2018年01月20日

熟年超人の日 stage3 27

リポーターDは、東京に戻る“のぞみ”の車中で、今日の刺激的なインタビューを思い起こしながら、なにか心に引っ掛かるものを感じていた。それは、らしくないスーパーマンのことなのだと感じていた
つまり、あれほど望んでいた、ヒーローであるはずのグリーンマンが、意外にも輪郭のはっきりしない存在だったという想いだ
Aの話す通りなら、本当の危機に遭遇しても、まずAに連絡して、Aがグリーンマンにテレパシーを送って、運良く地球の近くを通りかかるついでに、片付けてもらうことくらいにしか、ならないのではないか
テレビ的に言えば、全然キャッチーでないのだ。いやそれは不謹慎な表現かも知れないが、大衆はどんぴしゃのタイミングでヒーローが活躍しなければ、許さないのだ
例えば、何年か前の外国のフェリーが遭難したとき、そこに現れて陸にそっと置いて、中から助かった遭難者がぞろぞろ出て来るような、そんな絵を望んでいるということだ

ただ、今分かっているAが説明したグリーンマンだったら、そんなタイムリーな活躍なんて期待できない
となると、番組的には以前F原発で飛び回ったGの動画を手に入れ、その動画を流しつつ、各方面の専門家の先生方から、いかにすごいことをGがやってのけたのかを視聴者に強調しておいて、その後、唯一の(念のため裏を取る要あり)仲介人としてAさん登場、となるだろう
Aさんの立ち位置は、見かけどおりの一般人で、Gとの接点を本人の口で喋ってもらい…となると、どうもインパクトが薄い。たまたまGを助けたAさんが、日頃気にしていたF原発問題の解決をGに頼んだだけでは、話に膨らみがない
しかもAさんは、東北の出身でもないし、大きなくくりで日本人、というだけだ。いや、ここはそれを強調して、日本人全体の問題だから、とすればいいのか。あれやこれや、考えているうちに新横浜を過ぎている
そのときふと、今回のことを考えるきっかけになったN市の飲み屋街での、黒いヒーローのことが脳裏に浮かんだ。あの怪人のことにも、確かAは関わっていたはずだ

同じ頃、刑事Kも、あれから署に戻って、やり残していた報告書類を片付けながら、結局Aという人物は一体何なんだと、自問自答していた
話しは筋が通っているし、オチもない。なにか他の企みがあるとは思えない。いや、ひとつあるとすれば、Gを動かすことで、なんらかの謝礼をT電に要求していると、公安のD田警視が言っていたことが心に引っ掛かりを生じさせている
むろん、AにはAの家庭の事情もあるのだろうし、自分がAの立場だったら、生まれてくるこのために、なにか頂けるものなら、それが法外な要求でないのなら、やむを得ないと思う
ただ、子供のころとは言え、出身がF県のKには、Aが損得勘定無しで、F県を救ってくれようとしていると、思っていたかったのだろう
どっちにしても、自分が果たせる役目がこのことならば、Aを助け、結果グリーンマンだろうが、宇宙人だろうが、彼の地をきれいな大地に戻せる力があるのなら、なるべく早く実現させるのだ、と決意していた

公安警視のD田は、内調の知人から気になるメールを受け取っていた
『例の合コン、相手の趣味が変わったようで、取り敢えず様子見になった。また予定入ったら連絡する』とある。内閣の誰かが、Gの扱いを違う面から考え始めたということのようだ

そして、当のご本人、キーパーソンである私は、夕方にはアパートに戻り、明日T電のH本部長と連絡がついたら、1億円のことを言ってみる気になっていた。
これから、マスコミのDさんから、いろいろ頼まれることも多くなりそうだし、今のうちに家族を守れる城を手に入れておいた方が、いいぞ、と虫の知らせがしきりにするから…
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2018年01月15日

