2023年01月27日

新stage グリーンマン編の1-4 隠れ超人J崎累B

急いで駆け寄ろうとするM城を手で制止して、「待て、何人か人の気配がする!」と警告した
もちろん、私の周囲偵察に、不自然にアパートの周囲に展開している電波発信物や、それより強く反応する武器を感知したからなのだが、そうも言えないので、古い時代劇みたいに“気配”と言ったのだ
ところが、M城は私の尋常でない強さを目の当たりにしていたから、その言葉を鵜呑みにして、明らかに尊敬の目で私を見て「はい、わかりましたっ」と、素直に動きを止める
その間に作戦をまとめた私は「よし、その自転車であのアパートの近くまで行って、自転車を降りてスマホにコールが入ったことにして、なんでもいいから話してるふりをするんだ。後は、俺に任せろ」と伝えた

M城は、言われたとおりにママチャリをアパートの近くに停め、そこで電話を受けるふりをする
1分もしないうちに、待ち切れない様子で、いかにもワルそうな二人が、アパートの陰から現れ、M城を挟み撃ちにするポジションに付くのが、暗闇でも見える私の眼に映る
そこで、私の出番だ。ほぼ超人速度で、まず私から見て右側の、だぶだぶズボンにチェーンがぶら下がっている坊主頭男に瞬速移動で接近して、横っ腹に重い右フックを叩き込む
倒れ込む坊主頭の様子に、袖が取れたデニムシャツからタトゥの入った逞しい腕を見せている男が、手にしている黒光りするチェーンを振り出す前に、スマホを手にして突っ立っているM城を躱して飛び込んだ私の前蹴りが、その手にヒットして、吹き飛んだチェーンが自転車置き場に飛び込んで派手な音を立てる

自分の手首が、チェーンと一緒に吹き飛んだような衝撃にタトゥ男は驚いて、脱臼もしくは骨折してしまったのではないかと、目の前に手を上げ呆然として見つめている
どうやらこいつは見かけ倒しらしい、と判断した私はそいつの自慢の腕を力70%で掴んでやった
彼にとってはそれで充分な圧力だったようで「うっ、いててっ、離せ、手を放せよっ」と、情けない声が出た
「なあ、手を離してやるから、ちょっと教えてくれよ」と、できるだけ低い声で脅しにかかる
「お前ら、何人で来てるんだ」「な、何人って…大勢でだ」「だから、何人か答えろよ」「知るかっ!」
透視眼で確認できる範囲では、M城が教えてくれた2階の西隅の彼女の部屋に大きな人影が三つ、その隣の部屋に何人かの人影が見えているが、それも人には知られたくないので、あくまで仲間から訊き出す形にしたい

「よし分かった。お前は喋らんでもいい。その代り、お前のこのきれいなタトゥーの入った腕は、俺が握りつぶしてやる」思いっ切り、どすを効かせた低音で囁いてやった
「わかったわかったぁ、やめてくれよぉ。女の部屋にリーダーと、あと二人居る」「そうか、それだけか?隣の部屋にもまだいるんじゃないのか?」ぎゅっと手に力を追加する
「うわぁー!やめて、やめてくれよぉ、隣の部屋にも四人いるよー」半泣きになっているが、それでも仲間にこの醜態を知られたくないのか、感心に声のボリュームは抑えている
「で、どうだ、チャカを持ってるのは何人だ」これは全くのブラフだったが、M城を助けたときの私の戦闘力からすれば、拳銃の2〜3丁は持って来てもおかしくないのかな、と思ったからだ(さすがにC国工作員ほどの装備はないだろうが)

M城は、そんな私と腕タトゥーとのやり取りを唖然とした顔で聴いていたが、先にのしておいた坊主頭がもぞもぞしだしたのを目敏く見つけ、顎先にきれいなキックを浴びせて、再び失神させた
「チャカはリーダーとサブリーの二人だけで、あとナイフとかスタンガンとかバットとか…そんなとこだ」大分懲りたとみえて、随分素直に喋ってくれるようになった
「よぉし、お前は仲間がみんな俺にやられちゃうから、最後に残って救急車呼ぶなりなんなりするんだ。その為に、お前はこれ以上痛めつけんから、しばらく大人しく様子をみてろ。わかったなっ!」この手合いは、実力差があるとその場限りではあるが、従順になることは、これまでの経験からわかっている

