2021年11月27日

熟年超人の日 stage5 23

「ああ、携帯電話ですか。白蘭(パイラン)、お客さまの預かり物、持って来るように」初老の男、河(フゥー)が美女ファイターに命じた(話しぶりは、相変わらずボス感に満ちている)
白蘭美女ファイターが携帯を返してくれたので、早速折りたたみの画面を開いてみた。電波の受信アンテナは2本だったり3本になったりしているが、受信不能な山奥と言うことでもなさそうだ

「それではお世話になりましたが、明朝早々に、失礼させて頂きますのでよろしくお願いします」一応、礼儀は礼儀なので、そう断りを入れておくことにした
河と美女と細マッチョ、そしてふっくら男が出ていったあと、ベッドを元の位置に戻し、妻に電話する
その前に、携帯を透視して見たが、私で分かるような(爆弾などの)細工はされていないようだ
ただ、携帯ストラップ付いているDランド土産のキャラの鼻の質感が、少しだけ変わっている。盗聴マイクではなさそうだ。恐らくGPSの発信機器ではないかと推測したので、明朝の出発後に、どこかで誰かの車にでもくっつけておこう

この部屋にも2台の監視カメラがあるので、妻には電話はやめてメール連絡をしておいた
『心配なく、明日帰る/僕1122811011』私からのメールだと妻だけに分かる細工をして発信した
携帯の時刻は23:25、このまま一晩過ごして、明日朝大人しく出ていくのも癪に障るので、部屋の明かりを消した後、毛布に潜り込んでから、透視眼で監視カメラを詳しく観察することにした

どうやら、動くものに反応するタイプと、室内全体を撮っているタイプの2種のようで、影スーツの透明機能なら感知できないものと判断して行動を開始した
まず寝返りをうつ振りをして、枕を毛布に潜り込ませて、寝ている状態に見せかけておいて、影メガネをスーツに戻して装着し、透明機能を作動させ、そっとベッドから抜け出す

監視カメラが作動しないのを確認した後、ドアの取っ手を掴んでそっと開けようしたが、もちろん開かない
取っ手辺りのドア内部を透視すると、なにやらバーが突き出ていて、それがドアの施錠になっており、その施錠部分は四角い箱の中にある
原発の頑丈な扉には比較は出来ないが、それなりに複雑な構造をしていて、私的には手に負えないのだが、取っ手を持ち、意識を内部の施錠構造に集中すると、重力波が金属構造を流れる感覚があり、くっと捻るとあっけなく開いた

廊下に滑り出して、念のため監視カメラの位置と、こちらの動きに反応するかを確認してみると、案の定どれも反応しない
影スーツの透明効果が確認できたので、折角だからこのC国諜報組織のアジトを、探索してみようという気になった(以前の自分なら部屋で大人しくしていただろうに…)
こうした組織のアジトとしては、昨秋の海外ギャングP連合支部潜入の経験があるものの、プロの諜報組織なら、格段に厳しいセキュリティ体制をとっているだろう(そこにスリルを感じている私がいる)

まずは慎重に、ドア越しの室内透視を各部屋ごとに確認していくことにした
私の閉じ込められた部屋は、二階の一番奥まった部屋で、おまけに壁は相当厚い造りになっていて、隣の部屋には人が居るのはぼんやり見えるが、誰なのかまでは分からなかった
ドアは一見木製だが中は鋼板になっている。が透視は可能だった
私の居た部屋の隣は細マッチョ男で、かなり激しい動きを繰り返しているところを見ると、どうやら私にやられたことを払拭するための、ナイフ技の修練中らしい

そのお隣は、もうベッドに入ってお休みなのか、動きはない
そのまま進むと、壁になっているので右に折れて進むと、洗面所と浴室トイレらしき小部屋があり、その先にもう一部屋、ドア越しに透視するとあの太った男が、小机に向かってパソコンを操作している
その先の、一階への階段降り口を過ぎると、他より大きな部屋があるが、中には誰もいないようだ
その部屋の前が、かなり広めなフロアになっていて、外のバルコニーと、吹き抜けの玄関ホールが見下ろせる

