2021年01月10日

熟年超人の日 stage4 59

そうだ、それなら私にもできそうだ、と思ったAは、グリーンマンとして口を開いた
「倒壊させて構わない建物を教えてくれたら、私が壊してやる」
「それは…、有難いが…なにしろ、全体状況が掴めないので、適切な破壊指示が…」隊長が逡巡しているのを見て取って、緑色の大男は隊長を横抱きにすると、すっと宙に浮いた
周囲の隊員たちが大声で騒ぐ中、そのまま50mほどの高さに、浮き上がった

最初は突然のことで、一瞬もがきかかったN目隊長は、眼下に炎上中の住宅や工場の建物を目にして、その光景に強く心を奪われた
「そうか、おまんはこんなことができるんや。分かった、もっと高く上がってもらえんか」その声に反応して、300mくらいまで上昇すると
「よし、ちょっとこの高さのままで、留まってみてくれんか」と隊長が、Gの腕をぽんぽん叩いて言う。眼下には、JRI市駅から日本海の海岸線が見えていて、黒い煙の塊りが、駅側から海側に大きく流れている

「すまん、今度はもう少し下がってくれ、ください。そう、これくらいの高さで、もちっと留まって…」
「分かった、もう少し高度を下げよう。そうすれば、見当は付きそうなのか」辺りを眺め廻しながら、しきりにうんうん頷いている隊長に念押しをした
「ああ、いや、上からだけじゃ破壊消火の決断はできんのだ。だけど、あんたのこの空を飛べる力はすごい、ヘリよりずっと静かだし。これをこの後もやってもらえると、ほんま助かるんやけど」超人の仕事としては、地味なものになりそうだが、燃えている建物の消火の手順が分かっていない以上、勝手な破壊はできない

「わかった」と返事をして、一旦地上に降りると、黒にオレンジの幅広ラインの入った隊員や、銀色の耐火服の隊員がばらばらっと隊長のところに集まる
「この人の協力で、上からこの辺り一帯を俯瞰して来た。大きな火の粉が沢山、市中に広がっていて、大町西部、広小路通り、みいちゃん通りに延焼中だ。近隣市町の応援隊にも、随時情報を伝えられるように、俺はまた上に戻って、無線で状況を伝える積りだ。すみません、また飛んで頂けますか」大声で隊員に指示すると同時に、また飛んで欲しいとGに頼んだ

再び消防隊長を抱えて飛び上がると、今度は200mくらいの高度を保ったまま、右に行け、左に行けとなる
元々、企画屋だったAにとって、職務にのめり込む職人タイプの人間には、頭が上がらないというか、その生き方を尊敬すべきと思う傾向があったので、さほどの抵抗感もなく、言われるままに火災が広がりつつあるI市の上空を、あちこち飛んでいた

当然、これほどの大火災ともなると、マスコミや消防本部のヘリコプターが何機か飛んでおり、透明効果を解除して、緑色のグリーンマンとして、被災地上空を消防官らしき人物を抱えて飛ぶ姿が、テレビ画面に時折り登場するはめになっていた
なるべく、テレビカメラから外れるように飛んではいるものの、公安のD田警視から、イチエフの廃炉処理にグリーンマンが関与することを政府発表するまでは、Gの存在を明確にしない約束は反古になりつつあった
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2021年01月04日

熟年超人の日 stage4 58

強い風に炎が煽られ、沸き立つ黒煙に乗って、大きな火の粉が空にどんどん舞い広がっている
しかし、本当は息をするのも苦しいほどの煙の臭いも、火災の輻射熱の熱さも感じていないAにとって、現場の隊長である指揮官と、重そうな消防服の消防士たちが、取り囲んでいる火と煙、そして吹き渡っている風から受けている恐怖は、見えている光景以上には見えていなかった

妙に落ち着いた様子で、この場を他人事に見ている空気感が、特撮映画の登場人物のような風体と相まって、現場で指揮を執っているN目消防指令補の神経を逆なでした
「その、妙な格好のあんた、とにかくここから出てってくれ!」周囲の喧騒と、人の激しい動きがその声をほとんど消していたものの、Aの超人聴覚はそれをしっかり捉えていた

