だと承知しております。謝罪でしたらお受けしたいと思いますが」と強気な言葉を返した
2025年02月09日
StageV ネオ鎖国日本 揺籃期…創生(5)
「高電磁鍍金の塗布範囲は、対象物の大きさを問わない。現在想定されている対象物は、全長248m、全幅38m、艦底から艦橋迄の高さ53.5mの空母いずもから各種護衛艦、潜水艦までの全鍍金の可能なドック型まで、5タイプの高電磁鍍金が可能なドームの設置が予定されている」Gの説明が淡々と続く
「そのように巨大な高電磁鍍金装置を、我々はある程度短期間に建造が可能なのでしょうか?」参加者から質問が出る(予期していた質問だった)
「高電磁鍍金装置は、この惑星の科学力では製作不可能なので、許可された設置場所に、銀河連盟から直接送致されるようになっている。まず、この国の防衛力を高めた上で、一国完全独立運営の基盤を造る」
この質問と答えの問答は、既に何度か私がジュブブと交わしたものと同じだった
ジュブブが言う完全独立の道筋は、高電磁鍍金による完全防御力の確立と、超蓄電池と原子炉の安全駆動による恒久エネルギーの確保を第1段階として、更に第2、第3段階を経て、完全形に到達する計画なのだ
日本人を地球という惑星の生態管理者として、同調できる人類をも含む次段階成長種に育てるプランは、他民族の消長については、徹底不干渉を貫くことが大前提であり、そのためには現在の世界経済と称する体系から分離できることが絶対であるという
それを成すのが、この惑星の主要兵器である科学爆発と核分裂爆発への対応を、現在の地球科学による生成物をベースにした補強加工で凌ぎ、攻撃的民族に対しては、グリーンマンとして私が対応する、守攻分離体制になっている
実はまだ政府関係者にも言ってないのだが、第1段階に少々修正を入れているのだ
あの新種のウイルスによるパンデミックを考慮した、細菌兵器・毒ガス兵器への対応策を、ジュブブと協議して影スーツAIに調べさせている
もうひとつ、これも政府関係者には隠して、人類が構築したインターネット網の改編作業を、徐々に始めてもいる
テレパス能力の無い地球人に不可欠の、特殊文明と言うことで、珍しくジュブブ自らが基本対応策を練ることで推移している
「そのように巨大な高電磁鍍金装置を、我々はある程度短期間に建造が可能なのでしょうか?」参加者から質問が出る(予期していた質問だった)
「高電磁鍍金装置は、この惑星の科学力では製作不可能なので、許可された設置場所に、銀河連盟から直接送致されるようになっている。まず、この国の防衛力を高めた上で、一国完全独立運営の基盤を造る」
この質問と答えの問答は、既に何度か私がジュブブと交わしたものと同じだった
ジュブブが言う完全独立の道筋は、高電磁鍍金による完全防御力の確立と、超蓄電池と原子炉の安全駆動による恒久エネルギーの確保を第1段階として、更に第2、第3段階を経て、完全形に到達する計画なのだ
日本人を地球という惑星の生態管理者として、同調できる人類をも含む次段階成長種に育てるプランは、他民族の消長については、徹底不干渉を貫くことが大前提であり、そのためには現在の世界経済と称する体系から分離できることが絶対であるという
それを成すのが、この惑星の主要兵器である科学爆発と核分裂爆発への対応を、現在の地球科学による生成物をベースにした補強加工で凌ぎ、攻撃的民族に対しては、グリーンマンとして私が対応する、守攻分離体制になっている
実はまだ政府関係者にも言ってないのだが、第1段階に少々修正を入れているのだ
あの新種のウイルスによるパンデミックを考慮した、細菌兵器・毒ガス兵器への対応策を、ジュブブと協議して影スーツAIに調べさせている
もうひとつ、これも政府関係者には隠して、人類が構築したインターネット網の改編作業を、徐々に始めてもいる
テレパス能力の無い地球人に不可欠の、特殊文明と言うことで、珍しくジュブブ自らが基本対応策を練ることで推移している
2025年02月05日
StageV ネオ鎖国日本 揺籃期…創生(4)
外装の強化具合を実証して見せた乗用車がステージを下りると、続いてステージ上に、陸自の10式戦車が重々しく登場する
戦車は、傘状の円盤が発する光に照らされた後、司会者が「高電磁鍍金された戦車がどれほど強化されているのか、場所を移して実験してみましょう」とアナウンスされると、参会者の注視の下、轟音を響かせて10式戦車が自力走行で、ステージを下りてドーム外に出て行く
それまで何も言わずこの場に立ち会っていた私(=グリーンマン)が戦車を、北に20qほどの東富士演習場に運んで、試すのだと司会者が説明する
興味津々の各企業の代表者たちがドームの外に出ると、自衛隊の大型輸送ヘリコプターCH-47Jが駐機している
乗務員5名と、搭乗キャパ48名の双回転翼のヘリコプターに、30名ほどの企業関係者たちが乗り込むと、2機のローターが重々しく回転を始め、 強い風を起こしてふわりと浮上し始める
それに合わせてグリーンマンも、10式戦車の砲塔に手を添え、総重量44tをものともせず、全く静かに宙に浮き上がる
大型ヘリは時速156qを保って8分ほど飛行して、東富士演習場の所定の位置に着陸した
乗客たちがぞろぞろ降りると、陸自の係員が、総合火力演習の際使われている、広い演習場が眺められる客席に案内する
観客が見守る中、グリーンマンが戦車の砲塔辺りに手を添えた形で飛んで来て、そっと地に降ろす