影スーツ装着時のルールとして、なるべく忍者的な動きを心がけているため、あえて階下へは階段を使用した
降りた先は、玄関ホールを囲むように、夕食を饗された食堂ともう一室、そして居間のような部屋があり、人が居た
一人はボス格の男、河本こと河(フゥー)、もう一人は助手席にいた謎の男、その二人がC国語で密談しているようなので、超人聴覚の感度をぐっと上げる

『懐柔出来ないなら、痛い目に合せて言うことを聞かせようとしたのですが、考えていたよりずっと強い奴で、対応不可でした』
『ならば、家族を使えばいいだろう』
『女房が住んでいる家には、日本の公安が張り付いているので、Y市に住んでいる息子家族を使おうと作戦を練っています』…なんだと!!
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2021年11月13日

熟年超人の日 stage5 22

さてどうしようか、と別に銃弾など怖くない私は考える
弾が当たっても、なんともない私を、よりによって外国のスパイどもに見せる訳にはいかない
となると、撃った弾を避ける手もあるが、こんな至近距離では、やはり超人だと疑われるだろう
とにかくこれまで通り、武術の達人くらいに思われていないと、今後いろいろとやりにくくなるのは否めない
そんな思案をしていると「さあ、部屋で大人しくしていてください」と、優位に立った者らしい傲慢な調子で言葉が発せられた

こんなとき、いつもかちんと来るのが私の悪い癖だ(仕事のときにもつい反発してやり返して、契約がぱあになったこと結構ある)
右に動くと見せかけて、さっと左から懐に飛び込み、ピストルを奪うか引金をひけなくしてやろう、と瞬間判断して、右に素早く動いておいて、反対側に超スピードで動いた
ところがどっこい、このボス格の男の反応も常人離れしていて、右へのフェイントの動きに反応して、間髪入れずに撃ってきた
右に動いて即、次に左に動くために送った右足のどこかに、弾が当たった感触(まあなんともないので感触だけだが)があった
こっちは連続運動中の最中なので、それは無視して次の瞬間に、ボス格の男の右手の拳銃を掴んで捻り上げることに成功はした

顔が近いので、この初老の男の細かい反応が良く見える。目玉に映っているふっくら男が、さっき倒れた状態から、そのまま攻撃できるよう構えているのと、ベッドの上に落ちてダメージの少ない細マッチョが、左足のすね辺りから、きらっと光る物を取り出したのも把握できた(女はベッドの向こうに落ちたままのようだ)
仕方がないので、捻った手から拳銃を奪い取り、見よう見まねで初老の男の喉元(彼は私より大分背が高い)に銃口を突き付けて怒鳴った
『動くな!君らのボスの頭に穴が開くぞ!』

C国語で怒鳴ったためか、全員の動きが止まる
「いやあ、素早いですねえ貴方。もう皆んな、やめやめ。この人には敵わないよ」穏やかな声で、初老の男がそう命じた
一瞬のうちに態度を豹変させた相手だったが、呼吸音や心拍数はそれほど下がっていないのが分かっているので、私は油断なく次の展開を待つことにしていた

ただ、いまだに女の姿が見えないのが不審に思えたので、ベッドの向こうを透視したかったのだが、同じ方向を見ているとはいえ、間近にいるボス格の男と、今はベッドを降りて、正対している細マッチョの視線を避けたかったので、注意だけは怠らないように心していた
『河(フゥー)さん、ボスがお客さんに帰ってもらって良いと言ってるよ』ベッドの影から立ち上がった女が、そう話しかけてきた(まだボスがいるのか!?)