「お前に頼みたいのは、上のリーダーから異常がないか訊かれたら、今のところ異常ありません、と答えることだ。俺たちが負けたら、お前は連絡があってすぐ変な奴に襲われたって言えばいい。俺たちが勝っても負けても、お前だけは無事だってことだ」腕タトゥーは素直に頷いた
「あの〜、部屋に入るときのノックはトトントントンってなってるんで」訊いてもいないのに、腕タトゥーが良い情報を教えてくれた(もし逆ひっかけでも構わないし、単純に寝返ったならそれで良い)

そうしておいて、2階に上がる階段の途中で、M城に「俺は先に隣の部屋を片付ける。もし、物音で彼女の部屋にいる奴らが動き出したら、部屋に飛び込んで、なんでもいいから話しかけて時間を稼ぐんだ。必ず、隣の奴らを制圧して、俺が決着を着けてやるから」我ながらカッコいいセリフに、軽く自己満足だな

2階の隅の部屋の手前のドアに私がスタンバイ、M城は隅の部屋の前で待機
手前の部屋のドアを、トトントントンとノックする。ガチャっと内側からドアが開き、髪を半分金色に染めた男が「なんだ」と言いながら、顔を出した
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2023年01月18日

新stage グリーンマン編の1-4 隠れ超人J崎累A

J崎という名は、まんざら口から出まかせだった訳でもなく、まだ一般人として世の中で活動する場合を想定して、以前から考えていたものであった
J崎のJはジン、名前(この場ではまだ名乗ってないが)の累を合せれば“ジンルイ”になるという洒落だ
一般人として、もう少しこの国に関わり合っていきたいという想いは、自分の中にある記憶を、大切にしておきたい、というAだった頃への郷愁なのかも知れない。いずれにせよ100年という任期の後半では、消えてしまう感傷なのだろうが、今はまだ生々しい自身の歴史なのだ
…などと、個人的感慨に耽っている間に、M城純哉と名乗った青年は、今、陥っている境遇について、縷々語り始めていた

「で俺、ヤンカマ団、抜ける気になったんっすよ」で、の前の部分は、この純哉という青年の思っていたヤンキー組織と、今の半グレ集団のアイデンティティが違って来たということだったということは理解した
私としては、どちらも大して違いは無いと思うのだが、世の中に反発して、やりたいことをやる系と、世の中の仕組みの裏側を利用して稼いでやる系の違いがあるらしい
「それで、俺の彼女で一実ってのが、メロウナイトっていうキャバクラで働いてるんっすけど、俺が団辞めるって言ったら、人質にとられちゃいまして、なんとか取り返して、ある場所に隠れてるんっすけど、ちょいヤバになってまして…」
「ちょいヤバというのは、さっき殴られてるときに、場所を教えてしまったということか」

「いいや、俺は喋ってないっすよ!ただ、スマホ盗られちゃって…。俺の名前で呼び出されたら、あいつ、出て行くと思うんですよ」
「なるほど、そうだろうな。じゃあ、先回りして、彼女が隠れてるとこに行くか!」
「ありがとうっす。J崎さんみたいに強い人が行ってくれれば、心強いっす」青年は何度も頭を下げて、私をその隠れ家に連れて行くことになった
訊くと、隠れ家の古アパートまでは5〜6qありそうだと言う。超人を出せれば空を飛ばなくても、大した距離ではないが、一般人の彼と一緒となると、1時間くらいかかりそうだ

「なにか、車とかバイクとか、せめて自転車とかないのかな」と尋ねてみると、自転車なら鍵のないやつの心当たりがあるときた。つまり、無断借用する気なのだろう
「なんでもいいけど、俺が走ったらお前は絶対付いてこれないから、なにか足を探せよ」顔が若返ってるんで、なんだかんだ言って成り切って喋ってる私も、結構役者である
うんと頷いて、姿を消した白ジャケット(と言ってもすっかり汚れて破れているが…)は、5分もしないうちに、ママチャリに跨って戻って来た
「盗んだのか?」」と一応訊いてみたが「知り合いのっすよ」と、屈託ない顔をして「じゃ、ついて来てください」と言って、自転車をこぎ出す