熟年超人の日 stage3 26

[ 4月21日pm5:50 千代田区内幸町1丁目 T電本社10階会議室 ]
午後1時から始まった役員会議は、10分ほどの休憩を2回挟んで、そろそろ6時の終業時刻を迎えようとしている
議長を務めているH本部長は、最後に自身が提出した“F原発収束に関わる超人力活用に関する議案”への認証が、これほどの否定的論議に傾いたことに、あせりと同時に大きな挫折感を感じていた
反対派の主なる論拠は、超人という不確かなもの(特にそれが一個人であること〜宇宙人と言えども)を、会社として国にどう担保できるのか、ということであった
さらに反対派の主張は「その超人が仮に廃炉から炉心を取り出すことが出来、原案通り廃タンカー等に移す際に、飛散する放射能をどうするか」から、「もし核廃棄物を積んだ廃タンカーをうっかり取り落としたら、どうするんだ」などの小学生レベルの反論に始まり、「宇宙人の超人を信じられる根拠は」というもの、仲介のAなる者の人間性への疑念に至るまで、個の存在である“超人”への疑義を持つ者が過半数以上を超えていた

さらに、現在の廃炉処理過程が曲がりなりにも一定の安堵感を国民に与えており、その仕組みを支える企業団が存在している現状バランスへの、否定要素になり兼ねないとする意見も多数出た
完全廃炉に至る道程が全く明確でない現状に、焦燥感を抱いている復興本社のトップとして、また東日本一帯を覆う閉塞感を、でき得る限り早急に晴らしたいHにとって、東京本社に座して小田原評定を繰り返している役員たちに怒りを禁じえなかった
そのうえ、志を同じくしているはずだった社長のN見山が、大勢に押されて、超人起用案を明確に支持してくれなかった事実が、Hの気勢を大いに損じていた
「それでは、本役員会の最終議題である“超人力活用によるイチエフ廃炉問題打開案”は、当面見送りということに結論されました。最後に、N見山社長の総括をお願いして、散会といたします」微かな望みを託して、Hは最後の言葉を絞り出して、最高責任者にバトンを託した

「本日の激論を伺い、わたくしの脳裏を過ぎったのは、あの5年前のイチエフからの第一報の電話です。核という高次元の技術を持って、電力の素とする道を選んだ以上、誰しもが予測しておくべきだった災害に直面して、わたくし達の誰もが脳裏に浮かべた悲惨な未来を、この国にもたらしてしまったのか、という悔恨の念に苛まれた記憶です。
その後の五年間に渡る現地担当社員の苦闘、苦渋の選択をしてくださったF県民の皆さま、多大なる支援を頂いた国や県、市町村行政に関わられる皆さま、などなど今のわたくしどもが、幾重にも膝を折って御礼申し上げなければならない、そしてお詫びを重ねなければならない方々がいらっしゃいます。
にもかかわらず、文字通り天から与えられたかのような、此の度の僥倖を、簡単に手放す訳にはいかないと思います。ただ、諸氏の心配される点につきましては、あらゆる方法で安心の証明をすべきと心得ます。
よって、本議案を提案されたH本部長主導の、“超人力活用の廃炉作戦”プラス“安全保障計画”を早急に立案して頂いて、後日の役員会にお諮り頂くことで、本日の多岐に渡る激論を、真に実りある論議としたいと思っておりますので、その意をお汲み取り頂き、これにて散会といたします」
さすがN見山社長、うまく締めくくるものだとHは感心し、思わずほっと吐息をもらした
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2018年01月06日

熟年超人の日 stage3 25

私がビデオ遊びに興じている同じ頃、成田空港2階の入国審査カウンターを、なんの問題もなく通過した米国籍のデイヴィス夫妻は、手荷物を受け取った後、第1ターミナル1階の到着ロビーで、目印の黄色いパナマ帽を被った口髭のあるアメリカ人を見つけ、大げさに喜びを表しながら、近寄って行った

『やあ、久しぶりだなジョー!僕だよ、ロジャーだよ』その声に、出迎えていたアメリカ人は急に満面の笑みを浮かべてロジャーと名乗ったマシューに向かって、手を振る
『いやー見違えちまった、かれこれ20年ぶりだな。ところで、隣りの美人は君の奥さんかい』
『そうさ、我が愛しのアリスを紹介するよ。アリス、こちらが昔海軍で一緒だったジョー・ハドソンだ』
『どうも、始めまして、ロジャーの妻のアリスです』少しだけぎこちなく手を伸ばして、ジョーの手を握る
『いやぁ、これはこれは、こんな美人と握手するのは久しぶりだよ』少々不謹慎な眼つきでアリスとして紹介されたラトゥーヤに視線を向けた後、ロジャーと名乗ったマシューに視線を戻し、ここは東京から離れているから、専用電車で東京に向かうよ、と言った

