2017年11月25日

熟年超人の日 stage3 18

私の住んでいるK市は人口15万弱の地方都市で、アパートの隣りには梨畑もあったりするのだが、それでもJR駅近くともなると、14階建てくらい迄のマンションも多くなり、中規模のショッピングセンターも2つある
要領を得たので、屋根伝いにジャンプを繰り返して、駅前の飲食店街近くにまで来ると、さすがに酔っ払いが歩いていたり、若い連中のグループがつるんでいたりしている
街明かりで、姿を見られはしないかちょっと気にもなったが、灯りがあれば影もありで、そんな影伝いにすいすい進むことが出来、やがて一番背の高いマンションの屋上に立つことができた(高所恐怖症気味だった私はもういない)

さて、と下界を眺めながら巷の様子を観察しているうち、Gスーツに比べると、街の音が明瞭に聞こえることに気付いた。さらに、耳を澄ませると、個々の音源がクリアに聴こえる。それは、アパートで張り込んでいる刑事たちの会話を聴くのとは比べ物にならない
しばらく、その新しい能力の限界を確かめるうち、音源までの距離が1q程度まで可聴域だと分かった
街の音というのは、こんな夜遅くでもなかなか騒々しい。車の走行音、JR電車の音、時折りパトカーや救急車のサイレン、音感レベルを上げると各住居からも様々な音が発生しており、そこに会話の断片が入って来る
なにか事件の音でも紛れているのでは、と思ったがテレビ以外、それらしき音は聞こえない
まあ、テレビの連続刑事ドラマでもなければ、そうそう出くわすことはないのだろう

多少拍子抜けの体ながら、それでも出来るだけ格好よく屋上に立つことを心がけつつ、もし今、女の悲鳴でも聴こえたら、どうするだろうと考えていた。そりゃ助けに行くだろうが、酔っ払い同士の喧嘩だったら…行かないで様子を見ているだけにしたい
だって、どっちが悪いのか分かりにくいし、そもそもそんな些細なことに首を突っ込んでいたら、何人超人が要るか分かりゃあしない。そう思ってしまうと、正義の超人なんてやれるのか?と禁断の自問自答状態に陥ってしまう
超人を引き受けるにあたって、一番気にしたのがまさにそこだった
テレビのニュース番組でやっている様々な事件や揉め事を、リビングで観ていた頃、妻との間でさえ意見が合わないことが、結構あるくらいだ

ましてや、世間さまに至っては、立場や年齢で大いに正義の価値観も変わるし、ネット世界ともなれば、言うにゃ及ぶ状態である
これは、今後の超人活動の行動原則を決めておかないと、後になって大いに悩む羽目に陥りそうだ。転ばぬ先の杖、濡れぬ先の傘を用意しておかないといかん、と素の私が囁く
まず、私怨には関わらないようにすべきだな、うん
例えば、誰それの硬きを討って欲しい、とか、あの何やらがあそこに無ければ、みたいな依頼はバツだな
それから、企業活動の支援はしないことかな(T電のアレは、企業活動と言うより日本の問題だからマルだ)
もちろん政治には関わらないこと、探偵ものみたいに事件の解決なんてのはやめとこう、随時対応型の超人活動には向いていない

一も二も無く飛び込んでいけるのは、自然災害だな。Gスーツで片付けるのにぴったりだが、素の私がその都度Gにテレパシーで依頼するということになるのが、ちょっと引っかかるが、まあいいだろう
次は、大きな事故が起きたときだ。これは、発生の第一報が入ってから駆け付けても間に合いそうだ。
問題なのは、戦争とか、大規模テロやハイジャックか。戦争となると、介入が難しい。以前、砂漠の国に行った時には、なんとかなったが、もしやる気満々の軍隊が相手となったら、そうそういなし切れないだろう
もっと難しいのは、難民問題や飢饉とどう対するかだ。弱い者の味方をするったって、どこまでどう弱いのか、なにが原因か見極められる自信が、無い
そんなことを考えているうちに、時が経ち、腕時計を見ると1時を回っている。下の世界にはほとんど人が居なくなり、たまに車が走り抜けていく
しょうがないな、なんだか眠気が差してきそうなので、部屋に帰るとしよう(ジュブブの連絡も入りそうだし、相談したいこともあるし)
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2017年11月16日

