2021年09月26日

熟年超人の日 stage5 16

早くから、超人グリーンマンの存在を注視していたA国と、F原発廃炉処理現場に突然出現した、空を飛ぶ超人に遭遇した現地諜報員の報告書に、最近になって注目するようになっていたC国では、その関心度が違っていたのだが、両国ともスパイ衛星で情報収集を開始したのには理由があった

国民感情として、スー○ーマンはA国にこそ存在すべきとの、確信を抱く新大統領の意思の下、国家的追求が各人の関心の強弱こそあれ、グリーンマンの挙動の細部まで見洩らさない原動力になっていた

一方、日本の隣国として、F原発事故の推移を見守っていたC国指導部は、当初重要視していなかった一個人的存在のグリーンマンの、潜在能力の底が全く見えないことに加えて、親日本の傾向が徐々に明らかになるにつれ、将来的な脅威として認識するに至っていた
そのため、決して多くない偵察衛星の軌道変更をあえてして、日本上空に来ていた
A国に比べ、やや劣る解像度ながら、A国衛星より上に位置していたため、グリーンマンを監視するA国衛星の姿まで、カメラが捉えていたとは僥倖であった

A国が、偵察衛星で監視している対象を見つけ、C国国家安全部の熱意が一気に高まり、日本人と姿形がよく似ている利を活かして、大量に送り込んでいる工作員に、グリーンマンに関するあらゆる情報を集めるよう、一斉指令を発するこちになった
私と言えば、開栄丸の船尾を上から掴んでいたおかげで、船尾楼と煙突に視界を妨げられ、こんなことなら船底側から支えていれば、よかったのにと悔やみながら、周囲偵察能力だけで、先行する自衛隊機を追っていた

飛行に関わりがある風向きは、東北の太平洋側に続くリアス式海岸沖から向かい風に変わっていた
それは、特に問題ではなかったのだが、風の影響のない高高度域を封じられている自衛隊機のパイロットは、風圧を受け易そうな運搬物を運んでいる、私の心配をしているようで(無線で話せないからなぁ…)、一機が私の近くにやってきて、様子を見に来るのが却って気になっている

それでも比較的順調に房総半島を過ぎ、伊豆大島も遠目に見て遠州灘を進めば、後は紀伊半島沖を迂回して、いよいよ船舶の往来が激しい紀伊水道から瀬戸内海に至る旅
そして、人目に付くという意味では最難関の淡路島(陸地は避けるので鳴門大橋上空コース)も無事通過(と言っても随分スマホ画像がネットに上がったとか)
自衛隊機はここでお別れ。翼を二度ほど左右に振ってから、北に向かって飛び去って行った

瀬戸内海に入ると、大小の船舶の往来がぐっと増えてきて、もう人の目など気にはしていられない
それに、長さ100m幅16.5mの船体を、無事に瀬戸内海の混雑している海に着水させなければならないのだ
私は、飛行速度を落としながら高度を下げ、船を浮かべたときに大波を起こさないよう、そっと降ろさないといけないのだ(内浦湾で船を着水させる練習をしておくべきだった!)

自衛隊の飛行艇が着水する動画を見たことがあるが、大分、波しぶきが上がっていた
しかし、こちらは揚力を得るために一定以上の速度が必要な飛行艇とは違い、重力コントロールで飛んでいるのだから、静止してから海面に降ろすことができるのだから、そう心配はしていなかった
高度を100mくらいにまで下げると、小さな釣り船まで見える
そこに、遠州灘あたりでF-16が連絡していたのだろう、呉の海上自衛隊基地から来たらしいヘリが、民間船舶にスピーカーでこの海域からの退去を呼びかけ始めた

海面も空いたところで、目の前に小豆島が見える辺りで、できるだけそーっと船体を海面に降ろした
それでも、急に重力の影響を受けた船体は、総トン数4900t超の排水量分の海水を押しのけて、静かに海面に浮かんだ
私も手が自由になったので、改めて甲板室の船長たちの見える位置まで降下して、別れの合図をしてその場を去った(後日、公安のD田氏からその後の次第を聞いたが、船は順調に玉野ドックに入れたらしい)
posted by 熟超K at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 近過去SF小説
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