「いや、私は作業の邪魔はしない。これから見せる私の力を貸そうというのだ」ようやく超人らしさを取り戻して、そう隊長(らしき人物)に告げると、相手がどうこういう前に、火の燃え盛る住宅の中に飛び込む
自分の能力を見せつけるのが目的なので、見てる前で飛び立ち、2階のベランダに降りて、ホースの放水がまだ届いてない場所を選んで、室内に飛び込んだ

Aが飛び込んだ瞬間、破孔から流れ込んだ空気でフラッシュオーバーが起きて、爆発的に炎が噴き出した
瞬間、超人Aでもその風圧で吹き飛ばされそうになったが、0.02秒で体制を立て直すと、激しく吹き出している火と煙の中に飛び込んでいった
超人であることが、いかに有難いことなのか、Aは改めて知ることができた。あの原発の凄まじい放射線に比べれば、炎も有毒煙も、さほどではないのかも知れないが、見た目の迫力はこの場の猛火が上回っている

思わず足元が不確かになり、かろうじて踏みとどまったAは、Gスーツの耐火性能防ガス機能を信じて、室内を見廻し、さらに天井や足下の床を通して、1階まで透視してみたりもした
その行動に合せるように、顔面を覆っているゴーグル内面に様々な数値が表示されていある。恐らくそれらは、視認先の物体や炎の温度と、空間を満たす気体の組成物質の化学記号らしい

『外気の有毒物質濃度が、濾過水準を越えたので内気循環に変更しました』骨伝導でGスーツの声が聞こえた
声に緊迫感は無く、温度表示らしい数値(そう言えば、原発炉心に潜入時にも数値表示はあったが、あの時は炉心内部の破壊状況に気を取られていて、ほとんど記憶にない)にも、緊迫感はないので構わず、至るところから炎が上がっている室内を歩き回ってみる

一渡り見廻して、助けの必要な人影も無く、スー〇ーマンらしい仕事がないのを確認して、焼け落ちて来る梁や、天井を払い除けながら、半分溶けながらも残っていた窓枠をぶっ飛ばして、外に出た
盛大に燃え上っている炎の中から、全く無傷の(焦げ跡ひとつない)緑色のスー〇ーマンが出て来たのを見て、茫然としている隊長の目の前に、すっと降り立ち再び話しかけた

「ご覧の通りだ。私は火の中でも普通に活動できるし、力もとてつもなくある。お望みなら、あそこにある消防車を持って、空を飛ぶこともできるが、今は消防士諸君の(ちょっと言い方が古かった?)消火活動を邪魔したくないので、良ければ、そこの燃えている建物を潰すこともできる」ハリウッド映画なら問答無用でばりばり破壊消火(勉強しました)が出来るのだが…

「なるほど、そんなことが出来るんなら、頼む手もあるなぁ」
「指令補、そんなスーパー〇ンみたいなことが出来るんだったら、やってもらいましょうよ。こんなに風が強いんじゃあ、延焼を食い止められるんだったら、なんだって構わんじゃあないですか!」迷っている隊長に、その場の様子を見ていた年かさの消防士が、大声で話しかけてきた

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2020年12月20日

熟年超人の日 stage4 57

それでAの気持ちは、およそ定まった。じゃあ、行って来るかな、と言って出かけようとすると
「行く前に、I市のこととか、大火事のこととか、インターネットで調べてから、行くんでしょ」そうそう、そうだった、企画屋だった頃の“事前準備なしの企画はアホの思いつき”という、M田井社長の言葉が甦る
「いやぁ、慌てて飛出しちゃうとこだったよ」一応、妻に礼を言うAに「いつも貴方、そう言ってたから」とM代が微笑む(さすがに居間にあった盗聴器は全て排除済みだ)