正直、自転車の後を付いて行くのは大変だった。遅くて、だ
彼なりに、ママチャリを一生懸命漕いでいるのだが、せいぜい時速20q程度だ。そのスピードなら、遅めに歩いて行けるが、歩いている人物が自転車より速いのでは、傍で見て変だろう。ということで、走っているような恰好で、付いて行く
「あそこです」自転車を停めて、彼が指差す方向に、2階建て全8戸の古いアパート(昔のつばさマンションを思い出した)が見える
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2023年01月15日

新stage グリーンマン編の1-4 隠れ超人J崎累@

白ジャケットの男、M城純哉は羽交い絞めしていた大男のG田の力が緩んだので、その場から逃れようとしたが、かなり長い間元の仲間に殴られ続けていたので、よろめく足でなんとか立っているのが精一杯だった
次の瞬間、G田の胸に見知らぬ男の電光石火の一撃がヒットして、大きく後ろに吹き飛んだ煽りを受けて、自分もその場に倒れ込んでしまった
その流れで、さっき自分が倒した黄色のアロハの男、T神の胸にM城の肘が当り、それが喝を入れる格好になったのか、息を吹き返したT神がのろのろと起き上がりかけると、その顎に見知らぬ男の、ほとんど見えない速さの前蹴りがヒットし、再びもんどりうって仰向けに倒され、そのまま動かなくなる

なぜ、この見知らぬ男が、自分を助けに来たのか分からぬまま、味方を得たことで活力が戻ったM城は同じように、やっと立ち上がりかけたG田の顔に、全力でパンチを打ち込んで倒すことができた
「大丈夫か?」見知らぬ男は、まだ足元がふらついているM城に、驚くほど普通に話しかけてきた
「ああ、俺は大丈夫だ。で、あんたは誰だ?」喋る言葉にまだ勢いはないものの、しっかりした口調に「本当にもう大丈夫そうだな」とだけ言うと、見知らぬ男はこの場を立ち去ろうとする
「ちょっと待てよ、待ってくれよ。とにかくあんたに助けられたんだから、礼くらいさせてくれよ」

M城としては、この見知らぬ男がとてつもなく強いということもあって、話の持っていきようでは、孤立無援の自分の味方になるかも知れないと思い至ったから、真剣に話しかけることになった
その時、まだ倒れている無法者連中のうち、意識を取り戻してもぞもぞ動き始めた者がいたので、M城は容赦なくその背中を踏んづけて大人しくさせた
その間に歩き始めている男を追って、M城も小走りに走り出す

その小柄な男は、身長171pの自分よりも背が低く、筋肉の着き具合も極々並なのだが、さっきの闘いぶりを見た限り、あきらかにプロの格闘家に違いないと思って「あんた、キックのランカーなんだろ。俺が知らないってことは、タイ辺りの選手なんだろ」と話しかけながら、その男が歩くスピードが早すぎるので、追いつくのには走らなければならないほどだった
答えが返って来ないので「そうだよな、あんたがプロなのかどうかなんて、別に問題じゃないんだ。ただ、俺があんたにお礼がしたいってことだけなんだよ」そこまで話を繋ぐと、それまでさっさと歩いていた男が急に立ち止まり「じゃあ、お前のことを聞かせろよ」と、ぼそっと言った

*

人恋しさで立ち寄った居酒屋で、たまたま見かけたアウトローな感じの若者たちに、興味を持った挙句、なにやらややこしい話に巻き込まれようとしている私を、本来の歳相応の私があきれて見ている
ついつい助けたような状況をきっかけに、この若者は私に繋がりを求めている。大体、この手の人種を私は好まないのだが、頼りになりそうな相手の手を離さない子供のようで、ある意味父性愛が刺激される
「俺の名は、M城純哉っていいます。あいつらは、ここら辺の半グレで、俺も仲間だったんだけど、彼女に子どもが出来ちまって、俺もいつまでもこんなことやってられんから、グループ抜けようとしたんっすよ」何か、ドラマのような展開になる予感に、こんなところで、こんなことしていていいのか、と本来の私が、渋い顔して注意する(だが、今の私はもっと若い反応をする)
「俺は、J崎だ。で、お前は俺にどうして欲しいんだ?」自分の口から、こんな陳腐な言葉が出るなんて!
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2023年01月09日