そう言えば、車で拉致されたとき、もう一人いたな。助手席に
「帰して良いと言うことは、送り帰してもらえるっていうことですね」ここに来るまで随分、車で走ったと思うので、拉致されたスーパーの駐車場に送ってもらわないと…
「今夜はもう遅いので、明朝車でご自宅までお送りさせて頂きます」明朝?そうなると妻が一層心配する
「いや、今夜帰してもらいたい。貴方方が都合がつかないと言うなら、私は自分で帰ります」と、強気に出てやった

「そうですか、それではやむを得ません、どうぞご自由にお帰り下さい。そうだ、貴方はテレパシーでグリーンマンを呼べるとか、そうされることをお奨めしますよ」こっちの強気を逆手に取って来た
幸い影メガネで来ているので、家に置いてあるGスーツに連絡が取れるが、いま、それをこの連中に知らしめて良いだろうか
連中の車は、高速Tインターから猛スピードで走っていたので、一般道も含め、ここまで3時間ほど掛かったと思うのでT市まで約250〜300qほどだろう。例の富士の老人の屋敷にも呼べたのだから、距離は問題ない

問題は、そんなタクシー代わりにGを呼べるとなると、私の存在価値がさらに上がり、そんな私を手に入れるためなら、どんな力を使っても構わない、と思う国なり組織なりが出て来るだろうなと、心に影がさす
もうこうして、A国やC国の諜報員が接触して来ているし、この国の諜報機関とも言える公安警察に至っては、我が家の近くに拠点を構えて、私と妻を守っている(というか監視している)
「じゃ、まず携帯電話を返してください。妻に事情を話して、安心させたいと思うので」と、今度は下手に出てみた
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2021年11月12日

熟年超人の日 stage5 21

こいつは出来る、みたいな雰囲気が格闘技はほぼ素人の私にも分かる佇まいに、若干の緊張が走る
なんだか、ぼわっと立っているだけなのだが、次になにを仕掛けて来るのかが読めない、そんな不気味さを感じたのは、超人になって初めての経験だった
チャンバラ(年が知れるね)で、達人同士が立ち合うと、双方ともに動けなくなるっていうあれですな
とは言うものの、別に試合をしている訳でなく、ふっくら男がゆらっと動いた

こちらとの距離が、意識できないくらい自然に詰まっている、と思う間もなく手刀が私の喉元に迫る、つい超人力全開で払い除けたが、手ごたえがない
富士の老人の館で、立ち合ったあの時に比べると、相手が別次元の強者だと思わざるを得ない
なんとなく気圧されていた自分に気付き、これは積極的にいかないとまずいぞ、と改めて覚悟した
もちろん、スーツ着用なら所詮は人間相手なので、問題ないが、なにせ生身の(というのも変だが)私自身なので、本当の熟練者というものの潜在力は、未知の世界なのだ

などと考えているうちに、再び間合いが詰まって、次の攻撃が始まった
いつの間にか、ふっくら男の右手に妙な形の道具が現れていて、左手の手刀の直後にそれが襲ってきた
確か、昔観た“燃えよ龍拳”で出てきたトンファーというやつだ。それが、左の手刀に続いて、私の左脇腹にヒットした
が、打撃感はあったものの、私の体に損傷はない。ああ、超人で良かった、と心底思い、相手は確信の一撃を放った積りが、私が平然としていることにショックを受けたようだ。一瞬、ぼーっとして動きが止まった

その瞬間を逃さず、今度は大きく踏み込んだ私の右掌底が、ふっくら男の左胸(心臓のあたり)を捕らえ、相手は大きく後ろに吹っ飛んで、入って来たドアにぶつかった
それまで二人の攻防に見入っていた細マッチョが、気合鋭く私に突きと蹴りを素早く入れて来たが、その前に呼吸音が一瞬溜められたのがわかった私は、今度はあしらわずに、強く素早く左手で細マッチョの体ごと払いのけた

細マッチョは大きく吹っ飛んで、ベッド辺りで構えているパイランさんに激突、二人ともベッドにぶつかって、パイランさんは生憎ベッドの向こうに落ちてしまい、細マッチョの方はベッドの上で跳ね返った
そんな様子に目を奪われた隙に、不死身のふっくら男がドアを蹴飛ばして私に当てようとし、同時にその動きを隠れ蓑にしたトンファーの連続攻撃を、繰り出してきた
がしかし、今度は私も落ち着いてその素早い打撃を、ことごとく左右の手刀で叩き落とし、払いのけ、一気にふっくら男の体にアタックをかけた