ググってみると、I市は人口約5万人弱の小都市だ。従って、消防署員も消防車も数が少ない。それを補っているのが消防団だが、人数はかなり多くても、正規の消防署に比べ、圧倒的に装備が劣っているようだ
もうひとつ、消火作業の手順だが、消防士の消火活動として、検索すると『消火活動』というPDFマニュアルがあった。それによると、水で消火することが前提だからか、ホースの扱いから始まり、火災現場での消防士の危険を防ぐ、諸注意事項が列挙されている

超人である自分ならではの活躍も想像できるが、おそらく脆弱な消防力から推察すると、近隣の市町からも、応援の部隊が駆け付け、現場の指揮系統は、その場その場での対応になることが想像される
身一つの自分が、マントをひらめかせて、ごったがえしている現場に降り立って、その場の隊長にお手伝いしましょう、と言ってみても、実行力を示さない限り、どこをどうして欲しいという言葉は出ないだろう

それなら、まずは現場で大いに燃えている建物などに突っ込んで、火や煙に強いところをアピールして、しかる後、援助を申し出ることにしようと決めた
考えをまとめて、笑顔で妻に「じゃあ、行って来ます」と言い、表に出ると周囲偵察で、周囲や上空に監視の眼がないことを念入りに確認してから、Gスーツカプセルを取り出し装着した

Gマップで確認したI市までの直線距離は、およそ227q。少し急げば、10分くらいで行けるだろうと踏んだ
後は、現場で対応するとしようと、一気に東風が強く吹いている青空に飛び上がった
もちろん、誰が見ているか(あの公安の監視部隊が望遠レンズをこちらに向けているのは間違いないだろう)分からないので、スーツ表面は透明効果バージョンにしてある

空を飛んで行くにしても、やはり直線は無理がある。特に、飛騨山脈(北アルプス)を越えていくのは、いくら超人でも難しいのだ
で、少々遠回りでも、分かっているN市辺りから高度4〜5000mで北に飛び、とにかく日本海に出て、それから海岸沿いに東に飛んで、あとは高度を下げて、火災に見舞われている市街地を探すことにした

結局、20分くらい掛かってI市らしき市街地に辿り着いた
出来立ての北陸新幹線の高架と、在来線の線路が目印になるI駅の北側に、黒煙が上がっている箇所が幾つかある。そして、強い風が南から北の海岸に向かって吹いている
ぐんぐん高度を下げて、消防士たちが活躍しているところを探すと、それはすぐに見つかった

赤い消防車を見つけると、特徴ある耐火服を着た消防士と、いかにも指揮している隊長らしき人物がいた
その人物の目の前に降り立ったのだが、相手は私が見えていないかのように、手に持ったマイクで怒鳴るように叫んでいる
そのとき、透明効果を切り変えずにいたことに気がついたので、いつもの緑色に可視化した
あまりに目の前に、突然緑色のマントを翻している大男(しかもフルフェイスヘルメットの)が出現したので、その隊長とおぼしき人物は驚いて、マイクを取り落としてしまった

「だ、誰だ、お前!どこから入った!」それでも、現場を仕切る隊長らしく、私に向かって怒鳴っておいて、周りを見回した
「お取込み中、どうもすみません」つい、私も地が出て、謝る形になってしまう
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2020年12月07日

熟年超人の日 stage4 56

どうやら、自分の好みの顔を選べるようだが、そう言われても好みの顔のイメージなどない
例えば、欧米人的な彫りの深い顔が良いのか、日本人的な顔が良いのか、女性の顔の好みならともかく、男の顔には興味がない
そもそも、ヒーロー的な行動を取る際、顔を見せるのには抵抗があるのが昭和の男なのだ
洋の東西を問わず、良いことをして、名を名乗らず立ち去る方が、かっこ良いと感じるのが、普通だろう

それでも、TテレのD氏が言うように、宇宙人ということになっているグリーンマンの、フルフェイスのヘルメットの下に隠れている顔が、化け物だったらと想像する者には、メルトダウンした廃炉を片付けると言っても、なにか魂胆があるんじゃないかと、疑うのが人の常だろう
この廃炉計画が、取りかかる前に頓挫する可能性を、日本政府が危惧する気持ちも、よくわかるAだった

