2018年09月23日

熟年超人の日 stage3 57

N市(*シカゴ、ヒュストンと似た人口・産業バックを持つ大都市)に着いた我々二人は、まずN市にある県警本部を訪ねた…事前に大使館のCIA局員グスタボ・ステァリングから、宇宙人の2度目の出現がN市のYAKUZAの事務所だったこと、そこでひと暴れしたこと、巨大な金庫とデスクを県警本部に持ち込んだ、という情報を得た上での訪問だった。そして、2つの現場には何人もの目撃者がいたことも把握しての訪問だった

県警の広報担当者に、A国の超常現象専門誌『パラノーマル・ライジング』誌の記者とカメラマンだと名乗って、今回の宇宙人騒動の関係者にコンタクトを取りたい旨を告げた(*L.C.が日本語堪能)
代わって出て来たのは、捜査第四課(*YAKUZA対応部署)のKという刑事で、互いに自己紹介の後、質問に入る(*会話の余分な部分は省略)
《L.C.》「その宇宙人の破壊行為で、死者が出なかったというのは、本当ですか?」
「はあ、出ませんでした。負傷者は重症の者が何名か出ましたが、命に別状はありませんでした」
「その負傷者は、YAKUZAでしたか?一般人でまきこまれた者はありませんでしたか?」

その時、刑事が笑ったような気がしたのだが、日本人の表情が見分けにくく、確証は持てない
「グリーンマンはそのあたりを大変気を遣っているように思います。ええ、一般市民は全く巻き込まれていません。奴らの事務所から、でかい金庫とデスクを持ち出したときにも、窓の落下を気にして枠ごとそっと外して、室内に置いてから、飛び出しています」
「ええっ、YAKUZAの事務所をぶち壊しておきながら、窓枠はそっと取り外して出て行ったと言うんですか?」L.C.が驚いて聞き返す
「そうですねぇ、窓ガラスの破片が、下を通りかかった人を傷つけるのを恐れたんでしょう」(この国ではスーパーマンさえも礼儀正しくふるまおうとするのか!)

「それからこの警察署に、YAKUZAの悪事の証拠になる資料の入った“金庫”と“大型デスク”を持ち込んだのですね。それを貴方も見ていらしたのですか?」
「いいや、私はその現場を見てはいません。署内の人間が何人か目撃したようですが、その後の署内の調査によると、金庫と机を持って降りて来たところを見た者が二名、それらを駐車場に置いて飛び去って行ったのを見た者も二名、ただ特にA国の雑誌さんにご紹介できるような、面白い目撃談はなかったです」確かに、その調書の写しなるものは、この国の公安警察を経由して、我々にも開示されており、この刑事の言うように、特段面白いものではなかった

ただ、警官の一人の証言に宇宙人が運んできた金庫と大型デスク(木製)について、運んで来た様子から、デスクの方が重そうに感じられた、という印象を語っている部分が、我々の注意を惹いていた
「その警官の方たちから、お話を訊くことはできるでしょうか」丁寧な(日本語は分らないが)口調で、L.C.が刑事に訊ねる
「いやぁ、今日は内勤の二名は非番なんで…、外勤の二名は巡回に出てるはずだし」非協力的な刑事の態度に、L.C.の表情が硬くなったのが分かる
「じゃあ、もう伺えることは無いのかしら。それでは、怪我をしたというYAKUZAたちの、入院している病院を教えて頂けますか?」若干鼻白んだ口調になるL.C.
「それは…、いいでしょう構いませんよ。警察病院ですから。ただし、面会して話を聞けるかは、そちらで判断してもらってください」素っ気なさでは負けていない刑事

そんな訳で、我々はその刑事にタクシーを呼んでもらって(A国政府の人間だとは名乗っていないから、警察の車は出してもらえない)警察病院に向かってくれと頼む
「警察病院ですか、どこの?」タクシーの運転手が怪訝そうに言うので、L.C.がこのN市のよ、と言うと、なら歩いて行った方が、早いよと言う
なんのことはない、県警本部から歩いて5分もしない距離だった。あの刑事が、これほど不親切なのは、この国の警察組織の上層部からの指示があるからだろうか
警察病院の受付で案内を乞うと、特別病棟というフロアに案内してくれた
その605号室に収容されているYAKUZAの名は、ケンコーと呼ばれている20歳くらいの若造だった
posted by ミスターK at 16:17| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説