熟年超人の日 stage3 17

さすがに地上に降りたら、這っている訳にはいかないので、すっくと直立する
夜の闇にまぎれて、この姿はまさしく忍者
ならば、忍者らしい動きをしようと、物陰から物陰への移動を、忍者をイメージしてささっと動いてみる
やってみると、我ながら見事に決まった(と、これは自画自賛なり)
夜と言うこともあるので、その動きは一般人には決して見えないと思う
それでなくても、超人として動けば、すごいスピードが出せるのだが、この影スーツを着用すると更にスピードが増す。いや、それ以上にすごいのはストップ&ゴーが半端ないのだ
つまり、こちらからあちらにほぼ瞬間に移動でき、そこで一瞬止まり、次の瞬間また別の場所に移動できるという、昔読んだ忍者マンガの分身の術ができそうな勢いなのである
とにかく体のキレがすごくて、我ながらほれぼれするような滑らかな動きが出来るのだ。まさしく、昔スキーを始めて大分経った頃の、ボーゲンからパラレルに進歩し、さらにこぶのある斜面が楽しく滑れる場所になったときと同じような興奮が甦ってくる

その上、体が軽い。超人になって以来、体を重く感じたことはないが、それ以上にとにかく軽い!
恐らくこのスーツは、常時重力をコントロールしているタイプなのだろう。Gスーツ着用時の、重力コントロールは、対象物に対して手でやっていた印象だが、こちらはスーツ全体でやってくれているような、そう電動自転車のような働きをしていると言えば、やや似た感じかも知れない
身体を動かすのが楽しくて、これはやり過ぎそうだと、本来の私がブレーキをかける
なんてったって、ここはご近所(というか住まいのすぐ前)の梨畑なのだ。いくら、忍者だってそのうち誰かに気付かれる。場所を変えねば、と思ったがあいにく空は飛べない。ならば、屋根から屋根に跳び移って移動できるかどうか、試しにひょいと跳んでみる
身が軽いというのはこのことだろう。以前、月面でいろいろやってみたが、あれよりずっと軽く跳び上がっただけで、アパートの屋根に再び戻れている

道路の向かいの住宅の屋根に跳び移ってみようかと身構えたが、もしそこまで跳べずに、張込み車の見ている前に落ちたら笑えないと、このアパートの並びの3階建てのマンションの屋根を目標とする
距離にして5mくらい、高低差も5mと推測し、思い切って跳ぶ
なんと、3階建てマンションは軽く跳び越してしまい、駐車場に着地とあいなった。まずい、と思った瞬間、再びジャンプして、今度はちゃんと屋上に降り立つ。むろん、なんの物音も立てずに
アニメなら、影のようなものがシュッと動いて、効果音のシャッとかいう音が入るんだろうが、あいにく動いている本人には、そう想像するほかはない

その後、しばらくあちらの屋根からこちらの屋上、という具合に跳躍力を活かした移動方法の確認はできたので、次は腕力のチェックをと、アパートから2qくらい離れた町の、建設会社の重機置き場に行ってみる
Gスーツで1万tくらいまでクリアしているので、余裕でユンボくらい持ち上げられると思っていたのだが、住宅建設現場でよく見かける自重3tとなっているものでも、ひょいとはいかない
やっと片側が上がったものの、Gスーツのように全体をそのまま持ち上げられず、とうとうドスンと地面に下ろしてしまう。お蔭で、最初置かれていた位置から、ちょっとだけずれてしまったが、明日の朝、ここの従業員が気付くかどうか…まあいいか、変だと思っても夜中に象が散歩に来たのか、と思ったりして

それでは、真夜中と言うこともあるし、このまま影スーツでパトロールのまねごとでもしてみようか、と少々わくわくしながらの出撃ということになった
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2017年11月11日

熟年超人の日 stage3 16

こうして部屋の中で考えていても、埒が明かないぞ、と姿見の中の自分に発破をかける
結局、正義の味方をやろうにも、行き当たりばったりになるのは、起きつつあるか、起きたばかりの事件やッ事故の収集能力がないことなのだ
テレビの中では、スパイダーマンが悪と対決をしているが、あ
こうしてテレビの報道番組を観ていても、多分放映されているものは、ほとんど事件・事故が起きた後、映像を集め、取りまとめたものだろうし、ライブ映像などはほとんどヘリからの画像で、それを観てから正義の味方参上では、絶対間に合わない(立て籠もり事件ならアリだが)と思う
台風や土砂崩れ、大規模交通事故なども助けに行こうと思えばやれそうだが、それがないときの事件となると…。なら、報道される前の段階、警察や消防から直接情報収集して繰り出すのはどうなんだろう