結局、この問題はGスーツに問いかけて、できる人間的フェイス画像を見せてもらうことで、解決をみた
3D画像を、ヘルメット表面の一枚下に浮かび上がらせるという、単純な方法であったが、どこからどう見ても、人類的な顔に見えている
一見すると、アメリカインディアン的な顔に見えるが、Gスーツの説明では、地球の各地域の民族の特徴を混合し、さらに各民族の信仰の対象像の特徴を加え、もう少し強調したものだということだった

顔を見せる、という課題を克服できるメドが付き、Aは一安心するとともに、この先、自分の素顔を見せずに、ずっとやっていけるのだろうかと、新たな不安も深まっていた
まあ、ここまで進んじまったんだからしょうがない、ともう一人の自分が慰める
いつまでもくよくよ出来ないのがAという男の特徴であり、それこそが超人として選ばれた理由でもあった

*

それから数日が過ぎたある日、日本海側のI市で大火が起きていることを、妻と二人で昼食を摂っている時、テレビのニュースが伝えた
お昼時に起きた火災は、折りからの強風に煽られ、密集した家々に広がり始めているという
超人として現地に飛んで、人命救助なり火災の延焼防止なりに、なにか出来ることがないかを考え始めたその時、携帯にTテレのDレポーターから連絡が入った

「実は今、I市で大規模火災になりそうな事案が発生してまして、私、現地レポートに向かうんですが、こんな今日の今、グリーンマンに助けを呼ぶことなんて、出来ますかねぇ?」切迫した声だった
「ええ、それなら今ちょうど、テレビ観てまして、私もなにか手助けすること出来ないか、考えていたところなんです」と、つい、口が滑ってしまった

「おおっ、それなら、グリーンマンに連絡して頂けるんですね!ありがたい!」案の定、Dは飛び付いて来た
「ええ…、まあ…、一度連絡を取ってみます」と、請け負ってしまう
「すごいなぁ、これでグリーンマンがI市に現れたら、一気に世間の認知度が上がりますよ!」それじゃあ、また続報、入れさせてもらいますんで、よろしく、と言ってDの通話は切れた

「今の電話って、この火事のお話?テレビの方ね」M代が、話しかけてくる
「うん、そうだよ。前に話したTテレビのDさんだよ」
「Dさんって、昼報ですよのレポターさんよね。パパ、なに頼まれたの?」
「うん…、いやぁ、ほら僕がさ、変身するグリーンマンにさ、現地を助けに行って欲しいって」

「へえ、行くの?スー〇ーマンになって、消火活動をお手伝いに行くの?」こんなときの妻の言葉は、肯定なのか否定なのか、Aにはいつもよく分からなかった
「うん、まあ、僕がグリーンマンに連絡できることは、もう関係者の皆んなは、知ってることだから…」
「いいじゃない!やってあげなさいよ。パパは、なにがきっかけだったかは知らないけど、困っている人たちを助けることができる、スーパー〇ンなんでしょ」なんと、肯定だった!
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2020年11月21日

熟年超人の日 stage4 55

ほぼ、というのは、先輩のM原にだけは話していたからで、本件に対する内閣府の二つの異なる勢力の、拮抗していた力の、微妙な変化を耳打ちされ、自分なりに勝算を得ていたからだ

一方のO倉にとっても、最近の『昼報ですよ』の視聴率挽回策として、番組に正体不明の異星人を呼び込み、あたかも日本の救世主としてのアピールができるかという、賭けでもあった
そして、そのためには、グリーンマンという正体不明の異星人は、地球人のというより、日本人の味方らしく見え、視聴者に好感を与えるビジュアルであって欲しかった
その意を受けたDが、今夜、キーマンのAに会い、その対応を要請するということになっていた