三人は、予約してあった成田空港駅16:19発の成田エクスプレス36号に乗車し、約1時間後、東京駅に着いた
大勢の人々が忙しく先を急ぐ流れの中を歩きながら、ロジャーことマシューは、ここはニューヨークみたいだな、と呟く
キャスター付きのサムソナイト(マシューは黒、ラトゥーヤは赤の)を引っ張りながら、荷物を持たずに身軽に先を行くジョーの後を、はぐれないように進むのはいささか難儀だった
『おいおいジョー、妻が大変だから、もう少しゆっくり歩いてくれよ』
『すまない。だがもう少しで、大使館の車に着くから、もうひとがんばり行軍してくれ。奥さんには申し訳ないが』一瞬立ち止まって、作り笑顔でそう言うと、すぐ歩調を変えずに歩き始める
やがて、Yaechika Westと書かれた表示板があって、ジョーが係員にカードを渡すと、目の前の鉄製ドアの奥で機械音が響き始める
『この国は、限られた土地をとことん有効利用しなければならないんで、パーキングはこうした高層式のが多いんだ』ジョーが補足している間、ラトゥーヤは息を整えている
車の積まれたエレベーターが停止し、鉄のドアが開くと、黒塗りのキャデラック ATSセダンが現れる
『さあ、荷物はトランクに、そして君らはこちらに乗ってくれ』どこに居たのか、多分大使館の下級職員らしき人物が現れ、マシューたちのサムソナイトを車のトランクに収めてくれる

いかにもアメリカ車らしい、ゆったりしたシートに二人が腰を落ち着けると、車は動き出し、助手席に座ったジョーが、後部座席を振り向いてなにやら紙包を差し出す
『知ってるように、この国では銃器類は完全ご法度なんだ。で、こちらで用意しておいたこれを、使ってくれ』重い紙包みをロジャーに渡しながら、ジョーがさりげない声で言う
『それは、僕らも知っている。これは、グロッグとベレッタ、ナノだな。こっちでこれを用意してくれたってことか。どうも、ご親切にありがとう。アリス、この可愛らしいやつは、君のハンドバッグにでも入れるといい』オーストリア製のグロッグ19は、重さ595g銃の長さは174oで19発の9o弾を装弾できる。マシューが本国で愛用しているベレッタ92と比べると、随分軽く装弾数も4発多い
アリスことラトゥーヤに渡したベレッタ ナノは、女性の護身用ピストルとして普及しているもので、重さ562gとさらに軽く、全長143oとかさばらないが、装弾数は6発と、いざというとき用の仕様になっている

『君たちのほかに、ラングレーからはもう1名、デスモンドという情報本部の調査官が派遣されている。彼は言わば表の調査官で、日本の政府関係者と会ったり、原発収束作業状況の調査をする。君たちは、今回の事案のキーパーソンであるAという日本人と、その周辺を調査することになる。Aの周辺には例のスーパーマンや、日本のYAKUZA、そして日本の公安警察がからんでいるので、武器の携帯を認めた訳だ。もちろん、その銃はこの国を離れるときには、こちらに返却、もしくは廃棄処理してもらう』笑顔をやめたジョーの口調は、冷徹な響きを帯び、マシューとラトゥーヤにこの任務が、そんなに軽いものではないことを表していた
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2018年01月02日