そのとき、ふいにA県警のK刑事のことが頭に浮かんだ
彼にそのあたりの協力が得られないか、聞いてみるのもいいのではないか
そう言えば以前、マンガ喫茶で出会ってGと私の関わりの話をしたとき、テレビリポーターの知り合いがいるとか言っていたな。あの刑事さんなら、正義の味方のお仕事のお手伝いをしてくれるかも
そしてテレビリポーターさんは、今後マスコミがどの程度、私の仕事に関わって来るかの、情報源になってくれるのではないか(例によって、自分に都合良く考えを進める癖が出ているが、大体そんなものだろう)
彼の携帯番号は分かっているのだから、これから電話してみよう(影スーツを解除)

時計を見ると10時5分前だ。まだこんな遅い時間に、という時間でもないだろう。早速、携帯の着信履歴から、K氏に掛けてみる(…携帯の会話が盗聴されている可能性は考慮しておかねば)
「もしもし、K刑事さんですか、Aです。ちょっとよろしいですか」6度目のコール音の後、K刑事が出た
「Aさんっすか、…なんですかこんな時間に」声がもごもごしているから、遅い夕食の最中だったようだ
「お食事中でしたらすみません。ちょっとご相談したいことがあったものですから」
「…いや、構いませんよ。で、この場で伺うのもなんなんで、明日は非番ですので、あの喫茶店で11時、というのはどうっす?」さすが刑事さんだけあって、察するところは察していてくれている
それでよろしく、と私が返して会話は終了

明日、K刑事に会って、情報収集への協力が得られるかお願いするとして、今夜はまだ時間があるなと思うと、影スーツで出かけたくなってくる(どうもこの辺りの抑えが効きにくい…若返ってるなぁ)
思い立つと矢も楯も堪らない、というやつで、まずは周囲偵察で張込みの皆さん方の位置を確認しておく
車の方は相変わらず2名いるが、どうやら人が入れ替わっているようだ(交代制なんだろう)
住宅組の方は部屋に誰も居ず、カメラだけが作動している
これなら大丈夫とみて、今度は梨畑側の窓に移動し、向かい側の受験生の部屋を透視する。やや朧だが、ちゃんと机に向かって勉強している人影がある。そこまで確認した上で、メガネをケースに入れ、今夜は持って行かずに、ベッドの枕の下にしまっておく。それから、部屋着のグレイのスウェットスーツに裸足というスタイルで、影スーツを装着する

窓を少し開け、文字通りするりと滑り出る。驚いたことに外壁に手をやると、ぺたりと吸い付いて体が支えられる(というより、体重を感じない)。そのまま、やもりのごとく壁を伝ってアパートの屋根に上ってみようとしたが、ひさし状に突き出ているので、ちょっと上りにくい
最初の超人体験のときには、まだスーツをもらっていず、ジャージのまま中東に飛んでいけたことを思い出し、このスーツの飛び具合はどうだろうと、宙に浮こうとするが外壁にくっついて離れない
この状況に、一瞬うろたえたが、すぐに(そうかこいつは飛べなくするんだ)と、一人合点する自分がいる
まあ、しょうがない、それなら何が出来て何が出来ないのか、しっかりテストしよう、という気持ちになる
(こんなに臨機応変に状況変化に対応できる人間ではなかったはずだが、これも超人変化なのか)

突き出たひさしは、落ち着いてやってみると、オーバーハング部分にも普通に吸い付くので楽々クリアでき、平らな屋根の上にへばり着いた格好で、路上の張込み車を見下ろすことができる
このアパートの屋根部分は、鉄筋コンクリートの大型マンションとは違い、なんだか強度が足りなそうに見えるので、最初は恐る恐る腹這いのまま動いていたが、そもそも体重もないような身の軽さと、あれほどしっかり吸い付く手足が、いざ動こうとすれば、全く気にせず動けることが分かったので、途中からはすいすい動き回れた
次は地上でテストだと、再び壁伝いに移動して梨畑に降りる(ほんとヤモリだ)
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2017年11月09日