当った瞬間のぼよんとした感触は、気味悪かったが、とにかく相手はさらに大きく後ろに吹き飛んで、廊下の壁に当って、跳ね返ってドアの前に激しく落ちた
どうやら、これで終わったかな、と思ったそのとき「はい、これまでにしましょう」初老の男がピストルを持って、立っている
「それにしてもAさん、貴方お強いですねぇ。貴方もスー○ーマンみたいですねぇ」などと言いながら、ピストルは油断なく私を狙っている
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2021年10月28日

熟年超人の日 stage5 20

「どこに行こうとしているの?」女は尋ねながら、油断なく体勢を整え直している
「いやいや、もう遅いので帰らせて頂こうと思いまして」一応、丁寧に申し入れたが、それでは済まないことはこちらも承知している
「だめよ、貴方、今夜はここに泊まっていくのよ」声音だけは甘さを残してはいるものの、ここに来る前、軽くではあったが私とやりあっているので、警戒心は尋常ではないと見た

さて、この女どうしようか、と逡巡していると、いつ連絡したのか、部屋の戸が開いて細マッチョが入って来た
その場に突っ立って、無言で鋭い視線を私に投げかけている(今までの私なら、それだけで動けなくなりそうな目つき!)
『パイラァン、どうかしたのか?』細マッチョが女に声をかけた
『チェン、このお客が帰るって言い出したものだから…』
C国語の会話は、筒抜けなので、女がパイラン、細マッチョがチェンだということが分かった

『家で心配してると思うので、これで帰らせて頂きますと言ってたんですよ、チェンさん』私がC国語で話しかけたので、二人はぎょっとした顔になったが、すぐに敵意がみなぎり始めたのがよくわかる
『お前は、今夜は帰れない。わたしがお相手をしてあげると、言ってるんだ』なんて高飛車な言い方だ!
『痛くされるのと、気持ちよくしてもらえるのと、どっちを選ぶんだおじさん!』彼の目には、おじさんに見えているのか。私は、確実に若返っているんだな(と、妙な感慨が過る)

『では、痛くなくて気持ちよく帰らせて頂く、ということで』そう言って、ベッドから降りたとたん、細マッチョのチェンが素早く傍に寄ってきた
…とは言っても、一般人からすれば素早いくらいの動きなので、傍に立たれる前に、一瞬彼の踏み出して来る足先にこちらの足を出してやった
どんな人間でも、足を踏み出そうとするその位置に、ちょっとした障害物が出現すれば、躓くに決まっている

案の定、バランスを崩しかけて、次の足を送ろうとしたところを、今度はひょいと足先をかけて、すくってやったので、抗せずすっ転んでしまう
体型からすると、日頃身体を鍛え、なんらかの武道に励んでいるようなチェンくんだったんだろう、同僚のパイランさんが(私の瞬発力に)驚いたか、その場で体勢を整え直す(具体的に言うと、動き辛そうなネグリジェを、ぱっと脱ぎ捨てて、上下の下着姿になったのだ)

一瞬、ほんの一瞬だけ(ですよ)その姿に目を奪われた私に、その薄物がふわっと被さって来た
だがそれも、普通人ならば、瞬間体の動きを阻害されただろうが、あいにくこちらの本体は超人なので、薄物は避け、続いて飛んで来たパイランさんの美脚を寸前でよけ、ついでに蹴り足の内腿に手をやらせて頂いて、そのまますっとすくい上げたところで、一連の動きが完成した
結果、パイランは大きく後ろに吹き飛んで、クッションの効いたベッドの上で、跳ね飛ぶことになった

てな顛末を、室内の監視カメラで視ていたのだろう、また戸が開いて、今度はふっくら男が、ぬっと現れた
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2021年10月24日

熟年超人の日 stage5 19

なに言ってやんでぃ、とでも言いたかったが、私は相手に合せて「いや、どうも」と答えてしまう
つい、相手に迎合してしまうのは、長年の企画営業マン活動で培ってしまった、処世術の成果なのか、垢なのか…

