2019年06月09日

熟年超人の日 stage4 11

大声でその場をけん制しておいて、影スーツの自分と背丈の変わらない支部長(K松)の背後に回り込み、肩越しに左腕を巻き付け、顎の先を持って、ぐいっと軽く捻ってみる
「痛っ、いた、た、たーっ。やめろ、やめるんだー」強がって言ってる積りでも、周りにはそうは聞こえていないのが私にもわかる。心配そうな表情は、やっと起き上がった日本人らしいボディガードだけで、東南アジア系の連中とC国人らしい連中は、ボスが苦痛にもがいているのを見ても、少しも意に介ず殺気を放っている

日本語と英語で威嚇しても、そもそもこの連中に通じているかどうか分からないが、とりあえず警告はしたということで、次の行動に移った
つまり、人質として大して役に立ちそうもないこの男は放り出して、残りの連中を全員のしてから、改めてパスワードを訊くことに決めたのだ(こういう連中なら、骨折くらいさせられても文句は言ってこないだろう)
方針が決まったので、押さえていた首根っこを掴むようにして、さっきは顎にヒットさせたのに、気絶しなかった大男(一番強そうな)に直接ぶつけるという乱暴にでる。で、間を置かずに、跳ね飛ばしたナイフの代わりに腰ベルトから拳銃を引き抜きかかっている男の鳩尾に、右ストレートを叩き込んだ

ううっ、と息を吐き出してかがみこんでしまった男はそのままに、その後ろで拳銃を両手で構えようとしている男の足元に滑り込んで、腿の付け根辺りに手をかけて、思いっ切り上に跳ね上げる
天井にぶつかった男が、その衝撃で銃を暴発させたが、天井の蛍光灯が爆発したくらいで、人には当たらなかったようだ(銃は男の手から吹っ飛んでしまい、男は床に激突して動かなくなる)
このあたりまでは、私も慣れないアクションの連続で、かなり大慌て状態だったが、受話器を持ったまま硬直している男の間抜け面を見て、一気に緊張がほぐれる
そうだ、ほぼ100%の力で動いてしまったので、多少訓練しているとは言え、常人である連中には、とてもこのスピードには付いていけないのは当然なのだ

とりあえず、全員のしてしまう、という方針に立ち返って、受話器を持って放心状態に陥っているメガネの男の顎先を、素早く擦り打って失神させる
と、その束の間の動きの停滞を見てとったか、大男が再度大型ナイフで私の脇腹目がけて、鋭い突きを繰り出して来た
影スーツの様々な機能を把握し切れていなかった私だが、このナイフ攻撃の直前にハッと感じるものがあった
恐らく攻撃される予感のようなものだろが、私自身が反応するより早く、スーツが反応してくれて、大男の必殺の刺突は、虚しく流れ、私の目の前でほんの一瞬静止する

今度こそ遠慮なく、その手首に手刀をお見舞いすると、ビシッという感じでナイフを持った手首が、千切れかけてぶらんとぶら下がった(その画にびっくり!)
大男は茫然として、その手首を見ていたが(時間にして1秒くらいの間か)、うわぉー!と吠えると、残った左手で左腰のホルスターに収まっている大型拳銃を、取り出そうとする
その敢闘精神には驚いたが、わざわざ相手に銃を抜かせる危険を冒す訳にはいかない私は、素早くその手を押さえて、そこを支点に自身の体をぐるりと回転させるようにして、相手を投げ飛ばした(教則本で知った合気道の技のバリエーションだ)

大男が会議テーブルに激突して、天板にぶち当って跳ね返り、失神しているメガネ男の上に落ちる
そういったひとつひとつの事象を認識しながら、私は流れるように行動し、最初に失神してやっと起き上がり、まだふらついている脚で、懸命に態勢を立て直そうとしている、比較的若く見えるボディガードらしき黒服の男の胸もとを掌底で強く突く
これも力の加減をしなかったので、黒服は大きく吹っ飛んで、さっきぶっ飛ばした支部長のデスクにぶつかって、そのまま動きを止めてしまう
これで一通り片付いたか、と一瞬動きを止めたとき、ナイフを跳ね飛ばした際、手首を骨折したらしく戦闘から身を引いていたダガーナイフの男が、背後から私に抱きついてなにやら外国語で喚き始めた

多分「掴まえたぞー!」みたいなことを叫んでいるんだろうが、そんなのに付き合ってはいられない。肩をすぼめるようにしてすっと体を下に滑らせると、簡単に身は自由になる
しゃがみこんだ態勢から、素早く立ち上がりながら相手の顎に頭突きをくらわせる。ゲフッとうめき声を発して、20pくらい跳ね上がって、床に落ちて、私を見上げる凶暴な表情が、みるみる恐怖に変わった
今度は緊張を解かずに、再び室内を見渡すと、外階段から一人、横の部屋から何人かこの部屋に駆け付けて来るのが透けて見える(やれやれ…)
posted by ミスターK at 14:43| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説