熟年超人の日 stage3 15

姿見に自身を映して、まずコスチュームの色が変えられるか確かめてみることにする
黒い色に見えるが、よく見ると真っ黒ではないようだ。例えば、夏の真昼の影のように、黒に見えているがよく見れば黒ではない、というような濃いグレイと言ってもいいような不可思議な色だ。いかにも“影”らしい
そもそも私たちが認識する色、というのは反射光だということだが、このコスチュームの素材は、なんとも不思議なものだ。もちろん繊維ではなく金属でもない
鏡に映っている私の顔は、Gと同じようにフルフェイスだが、あちらが夜店で売っているウルトラマンのお面のように、硬質なつるんとした風情なのに対して、こちらは布感というか、顔の凹凸が多少分かる外観になっている
しかも、現在の私はメガネをかけたままなので、良く見るとそれが分かるのだ

あの時は、たまたまメガネが邪魔だと思い、ジャケットのポケットに入れたが、かけたままだったら変に見えたかも知れない。そこにいくとGの方は、体もでかくなるだけ着用している服装から靴まで全て、そのまま覆ってくれるから便利だ
今こうしてじっくり考えてみると、Gのスーツは宇宙服的な用途のものなのかも、と思い至る私であった
さてそれでは、影スーツ着用の際はメガネは外す、ということになるが、影から私に瞬間的に戻らなければならなくなった時に困りそうだ。となると、実際には必要が無くなっているメガネを、日常的に外しているか、コンタクトレンズに変えました的な話にするか…(それも疑われると言えば疑われそうだな)

あれこれくよくよしていても仕方ないぞ、と最近とみに楽観的な考えになった私が、熟年の分別を持っている私に囁いてくる
まあ、それもそうだ。メガネはメガネケースにでも入れて、内ポケットに収めておけば大丈夫だろう。それより、影をどのケースに使用するかだ
Gと棲み分けするのに、私の警護役みたいな設定を考えたが、そうなると私が危ない目に遭わないと出て来られないということになってしまう
それなら、純粋な警護役というより、忠実な家来、それこそ忍びの者という設定にすればよいのかも
なにかを訪ねられたら「殿の命により参上」とか、「主人の命により」くらいの、短くてびしっと決まる、決めゼリフでいこう

考えていると、次から次にアイディアが湧いて来る。時代劇調の方が、興が乗るというのはやはり年のせいだろうな
名前も人物設定もできたので、それではどこかに腕試しに行こうか、という段になったのだが、そうそう事件なんてありっこない。まあ、この前の(や)さんの事務所に押し掛けた手で行けなくもないが、自分からトラブルを起こすのはどうかとも思う
そもそも最初にジュブブ氏のコンタクトがあったとき、彼(だろう…な)は、君の超人勤務の1回目だとか言っていた。超人的な働きをしたときが、カウントされているとすれば、それは月とか週に何回くらいをする設定になっているんだろう。かつ、その成績みたいなものまで、記録されるのだろうか
期待を思いっ切り下回ったときには、なんらかのペナルティとか、勤務年数が延長されるとか、なにやらかにやらがあるのか
しかも、その行為は人類の為になること、なんて評価基準があるかも知れない
まあ、昨今の時代傾向を反映すると、正義なんて、分かり易い人助け的な行為か、火事場での消火活動、救命活動くらいしか思いつかない

いっそ規模を拡大して、どこかの独裁者をぶち倒すこともありかも知れないが、それだって独裁者が完全に悪で、しかもそれを排除すればその社会が良くなるか、というとそこはものすごく不透明だ
まあ、最初の1年くらいは、いろいろ試してみて、本当に実力行使した後に、その社会が好転するかどうか、確かめることにしよう
で、この影さんスタイルで、これからどこに行ってなにをしようか…
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2017年11月03日