新stage グリーンマン編の1-3 展望F

幸いなことに(?)私の発した大喝のせいで、言葉の内容には頭がいかず、自分たちのやっていることへの妨害と受け取り、白ジャケットを袋叩きにしていた連中は皆、新参の私に強い視線を向けるに留まった
「なんだぁお前はぁ」先ほど店に居た奴とは違う、赤い舌がプリントされている黒いタンクトップの色黒な男が、私をねめつけながらそうすごんだ
「いやちょっと、一人に大人数はどうかなって思ってね」言い放つと同時に、胸のわくわくが強くなる
「あっ、お前、さっき居酒屋に居た奴だな」どうもバミューダパンツは、記憶力の良い奴らしく、この状況で私をあの店に居た人間だと見定めたようだ(黄色アロハは白ジャケットにやられたのか倒れている)

「そうですよ、さっきから様子見てたんで、なんで揉めてるのか、気になって付いて来たんですよ」
「はあ?お前、なに言ってんの!?なんで付いて来るのかなぁ。頭おかしいんじゃないの」黒タンクトップはそう言うと、小柄な私もついでにどついてやろうか、という風に両手の指をぽきぽき鳴らしながら、私に向かって歩き始めると、続いてもう一人「おじさん、どっかに行った方がいいぜ。こいつ、素人相手でも手加減できない奴だからよ」そう言いながらも、にやにや笑いが止らないって顔してる
私の方は私の方で、この先に起きることと、今いきがってるこの連中が、何分後かに味わう敗北感を想像して、胸の高まりが止らない(こんな私だったのか!?)

およそ180pはありそうな黒タンクトップは筋肉自慢らしく、小柄でさえない中年男の(最近の見た目は40代前半か)私に向かって、無造作にすっと右手を伸ばしてきたので、こちらも軽くその手首を捕まえて、くいっと上に捻り上げる
いきなり、強烈な腕力で手首を捻り上げられた黒タンクトップが「うわっつ!いててー」と大仰に悲鳴を上げ、痛む手首を握っている私の手を、振り解こうと必死で手を引っ込めようとした
当然、仲間のトラブルに対して、もう一人の仲間であるにやにや男は、一気に警戒心を高めて、戦闘態勢で私のところに接近を図る
少し離れた場所に居る残りの仲間のうち、白ジャケットをボコっていた二人が、異変を察知してこちらを振り向く。そのタイミングで、今は真顔のにやにや男の放った右足キックが、私の脇腹目掛けて飛んで来た

もちろん、そんなキックをまともに受けてやる気もない私だが、どう対処するかパンチかキックか投げ飛ばすか、さすがの超人思考でも、考えているうちにキックが着弾する
その瞬間さえも、どんと受け止めるか、少し後ろに下がって受け流すか、キックの脚を掴まえるか、またまた思案。結局、脇腹にばしっと食らった。当然、なんともないのだが、一応普通の人間らしく、脇腹を押えて前かがみになってやる
これほど、闘いに迷うのは、以前の私を彷彿させる合気道的な技とか、影忍者的な圧倒的な力技は、封じておいた方が良いだろうとの思いがあったからで、残る戦闘法はパンチ中心のボクサータイプか、キックも取り入れたキックボクシングかとなるが、あいにくどちらもやったことがない

超人化して、これほど反撃に時間が掛かったことはなかったが、黒タンクトップの手を離して、屈み込んだ私の頭部を狙った2撃目のキックを、下から持ち上げて、にやにや男をひっくり返し、考えをまとめる時間を3秒ほど稼ぐことができた
じゃあ、ということで反撃開始。白ジャケットを痛めつけていた二人は、また元の動作に戻っているのを確認しておいて、割に素早く立ち上がったにやにや男が、体勢を整える前に漫画で覚えた左ジャブの3連発を、右頬に叩き込んで、続いて右ストレートといこうとしたが、ジャブだけで後ろにひっくり返ってしまい、華麗な連続攻撃は尻切れトンボに終わった

