2018年10月21日

熟年超人の日 stage3 59

L.C.と話し合って、Aという人物について知っていることを話してもらうため、再度県警本部のK刑事を訪ねると、Kは捜査で外出してしまったということで、代わりにD田という東京警視庁の男が現れた(その男はKよりも若く背も高く、階級も数段上のようだった)
『お二人は、パラノーマル・ライジング誌の記者さんとレグマン…、このレグマンというのは?』東部訛りの流ちょうなアメリカ英語を操るその男は、簡単な挨拶を交わした後、そんな質問を向けてきた
『レグマン(Leg man)は、取材記者、もしくは情報収集者です。彼女が日本語で取材し、私がその結果を整理して記事にします』英語が通じる相手だったし、どうやらただの警察官ではなさそうなので、私が答えた

『そうですか。お宅の雑誌を拝見しましたが、超常現象を専門に扱っているようで、本件のような話がそんな観点の記事になり得るとは思いにくいのですが…?』
『はい、今回の事件は大変面白い事象を含んでいると思います。更に、我々A国人が大好きなスーパーマン…おっとグリーンマンですか。ウチの読者が喜びそうな、超人が大暴れしたという話ですからね』
『そうですか。それで、いいネタは採れましたか?』微笑みながらだが、眼光は鋭い。それを隠さずに見せているのは、こちらの正体に気付いているからだろう
『そうねえ、Aという人物を守るために、YAKUZAの事務所を襲ったんだと、Gは言っていたそうよ』L.C.が会話に加わり、核心に迫る人物名をD田にぶつけた

『A、ですか。その人物は我々も把握しています。でも彼は一般人で、貴方方のお好きな“超人”ではありませんよ』平然と答えるD田の表情の奥に、微かにゆらぐものが見えた
『もちろん、そんなことは思っていません。ただ、Gにとってのミズ.ロイスだったら、面白いな、と思ったんです。
そう、なぜGが特定の個人名をあげて、YAKUZAに警告したのか、大いに興味深いお話だと、わたしたちは思ってるんです。D田さん、貴方はそのAという人物と、Gとの結びつきの根源が何かご存知なのですか?』L.C.が女性である特権を活かして、ずばり核心を突く

『およそは。そう、Aという人物は、グリーンマンの窮地を救ったので、その恩を返してもらう約束をしたようなのです』なるほど
『では、Aという人物が望めば、グリーンマンは、Gはなんでも叶えてくれるというのですか。アラジンの魔王のように』
『どこまで適えられるかは分りませんが、まあそういうことだと我々は判断しています。YAKUZAの末端組織を壊滅できる以上の能力を有しているであろうことは、想定しております』歯に衣着せぬという答えだ

『分かりました。それではぜひ、私たちがミスターAに会えるよう、お取り計らいをお願いできませんでしょうか』今度は私がD田氏にお願いしてみる
『それは、残念ながら適えられません。そもそもA氏は民間人なので、我々も任意の事情聴取くらいしかできていないのです。そして、彼は今、どこかに姿をくらましています』慇懃ではあるが、きっぱり協力を断る返答がD田氏の締めくくりの言葉であった
もちろん、それは充分予測された態度ではあったし、こちらも所属をあいまいにしての問いかけだったので、さほどがっかりはしなかった

警察本部を出て、今度はS会の事務所が入っていたビルの管理人(L.C.がインターネットでチェックした)に会うため、SHINKANSEN駅近くのTOWAという、あまり美しくないビルを訪ねた
管理人の部屋は1階にあるだろうと見当をつけ、L.G.が何軒かドアベルを押して廻った。3軒目で中から返事が聞こえ、住人の女性が顔を出した
「すみません。私たち、このビルの管理人に会いたいのですが」L.C.が丁寧(多分日本語としては丁寧なんだろう)に訊ねると、いかにも夜の商売をやっていそうな顔色の悪い女性が「通路の端の100号室だよ」みたいな素っ気ない返事をすると、すぐドアを閉めて引っ込んだ