別に、拘束されている訳ではないし、美女ファイターの蹴りや突きは厳しかったが、負傷させられた訳でもない
などと、落ち着いていられるのは、こちらが超人だからで、普通、一般人ならびびるし、怖くなるだろう
まあ、とにかくこの先どうなるのかに興味があるので、しばらく相手に合せる積りになっている私
『なにか私に用があるのでしょうか?』さりげなく、C国語で話しかけてみる
『C国語がお上手ですね。どこでお習いになったのですか』なんと、逆に質問してきた

「いやいや、テレビで覚えたくらいですから、ほとんど喋れません」なんて言って、頭を掻いてみせる
「それでは普通に、日本語でお話しますね。実は、先日、テレビで大きな船を持って、空を飛っぶスー○ーマンの姿を観まして。解説の方が、貴方が仲介をした宇宙人だと言っていたものですから、一度ぜひお会いしたいと思いまして、少々乱暴だったのですが、当家にご招待したという訳なのです」なにか無茶苦茶な話だ…

「そうですよね、少々と言うより、随分強引なご招待ですねぇ」嫌味たっぷりに言ってやる
「はっはっは、いやその通り。全く乱暴なご招待になってしまいましたが、使いの娘が少し短気な性格で、お誘いしてもご承諾頂けそうもないということで、このようなことになってしまい、私からお詫び申し上げます」なんというか、大物感を発散させて、私を黙らせようという魂胆が透けて見える

「まあ、いいです。それで…」私をどうしたいんですか、というセリフは呑み込んで、相手の出方を待つ
「お察しの通り、私はC国政府の意向によって、日本国との友好関係を推進している者です。単刀直入に申し上げますと、今回のようなことを、C国内の困難事にも、あのスー○ーマンの力をお借りすることができないか、そこをお尋ねしたいと思っている訳です。聴いたところでは、今回の空飛ぶ船作戦は、F原発廃炉処理の重点部分の予備作戦だとか。老朽化した原発を廃炉する際の、最大の問題を貴方が仲介料を得て、進行させていることは、当方もよく承知しておりますので…」やはり、太陽作戦の一部か全部は、漏れている

「そうですか、そんな噂が流れているのですね。しかし、たまたま私が、あの宇宙人の窮地を救ったお礼で、力が借りられただけで、恐らく今回一回限りの助力だと思います。まあ、私にも私の生活があるんで、少々謝礼金を頂くことにはなっているんですが、この先、彼が協力してくれることは、まず無いと思いますよ」
「そうすると、まだ次回以降は、未定だということなのですね」う〜ん、そうきたか

「まあ、私としては、もうこれ以上、彼に無理は言えないと思っておりますので…。まして、外国のことにまで、力を貸してくれとは、ちょっとね」話を曖昧にして、かわそうとするのは私の悪い癖、かな
「いやいやいや、これから先のことなのですから、なにをどうして下さいとは申しておりません。ただただ、Aさんとの親交が得られればと、それだけのお願いなのですよ」と言いつつも、目が光る

「はいわかりました。それでは、私はもう失礼させて頂ける訳ですね」ちょっと相手を刺激してみようと、そう言って腰を浮かせる素振りをしてみた
「ああ、まあそう仰らず。折角お出で頂いたのですから、まずは些細なおもてなしをお受けください」と、言って、手をぱんぱんと叩くと、ドアが開いて、お茶のようなものを捧げ持った件の美女が、入って来た

小さめの茶碗にきれいな黄色の液体(お茶)が入っている
「そう言えば、まだ自己紹介をしておりませんで、大変失礼いたしました。私、K本と申します」と言いながら、名刺を差し出す[K本春雄 日C友好促進財団 理事]と、なっている
それから、美女が置いて行ったお茶を、どうぞと勧め、自分も手に取って、口をつける(毒なんて入ってませんよ、とでもいうように