*

T市駅前の洒落たカフェで、DとAがコーヒーを前に声を潜めて話し始める
「どうでしょう、Aさん。グリーンマンさんのマスク、脱いでお顔拝見、って訳にはいきませんかねぇ」
予想外のDの提案に、動揺したAに重ねて発したDの言葉が覆い被せられる
「なにしろ、あのぴかぴかの黒マスクって言うか、黒いゴーグルでしょ、あれがどうも局の偉いさん達に不評のようで、O倉さんも上層部はどうでもいいけど、視聴者の日本国民の方たちが、顔も見せない宇宙人に、感謝の気持ちが持てるだろうか、なんて言ってるんですよ」それは確かに、正論だ。しかし、中身が自分となると話は違うのだが

「しかし…、どうなんでしょう。私も、顔なんて見たことありませんし、なにしろ宇宙人なんですから、人間らしい顔してるかどうか…」やんわり断りを入れる
そもそも、最近はコントロールが大分うまくなっているとは言え、あのGスーツに顔を出して見せることなんて、やらせられるんだろうか

「あ、いや、それは分かってます。けどね、とにかくあの宇宙服みたいな、つるっとしたゴ−グルっていうか、あの下に、なんらかの中の人の顔が、ある訳ですよね。で、それが、おっそろしく怖いとか、気味悪いとかじゃなければ、というか、見た目ショックのない、できれば地球人にとって、想像内の顔が出てくれば、って話しなんですよ」

「つまり、ゴーグルみたいなのを開けて、見せてくれる顔が、我々にとって、良く見える顔が出てくれるように、頼んで欲しいって、ことなんですね」それなら、方法があるかも…
「そうそう、ま、メイクアップしてくだされば、ってことでして。あ、いや、まんまで素晴らしいお顔なら、もちろんそれは助かる訳ではありますけどね」しどろもどろだが、言わんとしているところは分かる

「分かりました。まあ、彼の方にも都合があるでしょうし、ほかに脱げない理由があるのかも知れませんけど、一応、テレパシー通信をしてみようと思いますので、今日のところはひとまず…」
「よろしくお願いします」と言って帰ろうとしながら「私、ここのホテルに待機してますんで」と、もう一度プレッシャーをAにかけて、Dは席を立った
Aは、そのまましばらく店であれやこれや考えていたが、考えがまとまらないまま山荘に戻っていった

寝る前に、久々にジュブブの助言を求めて、精神を統一して(自分のイメージする)宇宙に向けて、何十回も思念を送り続けてみた
そのうち、やるだけのことはやったと思えたところで、やっと眠りに落ち、レム睡眠が始まると同時にジュブブからの回線が開いた

『テラ3号、君が今回の状況進展において、この惑星の表現で、神経質になることは99.56%の推測値で予想されていたのだ。むしろ、推測時限を7自転も超えたことで、官及び、本件統括官は予測データ再集計に、忙殺されたほどであった』常にお見通しのジュブブが、こんな風に意思を伝えて来るのは珍しい!
*そうなんですか、ご心配をおかけして申し訳ございません

『そのことは、君たち種族が安定した生息環境下では、行動ステップへの進捗動機が弱まるという、従来から知られていた特性指数の、見直しを図ることで、既に解決をしている
それは、今回の君が送っていた本件の解決方法打診には、なんらの変数要素を及ぼさないので、安定した精神状況を得ることができる』なんだか、いつもより回りくどいかな

『結論を示すと、この惑星種族が、可視光線の反射による対物認識をしていることは、既に理解されており、君の果たしたい超人行動に、外宇宙汎用スーツの無人格外装による視覚効果が、支障を及ぼすことは事前に認知されていた
よって現在、君のコントロール下のスーツには、この惑星の支配種族の98%が認識できる、躯体上部の“顔”と認識される部分に、この惑星種族の75%以上に畏敬や崇敬、などの意識を喚起する要素を備えている』
*そうなんですか、で、どうすれば、顔を見せられるんです?