熟年超人の日 stage3 24

「Aさん、Gに頼めることは、日本国内のことだけなんでしょうか」おっときたぞ、それは、私も考えていたところだ
「それは、世界の難民や、独裁政権の横暴や、宗教がらみの爆弾テロみたいなことですか?…それについては、Gの伝えてくれたイメージのようなものからの私の推測ですが、そういった現在の人類の精神レベルで起きている問題には、不干渉とするのが宇宙の先進星人の行動原理のようなんです」このセリフは、ジュブブの言っていることからの推測ではあるが、今のところ判断を任されている私の個人的見解でもある
「そうなんですか…」Dの質問は、トーンダウンしてそのまま途切れてしまう
「で、その手のことはあんたが頼んでも、あいつはやってくれないって、そう言うんだな」重い声で、K刑事が呟くと、続けて話し始める
「まあいいじゃないか、やってくれることと、やってくれないことがあっても。とにかくF原発は片付けてくれるんだろ」と、重ねて念を押してくる
「ええ、現地にも行って、破壊された炉心から、デブリだけじゃなく、放射能汚染された廃材なんかも、タンカーみたいなものに積み込んで、太陽に捨てに行くと言ってました。いや言ってたんじゃなくて、そう感じました」一人二役って難しいもんだ
「そんなに具体的に、進んでるんですか」Dがようやく口を開くと話を続ける
「そう言えば、O倉さんもなにか知ってる口振りだったなぁ。なにか政府筋から、スーパーマンに関する民間のネット動画を消し込む作業が進んでいるとかで、F原発のこともN市の(や)事務所が壊滅した事件も、報道が伏せられてるんだそうですよ」なるほどそうか、それもあってT電のH本部長の歯切れが悪くなっているのか(と合点がいった)

「まあ、大きな事件が起きれば、上の方は必ずごたごたするさ。そういうもんだ。なにせ、どこかがうまくいきゃあ、それを放っておいた誰かが責任問われるし、うまくやりたい奴らは、後から船に乗り込みたがるからなぁ」K刑事がしたり顔で補足する
「そこに風穴開けて、大衆の声で正しい方向に持って行くのが、我らマスコミですから」Dの目に生気が戻る
「私もGに、そのあたりをしっかり説明して、こちらのごたごたで嫌にならないよう、うまくフォローしておきますよ」私のフォロー発言を潮に、ランチミーティングは終わり、三人は別れ、向こうの席に居た公安刑事は私に、それからいつ来ていたのか、もう一人公安らしき人物が、Dの後を追うように、一番最後にカフェレストランを後にした(K刑事はお構いなしというところか)

皆と分かれ、公安の尾行者を連れて、K市のアパートに戻る前にN駅に隣接しているデパートの紳士服売り場を覗くことにする(これから先、様々な人物と出会わなければいけなくなりそうで、超人化して以来、身が引き締まってしまったので、定年前の一張羅が身体に合わなくなってしまったからなのである)
さすがにデパートの紳士服は、ショッピングモールの吊るしとは違い、お値段が高めで気後れしたが、思い切ってウールの海外ブランドの服を何着か試着してみる
これも、T電のH本部長さんの100万円のお蔭だ。だが、リポーターのDさんが言っていた話が本当なら、この後どうなるか、いささか心配でもある。会社が設立できたら、当座の前金、というか手付金として1億円ほど請求してみようと思っていたのだが、さあどうなることやら(マスコミが報じるF原発収束にかかる費用概算からすれば、問題ない金額に思うがなぁ…)

代金を支払っているとき、公安の刑事さんがどんな反応をしているか、とても気になっていたが、目の前の紳士服売場の担当者に、私が超人力を発揮しているところを見せる訳にはいかないと、我慢する(一度試しておかないと、今後に支障をきたしそうだ)
そこであることを思いついたので、デパートを出た後、N駅西口前にある家電量販店に寄って、3万円くらいのビデオカメラと三脚を購入して、お買物袋を下げてアパートに戻る
部屋に戻ると、早速三脚を立て、ビデオカメラを装着して、ひとしきりカメラの前で周囲偵察、透視を試みてすぐに画像をチェックして、自分がどんな顔になっているかをチェックしてみる
その結果、周囲偵察時には手を額にもっていって、なにかを思い出そうとするポーズをとれば、表っ上の変化を隠せることが判明、また、透視眼を使うと、眼に異常に力が入り、変な風に見えること、聴覚に集中すると、表情が無くなって、やはり変に見えることが分かった(デパートでやらなくて正解!)

やってみて、結構おもしろかったので、シチュエーションを変えていろいろ試すうち、周囲偵察は歩きながらでも、普通の表情でやれること、聴力も慣れたら人目につくような変化は起きないことが分かる(透視眼は表情の変化なしは難しい)
その後、思いついたので素早く動くところ、影スーツとGスーツを着脱するところも録画し、どんな具合に見えるのかをチェックしてみた(変わる瞬間は想像通り、ボヤッと画面が揺れるくらいでうまく映らない)
posted by ミスターK at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説