2018年12月16日

熟年超人の日 stage3 63

明らかに私が警戒心を顕わにしたのを見て、男(I倉)は屈託のない笑顔でさらに話しかけてきた
『私はK市で起きたある事件を追っています。そこで起きたことに関わる人物が、もしかするとこの辺りで起きた事件にも関わっているのではないかと、そんな予感に従ってこの辺りを調べているのです。あなたの雑誌社は、なにかオカルト的な事象を扱われているのですか?』なるほど、関わりがありそうな人物が向こうからやって来た訳か
『私がここの警察から聴き込んだ話では、ある人物が宇宙人のYAKUZA事務所襲撃に関わっているとか』まずは、魚が隠れていそうな辺りにルアーを放り込んでみた

『そうですか。実は私は、あのスーパーマンが県警本部にS会の金庫とデスクを運び込んだ時、あの現場に居合わせたのです。しかし残念ながら、スーパーマンが飛び去るところで、カメラを使う間もなかったのですが、何人かの目撃者から取材することはできました。ただ、KOANだと名乗る人物に口止めされたので、社にも報告できてない状態です』KOANがなんなのか、そのときは分からなかったが、後で調べると、日本のFBIのような性格を持った警察組織のようであった
『そのような重要なことを、なぜ私に伝えようとしているのですか』なにかのトラップだといけないので、自制して話しかけた

『そうですねぇ、なんで外国人の貴方に話したのかなぁ。王様の耳はロバの耳ってやつですかね』童話を引用して話すローカルペーパーの日本人記者とは!そこで、こちらから誘いをかけてみた
『英語がお上手なんですね。どちらで学ばれたのですか』
『若い時、A国に留学したことがあるんですよ。V州です』
『V、V州のどこの学校?僕もV州に住んでるんで。どこの大学?』
『ティームズ・マディソン大学、アリソンバーグの』思わずひゅ〜っと口笛が出てしまった。こんな異郷の地で近くの大学で学んだ人物に出会うなんて!
身長は6フィートに足らないが、体重は恐らく187、8ポンドくらいのその男が、急に好人物に見えて来た

『そうか、あそこはなかなかレベルが高いんだろう。なにを学んだんだい』親しみを込めて、そう尋ねた
『主に政治とマスコミの関係性ですが、こちらに帰って来てから、大手の新聞社やテレビ局を訪ねて就職を頼んだんだけど、結果は今の地方新聞社ですよ。でも、今回の事件に公安がからんだということで、僕は逆にファイトが湧いたんです』なかなか熱い男のようだ
『ということは、例のスーパーマンについて、日本政府は国民に隠しておくべきと判断したと思ったんだね』いいぞ、こんな男と出逢えるなんて、俺はついてる、と思った
『そこに、貴方も言っていた男が、スーパーマンと懇意らしいという話を4課の係長から聞いて、その上、以前この辺りであった、暴力バーで起きた事件とも関わっていそうだという話も匂わせていたんですよ』
ビンゴ!だっ。この記者からもっと大事な話が聴けそうだ

当然、このI倉と名乗った男もジャーナリストだから、ただでそんな情報を外国人の私に漏らす訳はないだろう。その隠された意図を探るべく、私は店主が持って来たスナックを食べ、もっとなにか料理を出してくれとオーダーし、ビールをI倉のグラスに注ぎ、続いてチューハイという酒を店主にオーダーした
『その男がからんだ事件、というのはYOTSUYUという店で暴れた話しかい。なんでも店をぶち壊して、その後応援に来たYAKUZAを、忍者みたいな男と一緒に撃退したとか聴いているが』ルアーを投げる
『そうらしいんだけど、忍者みたいな奴が現れたときには、その男は姿をくらませていたらしいんですよ』チューハイのジョッキを見つめながら、I倉が声を低めてそう言った
「俺も見てたけど、すごい奴でしたよ。黒装束で、ホント、ディスイズニンジャって感じで、S会の連中を、ぽんぽん放り投げたり、すっ飛ばしてね」店主が興奮した口調で、話に割って入って来た(もちろん、その時は話の内容はわからなかったが、I倉さんが後で教えてくれたのだ)
posted by ミスターK at 11:47| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説
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