黒タンクトップの方は、仲間が私にキックを浴びせる様子を見ていたせいか、痛む右手首を擦りながら戦況を眺めていたので、急に形勢が変ったことを理解できず、突っ立ったままだったが、気を取り直して私にタックルをかませようとした矢先、私の左ストレートをボディに食らって屈んだ処を、教科書通りのアッパーカットの第2弾で、大きく後ろに吹き飛んだ
そんなこちら側の戦況が、白ジャケットを羽交い絞めしていた大男の目に留まり、執拗にぼこっていた二人が、急遽こちら側にやって来ることになった

それを見た私は、胸のわくわくの赴くまま、先手を取って援軍の二人に急速接近して、相手の目に驚きと恐怖が浮かぶのを確認しながら、超人パワー90%のスピードで、一気に二人にジャブ、フック、ストレートと、思いつく限りのボクシング戦法で、打撃を叩き込んだ
二人は、ほんの数発ずつ食らったパンチで、あっけなく地にぶっ倒れ、その勢いのまま突進した私は、白ジャケットを慌てて手放して、体勢を整えかけた大男の胸に、必殺のストレートを叩き込んだ
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2022年12月30日

新stage グリーンマン編の1-3 展望E

店の外に出ると、三人はすでに何処かに行ってしまっていて、いない
空中から探してみようか、とも思ったがやめた。こんなところで、怪しい人物としてマークされたくなかった
今や街なかは、監視カメラとユーチューバー気取りの、スマホウオッチャーが、至る所に潜んでいる場所なのだから
気を取り直して、改めて素の超人としての能力をフル稼働してみる。幸い都心の繁華街に比べれば、薄暗い場所も多く、私が突っ立って周囲偵察や、超人眼で辺りを見回していても、怪しむ者などいなかった

ただ、周囲偵察はこの街中では役に立たないことがすぐに分かった。あの三人が拳銃などの発火性武器を所持しておらず、スマホなどの電波受発信機は、あまりにも数が多い上、三人を特定することなど不可能だった
その辺りの情勢分析を瞬時に行い(どうやら脳の方も以前より若干超人化しているようだ)、ざっと周囲を見渡して、比較的高層のマンションを見つけて、その屋上を目指すことにした
本当なら、ジャンプすれば屋上に行けるのだが、それも封印してビルの外側に設置されている非常階段を上る

久しぶりの素でも、超人力はすばらしいものがあり、私は息を切らすこともなく11階に到達(所要時間24秒)扉を壊すのは控えて、誰の目もないことを確認してから、空中浮遊で穏やかに屋上に降り立った
あの三人の雰囲気からすれば、タクシーを拾ってどこかに行く訳ないし、急に意気投合して別の飲み屋で乾杯などしているはずもない
ということは、比較的手近な人目がない場所で、さっきの続きをしているだろう、と推理した私は、まず超人耳でこの辺り一帯の音を拾ろってみた
まだ深夜とは言えない夜の東京には、K田と言えど酔客も多く、あちこちで喋り声や笑い声、T急の電車の音も聞こえ、もっと耳を澄ますと恋人たちらしき、もやもやした声も拾える

「うるせい!ぐだぐだ言ってんじゃねぇ!」突然、強い言葉が飛び込んで来た
声がした方角は、漠然と北から西方面だったような気がする
そちらに神経を集中すると、声ではないが、バシッとかガシャーンとか、闘っている際に出る音が聴こえる
そんな音を聴いていたら、胸の奥から何かがめらっと燃え上がった(これは意外な感覚)
あの山荘での戦いの記憶が甦ってのかと、冷静に判断する自分が居ることはいるのだが、もっと若い頃のなにかやらずにはいられない、昂りが私の身体を操っているような感覚だった

ビルの下に誰もいないことを目と耳で確認し、屋上から一気に路面に降りて見当を付けた方角に向かって走る
ちょうどそのタイミングで、ユーバーイーツという料理の宅配便のバイクが、私が居た雑居ビルの一室から注文を受けて、やって来ていたのには気が付いていなかった

走って行くと、なにやら森のような場所があり、木の陰に何人か人が争っている気配があり、夜目が利くので、その中に先ほどの居酒屋に居た三人も確認できる
どうやら、二人ばかり倒れている者もいるようだが、肝心のからまれていた白ジャケットは、でかい男に羽交い絞めにされていて、三人の男が代わる代わる殴りつけている状況だ
別に、どっちが悪いのかは分からなかったが、日本人の特性というか私の好みと言うか、とりあえず劣勢の方を応援したくなるもので、一方的に殴られている状況にストップをかけたくなった