地上に降ろされた戦車は、キュラキュラとキャタピラ音を響かせて、総火演のときには実弾が飛ぶ辺りまで猛スピードで走って行く
突然、迷彩服の男たちが現れ、走行中の10式戦車のキャタピラ目がけて、肩に担いだ筒から火を噴いて飛び出すロケット弾のような物を発射する
バーン!と派手な音を立てて、キャタピラ部分に命中した対戦車弾の爆発は、なぜか弱々しいものに感じられた。そして、戦車の最大の弱点であるキャタピラは破損せず、順調に駆動している
この有様に、観覧している関係企業の担当者は驚きを隠せない
続いて空中から3機のドローンが現れ、皆が視ているうちに戦車の砲塔目がけて、次々に突っ込んで行く
戦車に衝突した機体は滑ったような動きで地に落ち、砲塔直前で自爆したドローンは2機とも無駄に爆砕しただけで、戦車の行動には何の変化も無かった
観客の驚きのざわめきを、かき消すような轟音が会場に近づいて来ると、曇り空の下をアースカラー迷彩の攻撃ヘリが現れて、翼下の8基のヘルファイア対戦車ミサイルの4発が発射された
第1撃目の4発のミサイルは全弾戦車に命中したが、爆発をものともせず戦車は走行している
続けざまに2撃目のミサイルが発射され、走行している戦車に接近すると、次々にコントロールを失って、地上に落下する
「皆様にご覧頂きましたように、当該戦車はこのように敵の攻撃を無力化できます。なお、第2波のミサイルがコントロールを乱して不発に終わったのは、この10式改戦車の強力電磁攪乱装置の威力です」司会者が補足説明をすると、観覧者のざわめきが大きくなった
そして、それまで全く言葉を発しなかったグリーンマンが、司会者からマイクを受け取って話を続けた
「今回の実験は、銀河連盟の技術供与が、既存の地球技術の付加改良に留まっていると言うことでもある。また、戦車の動力は超蓄電池で駆動する改良モーターであり、電磁波攪乱装置も同様である」
「乗用車については、全くの市販車なので、ただ外装の耐久力が増しただけであるが、当然、どのような移動体にもこの改良が応用されるということだ」「それはもっと大きな物体にもなのですか?」質問が飛んだ
戦車は、傘状の円盤が発する光に照らされた後、司会者が「高電磁鍍金された戦車がどれほど強化されているのか、場所を移して実験してみましょう」とアナウンスされると、参会者の注視の下、轟音を響かせて10式戦車が自力走行で、ステージを下りてドーム外に出て行く
それまで何も言わずこの場に立ち会っていた私(=グリーンマン)が戦車を、北に20qほどの東富士演習場に運んで、試すのだと司会者が説明する
興味津々の各企業の代表者たちがドームの外に出ると、自衛隊の大型輸送ヘリコプターCH-47Jが駐機している
乗務員5名と、搭乗キャパ48名の双回転翼のヘリコプターに、30名ほどの企業関係者たちが乗り込むと、2機のローターが重々しく回転を始め、 強い風を起こしてふわりと浮上し始める
それに合わせてグリーンマンも、10式戦車の砲塔に手を添え、総重量44tをものともせず、全く静かに宙に浮き上がる
大型ヘリは時速156qを保って8分ほど飛行して、東富士演習場の所定の位置に着陸した
乗客たちがぞろぞろ降りると、陸自の係員が、総合火力演習の際使われている、広い演習場が眺められる客席に案内する
観客が見守る中、グリーンマンが戦車の砲塔辺りに手を添えた形で飛んで来て、そっと地に降ろす
地上に降ろされた戦車は、キュラキュラとキャタピラ音を響かせて、総火演のときには実弾が飛ぶ辺りまで猛スピードで走って行く
突然、迷彩服の男たちが現れ、走行中の10式戦車のキャタピラ目がけて、肩に担いだ筒から火を噴いて飛び出すロケット弾のような物を発射する
バーン!と派手な音を立てて、キャタピラ部分に命中した対戦車弾の爆発は、なぜか弱々しいものに感じられた。そして、戦車の最大の弱点であるキャタピラは破損せず、順調に駆動している
この有様に、観覧している関係企業の担当者は驚きを隠せない
続いて空中から3機のドローンが現れ、皆が視ているうちに戦車の砲塔目がけて、次々に突っ込んで行く
戦車に衝突した機体は滑ったような動きで地に落ち、砲塔直前で自爆したドローンは2機とも無駄に爆砕しただけで、戦車の行動には何の変化も無かった
観客の驚きのざわめきを、かき消すような轟音が会場に近づいて来ると、曇り空の下をアースカラー迷彩の攻撃ヘリが現れて、翼下の8基のヘルファイア対戦車ミサイルの4発が発射された
第1撃目の4発のミサイルは全弾戦車に命中したが、爆発をものともせず戦車は走行している
続けざまに2撃目のミサイルが発射され、走行している戦車に接近すると、次々にコントロールを失って、地上に落下する
「皆様にご覧頂きましたように、当該戦車はこのように敵の攻撃を無力化できます。なお、第2波のミサイルがコントロールを乱して不発に終わったのは、この10式改戦車の強力電磁攪乱装置の威力です」司会者が補足説明をすると、観覧者のざわめきが大きくなった
そして、それまで全く言葉を発しなかったグリーンマンが、司会者からマイクを受け取って話を続けた
「今回の実験は、銀河連盟の技術供与が、既存の地球技術の付加改良に留まっていると言うことでもある。また、戦車の動力は超蓄電池で駆動する改良モーターであり、電磁波攪乱装置も同様である」
「乗用車については、全くの市販車なので、ただ外装の耐久力が増しただけであるが、当然、どのような移動体にもこの改良が応用されるということだ」「それはもっと大きな物体にもなのですか?」質問が飛んだ