2018年07月03日

熟年超人の日 stage3 48

「すごい技だな。初めて見る。古武道のようだが、何流かな」老人が、感心したような声でそう言うのを、部屋の隅に控えていたN絵が、B東のもとに素早く歩寄ると、片膝をついて右手の具合を調べて首を振る
「手首が折れているようですので、手当てをしてあげたいと思います」そう言うと、老人が微かに頷いたのを確認してから、もう身を起こしてているB東に肩を貸し、私に一礼すると、二人で部屋を出て行く
私としては、B東さんの袖を掴みに来る手の、予想もしない速さにびっくりして、反射的に超人力100%でその手を払ってしまったための、事故みたいなもので、手加減できず悪いことしたなぁ、と反省
とにかく今後は、こうした日々の習練で極めた技に対応する場合、こちらもある程度ちゃんとした格闘術を習っておかないと、普通人のAとしての状態で暴力沙汰に遭遇したとき、強さの説明がつかなくなる

「流派はともかく、Aさん、あんたが只者ではないことはわかった。そこで、もうひとつお尋ねするが、あんた、この日本をどう思っているのかね」両の手を膝に置き、正座したままの老人が、こう問うてきた
「いやぁ、私としては日本、いい国だと思いますよ。諸外国より国内がすっきりしていて」
「それは、人種という意味でかね」老人の興味が高まってきているのが、超人耳に鼓動の変化として伝わって来る
「まあ、それだけじゃぁなく宗教への依存度もそれほど高くないですし、四季の変化を同じように感じたり、言葉が大体そのまま通じることとか、つまり価値観のベースが共有できているということでしょうかね」…こう答えながら、国粋主義の権化みたいなこの老人に、受けそうな話を語れるのは、企画屋ならではの処世術だが、満更方便でもないのが本音

ふふっ、と老人は笑いを漏らすと「あんたは、人を喜ばす方向に話を持っていけるタイプだな」と、ぼそっと言う。なんと、見抜かれている
「まあよい。ところで、あんたから見て、その宇宙人のグリーンマンとやらは信用できると思うかね」突然話題が飛ぶ
「ええ、まあ、頭の中に直接コミュニケーションして来るので、彼の考えの基になっている判断基準みたいなものまで分かります」
「ほお。それは、彼の話に嘘が無いことが分かる、という意味かね」
「嘘が無い、というより、彼が伝えてくれることと、私が彼に伝えたいことが、ずれていないことが納得できる、みたいな感じでしょうか」自分でもよく分からなくなって、理屈になっていないような説明になってしまう。まず私自身、超人状態と人間的な部分の区分けがはっきりしていないし、まして宇宙人(この場合ジュブブだが)の考え方だって、よく分からないのだから

「そうか。なら例の事故原発を片付けるふりをして、タンカーに積んだ放射能ゴミを、どこかの国の首都にでも持って行って、そこにぶちまけるよう頼むとか、出来ないかね」真面目な顔で、すごいことを言う
posted by ミスターK at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説