これまでの経験で、非常に大きな声というものには、人の行動を止める効果があると分かっていたので、「やめろっ!」と、大声を発してみた
案の定、殴りつけていた連中の動きが止ったが、声の主を探して振り向いた先に、身長167pに満たない私が立っているので「なんだぁ、てめえは!」と、元気よく怒鳴り返されてしまう
「見たところ、大人数でたった一人を殴ってるなんて、卑怯じゃないか!」言ってることが、本来の歳相応なセリフになってしまったのは、やむを得まい
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2022年12月23日

新stage グリーンマン編の1-3 展望D

その気になって三人を視てみると、カウンター席で飲んでいた男は、薄緑色っぽい開襟シャツに白っぽいジャケット、同じく白っぽい夏ズボンというスタイルで、歳は恐らく30手前だろう
後から入って来たガラの悪い二人の片方は、赤系の派手なアロハに白ズボン、もう一人は黄色っぽいアロハに、青系のバミューダパンツという、ハワイのチンピラといった風体で、こちらは20代前半といったところか
今の季節に合った格好と言えばそうなのだが、着崩し方がワルっぽい

「とにかくよぅ、社長が呼んでるんだから、一緒に来いよ」「おめぇびびってるんかぁ」てな調子でしゃべる二人を相手にしてない、といった風情で、ハイボールらしきグラスを口にしている開襟シャツは、二人より何ランクか上なのだろう
「おいっ、一緒に行くんだってんだろぉ!」声が段々でかくなっていく。その剣呑な空気に居た堪れなくなった三人組のサラリーマンが席を立ち、続いてカップルと、四人組が席を立ってレジに向かう
たまにはこういうこともあるのだろう、店のスタッフは案外落ち着いて客を送り出している
なんだか、わくわくするというか、なにかを期待している私は、さりげなくジョッキを挙げて、ビールのお代わりを頼んだ

チンピラ二人のうちバミューダパンツが、ちらっとこちらに目を走らせ、私と目が合った瞬間、強く睨んで来たので、こっちは笑顔と届いたジョッキを持ち上げて、挨拶を返してやった
バミューダパンツは、鼻白んだ表情になったが、それ以上こちらに突っかかってくることもなく、開襟シャツに視線を戻す
突然、業を煮やした赤アロハが、開襟シャツの脇に手を入れて、強引に席から立ち上がらせようと動いた
次の瞬間、その動きに乗って俊敏に動いた開襟シャツの頭突きが、赤アロハの顎にヒットして、大きく吹き飛ばすと言う結果になり、私と店のスタッフに緊張感が走る

ドッシャーンと派手な音を立てて、後方のさっきまで三人組が居た席にぶつかった赤アロハが、バランスを取ろうとして広げた両腕で、まだ卓上に残っている皿やグラスを払い落とすという、ど派手なシーンが展開
続いてバミューダパンツが、慌てて開襟シャツに掴みかかろうとして、素早いカウンタージャブをもらい、後方に大きくよろめいた
久しぶりの素の超人状態の私は、それらの一連の動きを正確に把握しつつ、開襟シャツが内ポケットから長財布を取出し、素早く1万円札を抜くとカウンターに置いて、すっと立ち上がって店を出て行こうとしている
先に吹っ飛ばされた赤アロハは、やっと立ち上がりかけの状態で、ジャブを右目辺りにもらったバミューダパンツは、なんとか体勢を立て直して、反撃に出ようとしている
そして、小テーブル席にいる私は、次の展開を楽しみながら、途中まで食べているほっけの皮を箸でつまんだところだ

開襟シャツは、立ち上がりざま、やっと体勢を立て直しかかったバミューダパンツに、もう一発、今度は右ストレートをぶち込んで、左手でカウンター下から取り出した黒いクラッチバッグを掴み出すと、さっさと店を出ていく(昔の日活映画のように)
この先が見たい私は、慌ててチノパンの尻ポケットから、札束(と言っても少額の)を取り出して、店内スタッフに「お勘定!」と呼びかけた
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