その流れで、お茶を手に取り口にすると、影メガネのテンプル部分から<催淫成分、ストリキニーネ、アンドロゲン、アルギニン検出、無害>と、骨伝導で報告がある
なるほど、そんなもの飲まして、後であの美女が迫ってくるということか。スパイ映画そのものの展開に、興味心が高揚する
その後、別室に招かれ、大そう豪華な料理と、高級そうな酒類がふんだんに供された

食べることは出来るので、見た目、すっかりご馳走になり、二杯目のワインに入っていた睡眠薬が効いたふりをして、テーブルにつっぷすと、太った大男と細マッチョがやって来て、私をベッドのある部屋に移す
しばらくすると、例の美女がスケスケのネグリジェ姿で現れ、私の隣に寄り添ってくる
周囲偵察で、この部屋には記録用カメラが3台あることが分かっているので、残念ながらここまでにさせて頂くことにして、むくっと起き上がると、美女は甘い声を出して、私にしなだれかかる
この段階だけでも、充分妻に申し訳ない画像が撮られそうなので、少々力を込めて美女を押し返してやった
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2021年10月18日

熟年超人の日 stage5 18

車の中には、妙にぷよっとした感触の大男が座っていて、美女ファイターに蹴り込まれた私を、優しく(?)受け止めてくれた
続いて乗り込んで来た美女ファイターも、若い女性らしい弾むような柔らかさで、今のところは力技でこの場を逃れなくても良いかな、と思わせるような居心地だ

そんな訳で、大きな黒塗りワンボックスカーが東名高速に入って、スピードアップするまで、黒い袋を難なく透かして同乗者をチェックしていたが、運転をしているアジア系の細マッチョと助手席の男は、どちらも拳銃を持っている
あれから誰も口を利いていないが、これはもうC国の連中に間違いないなと、私は確信していた
となると、正体をさらけ出している今の姿で、超人技で逃げたりしたら、次は家族全員がC国諜報員にマークされることになる

こんな強引な拉致をするような連中と関わり合うのは、絶対に避けなければいけない。とにかく、一日本人のAとして、振る舞い続けなくてはいけない
私がそんなことを考えているうちに、車は、とある洋館の鉄柵の門を通過する
そして車が通過し終えると、鉄柵門は自動的に閉じていく(まるでスパイもののテレビドラマだ)。こっちは一般人らしく、とにかくじっとして待つしかない

やがてドアが開いて、両脇を固めていた太った男と女と、運転手も降りた後「すみませんでした、乱暴にお連れしてしまって」と、別の男の声がする(袋を透かして見ると助手席の男だ)
「もう袋を外して頂いてよろしいですよ」と言う男の声は、外国風のなまりは全くなく、日本人のようにしか聞こえない
『あなたはC国の人ではないのですか?』幸い影メガネをしていたので、C国語でさりげなく話しかけてみた

一瞬、戸惑いを見せたが、すぐに「いいえ、私は日本人ですよ」と、日本語の返答が返って来た(何のことはない、少なくともC国語はわかっているということだ)
とにかく言われたように袋を外して、相手の出方を待つことにした
助手席の男は、こちらを振り返らずに「では、車をお降りください」と相変わらず丁寧口調で言う

例の美女ファイターが戸口で待っているので、好奇心に負けて素直に建物に入る(まあ、合気道だけでも充分いけそうだと判断して)
洋館そのものは昭和の、それも戦前の建物という感じだが、エアコンも効いていて快適さは今風である
全体の造りは木造のようだから、部屋に監禁されたとしても、いざとなったら好きな時に逃げ出せそうだ
ついつい心の余裕が出てしまうのか、太った男と運転をしていた細マッチョが、油断なく目を光らせている

「こちらにどうぞ」と、美女ファイターに案内された部屋に入ると、また一人、落ち着いた感じの初老の男が椅子から立ち上がって、私に会釈する(超人化して以来、私の外観は相当若返ってしまっているので、私の方が若く見えるかも知れない)
「ようこそ、お越しくださいました」初老の男が、にこやかに挨拶した
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