2018年09月09日

熟年超人の日 stage3 56

『私の方と言えば、NRC(原子力規制委員会)の調査員という触れ込みで、F原発の関係者から事情聴取していただけだから、さほどの困難はなかったんだが、彼らは民間のオカルト誌の記者とライターという肩書だけで、日本警察はおろか、YAKUZAや歓楽街の怪しげな連中から、情報らしいものを刈り集めなければならなかったんだから、随分と大変だっただろう』カップに注いだコーヒーを見つめながら、静かに話し出すデスモントの口元を、ジョナサンとオーウェンは興味深く注視している

『私の調査は終わり、日本の原子力発電システムの建設から、今回の廃棄作業まで、文字通りゆりかごも墓場も作る羽目になった様々な立場の連中が見て、判断した宇宙人の話をまとめて国に報告書を送る前に、ちょうどN市から一旦戻って来た二人と、どうせならポイントだけでも情報交換しておかないか、と、こっちから持ち掛けてみたんだ。つまり、私もひっかかるところがあったんだ
もちろん、そんなことはすべきでないことは分っていたんだが、あまりにも私がまとめた報告書が現実離れをしているように思えたんで、論調を確認しておきたかったんだ。この件は我が国にとって、さほど重要なことではないという論調をね』

『彼らも用心しながらではあるが、同じような気分になっていたんだろう。じゃあ、ちょっとだけ情報交換しようか、ということになって、大使館から大分離れたSHIBUYAのIZAKAYAに行ったんだ』ここで一口コーヒーを飲む
『彼らの収集してきた話しは驚くべきもので、かけ離れた存在に思えていた宇宙人が、日本人の特定の人物を守るような行動を取っていたという事実。さらに原発への介入も、その日本人の指示あるいは依頼で動いていたということだったんだ。つまり、宇宙人と言いながらも、著しくこの国寄りな行動をするスーパーマンってとこなんじゃないのか、という疑惑に満ちていた、というのが彼らの印象だった』ジョナサンとオーウェンは、思わず顔を見合わせる

『詳しいことまでは打ち明けてくれなかったが、大体そういうことで、今度は私が彼らにネタを披露する番だ。まず、1万トンもある鉄製のフロートタンクを持って、空を飛び回ったことについて、日本人技術者たちは魅了され、そう文字通り魅了されたってこと。その宇宙人が話の分かっている奴で、そうどこか大手代理店の企画売込みみたいだったってこと。それから、物を大事に取扱い、周りの、つまりあの日原発作業所にいたみんなのことを気遣い、クレーンカーなども大切に移動させ、放射能まみれの破損した原子炉の中に入って、なにも壊さず、デブリを取り出してくれたことに、日本人を感じるって思った奴が何人も居たってことを話してやったら、顔色変えて、もう一度N市に行って来るって言って、また情報収集に戻って行ったんだ。それで私も、報告書の見直しと追記が必要になったて訳さ』そう言うことかと、大使館員と資源担当オフィサーはうなづき合い、それから週末に行くゴルフ場の話題に興味を転じた

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[ 作戦本部東アジア部エージェント1208 トーマス・グラース 04ランクレポート ]同行者:情報本部東アジア分析部/ラトゥーヤ・コーカー

主題:同盟国日本に出現したグリーンマン(以下G)と呼称される地球外生命体、及び、Gと連携した場合の日本が包括する“我が国への脅威”の考察

20160421(Japan Time)日本入国後、大使館員のジョナサン・ハドソンと接触。以後、超常現象誌『パラノーマル・ライジング』の記者(L.C)とレグマン(T.G)のデイヴィス夫妻として調査行動開始
20160422(JT…以下略)東京よりN市に移動するためSHINKANSENに乗車した
posted by ミスターK at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説