2019年03月06日

熟年超人の日 stage4 05

キックボクシングジムを訪ねてから1週間ほど、ブックオブで購入した格闘技関連本(ボクシング、空手、ジークンドー、合気道等)を読破して、街の腕力自慢たちと同レベルくらいには格闘技を理解できた(ジムでの実戦が大いに役立った)
これで、格闘技を多少齧っていそうな連中を、できるだけ安全に倒すことができそうだと確信できたので、いよいよK刑事が教えてくれた、N市中区のP連合の隠れ事務所訪問(襲撃かな)の決行日と、影スーツ着用を決めた

このところずっとアパート近辺は平穏至極と認識していたが、念のための周囲偵察で、張込みらしき反応が皆無なことを確認した上での作戦開始であった

最近は影スーツの着用にも慣れてきて、二、三新しい機能も見つけていたのも、決行決定の一因だった
まず、ムササビのような滑空グライダー機能がスーツにあったこと(Gスーツに比べると飛行能力は劣るが、隠密性に優れている)と、着用時に体が触れている物体の表面と、視覚的に一体化(材質感もあるカメレオン的な能力)できること、もうひとつは腹話術のように、手近な場所から声を出すことが出来ることだ
どうやら私がスーツを使いこなせるレベルになったからなのか、明らかにGスーツに比べると、一般社会での汎用性が高い

今回は、車を移動手段とはせず(そもそも移動速度が遅すぎる)、在室のカモフラージュも兼ねて駐車場にそのまま置いておくことにした
電車での移動も有り得ないので、影スーツで地上を走るのかと思ったが、どこで誰に見られるか(走行中は、ぼやっとした影のように見えると思うが、路上の監視カメラを精査されれば、発見されるリスクがある)、分からないので、100mほどの高さにジャンプするか、高層ビルを利用して、その高さから滑空を繰り返しながらN市に向かうことにした

そのうち、夜も9時を過ぎたので、さあ出かけよう、とダイニングの椅子から腰を浮かせたとたん、携帯が鳴った。電話は妻からだった
「パパ、家に居るの?明日か明後日、パパの都合が良かったら一緒に“山の別荘”見に行こうかと思うんだけど」声の調子からは、機嫌が良くてかけて来たのか、意に染まなくて電話をくれたのか、どうも分からない
「あ…、うん、明日は用事が入るかも。だから、明後日がいいかな…」
「明後日は、お天気悪くなるって天気予報、出てたわよ」例によって、結論は出ているのだ
「そうか、それなら明日行けるように、調整してみるよ」…調整はP連合次第なんだが

妻にはほとんど相談せず、購入を決めてしまい、さらに非常時(どんな時に必要になるのか分からないが、富士の老人は熱心に勧めてくれた)の退避シェルター工事に取り掛かろうとしている今ではあったが、やはり妻には見せておかないと思っていたところでもあった
電話が切れた後、ちょっと出鼻をくじかれてしまったので、ついでに今夜のP連合襲撃の手筈をもう一度検証してみることにした(どうも最近、深く考えもせず行動してしまう…若返っているからか)

今回の動機は、やはり超人活動が思うに任せていないので、そろそろ成果を出したいというのが第一。そして、外国人の犯罪組織なら、手荒にぶっつぶしても、そんなに物議を醸さないだろうというのが二点目
もうひとつ引っかかっているのが、P連合が私を探している、というK刑事の話で、もしかするとこれは彼の作り話で、私経由でグリーンマンを動かして、P連合を潰してしまいたいから、なのではという疑念がある

そうなると、影スーツで動くのはどんなものか。どっちみち誰も死なせないようにやるからには、影が対戦している目撃情報が警察に伝わるだろう。すると、私とGマンと影という関係が明らかになってしまう。
それでは、今後の超人活動に差し障りはないか?いやいや、それよりむしろ一般人Aとその家族の社会生活になんらかの支障が生じるのではないか
と、考えると、今回の影は、あくまで影のごとき存在でなければならない。そこに注意して行動しよう、要は目撃情報を残さなければ良いのだから

襲撃相手の方は、超人力全開で素早くやれば、分からないうちに片付けることは可能だろう。そうなると後は、各所に設置されているであろう様々な監視カメラだ。それを無力化する方法がないか、私は改めてこの問題に、真剣に取り組むことにした

いずれにせよ、電気で動かしている監視(防犯)カメラは、どのようなタイプでも私の周囲偵察で感知できるから、位置の特定は簡単だ。問題は、P連合が設置している監視カメラのほかにも、市内の至る処にある防犯カメラと、最近多くなった車載カメラに映ってしまう可能性があることだ

そう言えば、なにかの本で読んだが、高高度で核爆発があるとかなりな範囲の通信・情報機器が機能停止するらしい。また、GPSの位置測定の誤作動の一因に、重力波の異常で起きたプラズマバブルが影響しているという記事も読んだ覚えがある
私の超人力には、重力のコントロール力が関わっているようだから、その力を応用して、監視カメラの無力化ができないものだろうか

これまでの超人力を発揮できた場面を顧みると、鉄属製品には大小問わず、力が発揮できていた。逆に、海の中や、地面に直接埋め込まれている物体や、木製のデスクなどを持ち上げたりする場合は、腕力勝負で切り抜けざるを得なかったことが、印象に残っている
エフワンの原子炉にもぐり込んだときには、ジュブブの助けもあって指先を高温にしたり、重力波を振動させて破損した扉を開けることが出来たが、あれはGスーツだけの特性だったのか、検証してみようと思いついた
と言って、この安普請のアパートで試してみる訳にもいかないだろう。N市に向かう途中にある、川べりでやってみることにした

夜のA川には、堤防道路を走る車が数台いるだけで、当然人影は無かったが、ムササビ滑空をしながらの周囲偵察と、超人眼に、カップルらしき人影が見える車が2台、河川敷に停まっているのが視える
それを避けて、少し下流に向かうと今度は完全に人けが無い場所があった
いっそ、と思ってさらに河口ちかくまで行くと、波消しのテトラポッドがあるので、これでなにか試してみるか、という気になった
まずは、指先に気を込めて、発熱を試みたがこれは変化なし。続いてテトラポッドを振動させてみたら、ピシッと深い亀裂が入った

超人眼で透視してみると、鉄製の型枠が入っているようで、コンクリートはその型枠からはがれるように、崩れ落ちている
コンクリート製の建物や、塀を破壊するのには役立ちそうだが、監視カメラの機能排除には結び付きそうもない
続いて、想像力を逞しくして、掌に重力波を集めるイメージをして、その両掌を激しく打ち合わせてみた。パーンという強い音が川面に響き渡り、川に架かっている橋の水銀灯が、ポンと破裂した
posted by ミスターK at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | SF小説
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