『それは、君の装着時でも未装着時でも、コントロールパーツ、君がメガネと認識しているもので、実現できる。問題は、君の行動する場所により、その地域種族の感性に偏りがあるので、君自身に変性指数を補ってもらう必要があるのだ』
*つまり、私の好みで、顔を変えられるということですか。そうだ、という意思が伝わってきた直後に、ジュブブの回線が閉じた
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2020年10月29日

熟年超人の日 stage4 54

同じころ、旧保養所に陣取る公安SITの監視担当J間は、このところ頻繁にAの山荘を訪れるM岡の調査報告書に再度目を通した後、班長のN目来の席に赴いた
国家の重要人物の身辺警護も、10日も経つと初冬の山暮らしに、緊張を保つことが徐々に難しくなって来ている。N目来も重々承知していたので、部下のモチベーションを引き上げるため、M岡の身元調査を許可したのだが、T自動車の身分は疑いの無いものであったが、A国赴任時の行動に、幾つか不審な点が見つかった

現地に手配して、その確認作業が終わり、M岡がT自動車A国本社の軽微な情報漏えいをしていたことが判明した。むしろ、そのことよりも、M岡が帰国した後に、エージェントとする計画の存在が窺えると、N目来は確信して、新たな監視対象として泳がせておくことにした

*

Tテレビお昼の情報番組『昼報ですよ』リポーターのDは、人が疎らになった12階の食堂で、ディレクターのS河と遅い昼食を摂りながら、年末に向けての番組編集方針への不満を語り合っていた
「結局ですねぇ、僕らリポーターの出番なんて、その日その日にどんな事件が起きるかで、行き先もレポート内容も変わっちゃうわけですよ」自分が発する言葉を、耳で聴くことで、さらにテンションが高まっていく

「まあまあ、そう言うけどDちゃん、大将だってその辺のことは承知の助でさ、敢てやってもらってるのよ、Dちゃんにさぁ」一方が激すると、他方がなだめ役に回るのが、ここのルールみたいなものだった
「前回のオンエアは、ほとんど政府の偉いさんの指示通りの内容でやったのに、結局12月3日のイチエフ会議は無くなって、ホンチャンの会議は僕ら呼ばれもせず、内密でやったみたいでしょ。
O倉さんは、それに抗議もしないでそのまんまだし。一体、いつまで熟成させとくの、って話しですよ」Dがエキサイトするのと逆に、ひとつ置いた隣りの席の連中が聴き耳を立て始めたのを、S河は気にしていた

「おぉや、こんなとこにいたんだ」大きな声がして、Dの目の前の椅子に、どかっと腰を下ろしたのはメインキャスターのO倉だった
「あっ、どうもでーす」S河が反射的立ち上がって、挨拶する
Dは、先ほどまでの話を聴かれていたような気がして、気後れして立ち上がれなかった

「Dちゃん、お待たせ。例の件、番組で取扱い、ゴーが出たから準備しといてナ。最低でもAさん連れて来て、出来るならグリーンマンって言ったっけ、登場させたいよナ」それだけ言うと、O倉はさっさと席を立って向こうに行ってしまった
「良かったじゃん。大将がゴー出したんだから、早速プラン練らなきゃね」S河は笑顔だったが、このところ全く連絡をしていなかったDは、無理して笑顔を造らなければならなかった

翌々日、急遽開かれた企画会議は、O倉主導で“F原発完全廃炉の鍵を握る異星人G”という存在を、どの観点で扱うかの方針確認会議の様相で進められた
O倉が強調したのは、Gが何者かということより、完全廃炉に向けて、日本と日本人が、Gとの信頼関係をどう醸成できるか、そこを確立した上で、電波に乗せたいということであった

そうなると、Dの役割はAの出演と併せ、Gをスタジオに呼べるか、或いはスタジオ外にせよ、Gに登場してもらい、なおかつ視聴者にとって好ましいスー〇ーマン像を、見せることにGに振舞ってもらえるよう、Aに説得役を引き受けてもらえるかという、文字通り要の役になる
そんなこと、引き受けられるのか、と思う反面、あのAさんなら、なんとかしてくれるだろうとも思え、血の気の引いた面立ちではあったが、大きくうなづいて「はい、やらせてもらいます!」と宣言した

*

同じタイミングで、D田も危ない橋を渡り始めていた
TテレのO倉キャスターに、廃炉計画Gの第2段階OKのサインを送ったのは、ほぼD田の独断だったのだ
posted by 熟超K at 14:28| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説