100号室のドアベル(日本語ではチャイム)は、鳴っているのか鳴っていないのか分からい状態で、3度押してL.C.が手を広げて、どうしよう、という風に私を振り返ったとき、急に中から外に鉄製のドアが開いた
管理人のK谷氏は、おどおどした感じの不健康そうな小男(5′2″くらい)で、上目づかいにL.C.と私を見ていたが、意を決したと言う風に、日本語で話しかけてきた
「なんだね、あんたたちは。外人さんみたいだけど、どっかのキャバクラで働くんで、ここに住みたい、って言うの?」
「いいえ、突然で驚かせてすみません。わたしたちはA国の科学雑誌の記者で、先日このビルで起きた事件のことで、管理人さんのお話を訊きたくて、お訪ねしました。わたしはアリスで、こちらは記者のロジャースと言います」L.C.の見事な日本語の応対に、管理人が驚いた顔になった
posted by ミスターK at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説

2018年10月07日

熟年超人の日 stage3 58

かのスーパーマンと一戦交えたという日本の若きギャング(全くのチンピラだが)は、訪ねてきた我々がA国人だったことで緊張していたが、L.C.が若く美しく、おまけに日本語が話せることに気を良くして、多弁だった(もちろん私には何を言っているのか分からなかったが、L.C.が後で話してくれた)
彼は肋骨を3本折って救急車で外科病院に運ばれ、それからこちらの警察病院に転院したということだった
以下は、彼の語った言葉の要点をまとめたものである(L.C.に私的に語りかけた言葉を省略)

[俺はガラス戸の陰にいたんだ。ヤスコー(この男は警官たちが現場に駆けつけた時には姿を消していて、その後の消息は知れていない)が、ドアと一緒に引き出されて吹っ飛ばされちゃいやがったんで、びっくりした俺は、思わず勢いでバットで殴りつけたんだ。そしたら、次の瞬間には、もう廊下まで吹っ飛ばされちまってるんだよぅ、あっという間にだぜ]
「殴りつけたとき、どんな感じがしたの?そう、手の感触、というか…」とL.C.
[それが、よくわからないんだよ。確かに肩んとこに当ったんだが、手応え、っつぅの、それが無くって…でも空振りじゃなかった、確かに当ったんだ]
(その後、スーパーマンの見た目の特徴や、事務所の中で起きたことなど質問したが、大した証言は得られなかった)

次に、同じ警察病院の別室に収容されているE田という男に会った。E田は、30才前の組ランク4番手ということだが、左肩をやられた上に、吹き飛ばされた先にあったガラスの応接テーブルで、尻の辺りを大きく損傷していて、ケンコーに比べれば重症で、ぽつりぽつりではあったが、行方をくらましているナンバー2のT野とスーパーマンのやりとりを、かなり鮮明に喋ってくれた

[兄貴は最初、P連合の鉄砲玉か?と訊ねたんだ。そしたらそいつは、自分のことをグリーンマンとか言ってたと思う。俺は肩と応接テーブルにはまっちまった尻が痛くて、聞いてるどころじゃなかったんだが、それでも兄貴が度胸決めて話してるんで、そこに感心してやりとりを聞いてたんだ。
そいつは、Aって奴に手を出すな、みたいなことを言ったが、そのときS原が日本刀で切りつけやがったんだが、あいつのマントが動いて刀が取られたかと思ったら、俺と一緒で吹っ飛ばされて休憩室のドアにめり込んじまった。
その後、T野の兄貴とあいつがなにか話していたんだが、俺は肩の痛さで気が遠くなりやがって、兄貴がチャカ(拳銃のこと)をぶっ放した音は聞いた気がするが、もうその先は覚えてないんだ]
以上がE田の供述だ

さらに続けて、休憩室のドアに突っ込んだというS原という男が収容されている部屋にも行ってみたが、この男はドアに突っ込んだときに気を失っていて、ただ一言だけのコメントが取れただけだ
[Aに害を及ぼす者は許さない、って言ってました]
また、Aという人物の名が出て来た。
注目すべきは、YAKUZA連中がそれぞれ武器を持って、グリーンマンというスーパーマンを殺傷する気で襲ったにも拘らず、いずれも吹き飛ばされて戦線を離脱させられている、ということ
さらに、Aという人物こそが、グリーンマンなる者を差し向けた者に間違いない、ということだろう
posted by ミスターK at 15:49| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説