熟年超人の日 stage3 14

自分の口から出た言葉に、なぜか視線を落としたまま表情を失くしてしまった聖乃に、Dは続けようとした言葉を呑み込んで、心が硬くなる
その、Dの反応が聖乃のぼんやりしていた思考を刺激して我に返らせる。どっと感情が吹き上がり、聖乃は激しく動揺した
「レギュラー…って、O倉さんからお話があったの?」なんとか話をつなぐ聖乃
「ああ、まあ確約してくれた訳じゃないけど、僕に取材を任せてくれたのは、チャンスだと思うんだ」話がスーパーヒーローの取材に戻ったので、Dは機嫌を直す。そのため、聖乃の心の陰りに気付かない
傍らに立ち尽くしている聖乃の姿が、改めてDの視界に飛び込んで来る。激情がDを襲い、その1枚だけのバスタオルを引き剥がす。聖乃の裸身を抱き寄せると、2人はそれぞれの想いを忘れたことにして、強く抱き合い、明かりも消さず、熱情の夜に沈んでいく
*
*

気が付くと時計は9時を回っている
大げさに言えば、越し方行く末に思いを馳せることで、ややネガティブに傾きかかっていた私だったが、そのうち、まあ、なってしまったものは仕方ない、それならそれで、妻や子や孫、或いはもっと先の子孫まで、超人パワーで見守り続けてやろうじゃないか、と得心したのだ
生来、ある程度まで悩んでいると、そのうちめんどくさくなって、吹っ切れるタイプだったが、超人になってからは、それが増進しているようだ
そのポジティブ性格のまま、テレビを点けると、洋画招待劇場でスパイダーマンの2だか3だかをやっている
1時間ほど観ていて、自分もあんな風に都合よく危機一髪の事件に遭遇しないかなぁ、と考え、いやいや私だったら、ああも簡単に事件や事故の真っ只中に飛び込んでいけないだろう
ただ、ああしてコスチュームを着て、街をパトロールするのはありかも知れない、と考えた

それに、気になっていることがあった
第2のスーツ、スパイダーマン風のスーツのことである
あのぼったくりバー事件に着用したのが、最初で最後なのだ
グリーンマンの方は、宇宙から海中、原子炉の中まで、様々な対応を試しているが、Sタイプの方は、非着用時との左を感じられるほど試していない。これは問題だ
需要が見込まれそうな新システムを、プレゼンする際のポイントは、運用規範の設定である、とはSAプランニングのM田井社長の数多い口癖のひとつだ
それともうひとつ、ネーミングが重要!だ
Gの方は、早めにネーミングしたので、活用度が高まったとも言えそうだ。翻ってSの方はいまだに名が無い。これじゃあ、いかん。ジュブブさんにも申し訳ない。なにしろ、あの方はいつも無駄がなく、超合理的な発想をされるではないか。故に、2種類のスーツを私に与えたのには、それなりの意味があるということだ

一応、Gは宇宙人で私が偶然助けたことがあって、その星の基本倫理にのっとって、私を必ず助けてくれるということにしてあるが、Sになった私と…いかん、Sではなく、なにか名を付けないと
こちらも将来的には、外国での運用もありそうだから、世界のどこでも通じるNinjyaがいいか。忍者ともなると、何流ということを訊かれそうだ。伊賀や甲賀では、技のことを言われそうだから、もう少しマイナーな、風魔、とか根来、戸隠なんてのはどうかな
なんだか、考えているだけでも楽しいが、もっと基本超人力で対暴力対応しやすいものがいいな。以前読んだ歴史本に空海の真言密教とか、役行者の話があったが、随分古い時代にそこから分かれた一族が、忍者的な者になって、その一族に伝わる口伝に、私の一族を守り抜くこととなっていたとか…
随分虫の良い話だが、これで押し通せば、これから先、動きやすくなるだろう。ついては、こちらの名は小角の編み出した流派の忍びの者で、“影”と呼ばせることにしよう

こうして名前を決めてみると、なんだか情が移るというか、親近感が湧くものだ。Gの方は宇宙人設定なので、超然としたふるまいでいくしかないが、こっちは日本人である私を、陰で助けるSPみたいな者だから、少しは地のまま動いても構わないだろう
そうと決まれば早速、ということで“影”のスーツを着用してみよう
おっと、その前に周囲偵察を怠りなく、さらに超人眼も駆使して、知らぬ間に誰かが覗いている、なんてことは無いようにしないと。念のため、パソコンを外して押入れに入れ、携帯も一緒に入れておく
こうしてしっかり眺めると、Gスーツに比べパッケージ状態もほんの少し小さめだ。ほんの微かに感じる(と言っても超人の私でなければ分からないだろうが)膨らみを指先で押すと、一瞬で私は黒いスーツに覆われる
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