2018年12月16日

熟年超人の日 stage3 63

明らかに私が警戒心を顕わにしたのを見て、男(I倉)は屈託のない笑顔でさらに話しかけてきた
『私はK市で起きたある事件を追っています。そこで起きたことに関わる人物が、もしかするとこの辺りで起きた事件にも関わっているのではないかと、そんな予感に従ってこの辺りを調べているのです。あなたの雑誌社は、なにかオカルト的な事象を扱われているのですか?』なるほど、関わりがありそうな人物が向こうからやって来た訳か
『私がここの警察から聴き込んだ話では、ある人物が宇宙人のYAKUZA事務所襲撃に関わっているとか』まずは、魚が隠れていそうな辺りにルアーを放り込んでみた

『そうですか。実は私は、あのスーパーマンが県警本部にS会の金庫とデスクを運び込んだ時、あの現場に居合わせたのです。しかし残念ながら、スーパーマンが飛び去るところで、カメラを使う間もなかったのですが、何人かの目撃者から取材することはできました。ただ、KOANだと名乗る人物に口止めされたので、社にも報告できてない状態です』KOANがなんなのか、そのときは分からなかったが、後で調べると、日本のFBIのような性格を持った警察組織のようであった
『そのような重要なことを、なぜ私に伝えようとしているのですか』なにかのトラップだといけないので、自制して話しかけた

『そうですねぇ、なんで外国人の貴方に話したのかなぁ。王様の耳はロバの耳ってやつですかね』童話を引用して話すローカルペーパーの日本人記者とは!そこで、こちらから誘いをかけてみた
『英語がお上手なんですね。どちらで学ばれたのですか』
『若い時、A国に留学したことがあるんですよ。V州です』
『V、V州のどこの学校?僕もV州に住んでるんで。どこの大学?』
『ティームズ・マディソン大学、アリソンバーグの』思わずひゅ〜っと口笛が出てしまった。こんな異郷の地で近くの大学で学んだ人物に出会うなんて!
身長は6フィートに足らないが、体重は恐らく187、8ポンドくらいのその男が、急に好人物に見えて来た

『そうか、あそこはなかなかレベルが高いんだろう。なにを学んだんだい』親しみを込めて、そう尋ねた
『主に政治とマスコミの関係性ですが、こちらに帰って来てから、大手の新聞社やテレビ局を訪ねて就職を頼んだんだけど、結果は今の地方新聞社ですよ。でも、今回の事件に公安がからんだということで、僕は逆にファイトが湧いたんです』なかなか熱い男のようだ
『ということは、例のスーパーマンについて、日本政府は国民に隠しておくべきと判断したと思ったんだね』いいぞ、こんな男と出逢えるなんて、俺はついてる、と思った
『そこに、貴方も言っていた男が、スーパーマンと懇意らしいという話を4課の係長から聞いて、その上、以前この辺りであった、暴力バーで起きた事件とも関わっていそうだという話も匂わせていたんですよ』
ビンゴ!だっ。この記者からもっと大事な話が聴けそうだ

当然、このI倉と名乗った男もジャーナリストだから、ただでそんな情報を外国人の私に漏らす訳はないだろう。その隠された意図を探るべく、私は店主が持って来たスナックを食べ、もっとなにか料理を出してくれとオーダーし、ビールをI倉のグラスに注ぎ、続いてチューハイという酒を店主にオーダーした
『その男がからんだ事件、というのはYOTSUYUという店で暴れた話しかい。なんでも店をぶち壊して、その後応援に来たYAKUZAを、忍者みたいな男と一緒に撃退したとか聴いているが』ルアーを投げる
『そうらしいんだけど、忍者みたいな奴が現れたときには、その男は姿をくらませていたらしいんですよ』チューハイのジョッキを見つめながら、I倉が声を低めてそう言った
「俺も見てたけど、すごい奴でしたよ。黒装束で、ホント、ディスイズニンジャって感じで、S会の連中を、ぽんぽん放り投げたり、すっ飛ばしてね」店主が興奮した口調で、話に割って入って来た(もちろん、その時は話の内容はわからなかったが、I倉さんが後で教えてくれたのだ)
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2018年12月12日

熟年超人の日 stage3 62

L.C.から教えてもらっていた日本語は「YOTSUYUというバーを知っていますか?私はA国の科学誌の記者です。英語を話せますか?」の3つと、「スミマセン」「ドウモ」という言葉だけだった
随分心許ない話だが、その日私が探索する地区は、治安の良いこの国でも、相当YABAI(この日本語は応用性が高いということで、私のお気に入りだ)目に遭いそうな場所だと、L.C.が言っていたから、反って私の本来のやり方で情報を得られるだろうと、判断しての行動だった
もし重要な人物を見つけたら、L.C.に連絡して至急合流してもらい、件の人物からAという男の情報を入手するという、どう考えても乱暴なやり方だが、離日期限が間近に迫る中では、これしか打つ手が無かったのだ

酒を飲む人間でなければ酒を飲む場所を知らないのは、A国でも日本でも一緒だろう。まして、怪しげなバーで起きた喧嘩沙汰なら、この辺りで飲み屋を経営している者なら見てもいるだろうと、そう踏んでまだ薄明るいこの時刻に開けている店に飛び込んだ
「スミマセン、YOTSUYUというバーを知っていますか?」早速習った日本語を使ってみた
「よつゆ?知らんなぁ」カウンターの奥で、なにやら店を開ける準備をしていた男がぶっきらぼうに答えた
「英語を話せますか?」と訊ねてみると、首を横に振った後、ビール瓶を手に持って「飲む?」のジェスチャーをしてきた(ある程度英語は聞き取れているらしい)ので、うなづいてみせた

「YOTUYU知ってますか?」カウンター席に腰を掛けて、運ばれてきたビールをぐっと飲み干してから、もう一度訊いてみた
すると、なんだか分からない日本語で答えたが、こちらが分からないと両手を広げてジェスチャーすると、今度はものすごく聞き取りにくい英語が返ってきた
『知らない。そのバーこわれた。わたし、知らない』こんな感じだ
『こわれた、って破壊されたのか、それともつぶれた、と言っているのか』と英語で訊ねると、男(恐らく店のマスターだ)は『私、分からない』と英語で返事をした
そして、逆に『あんた、どこから来た。あんた誰?』と、たどたどしく質問を返して来た。これは分ったので
「私はA国の科学誌の記者です」と日本語で答える(これで覚えている日本語は出し尽くしてしまった)

「記者さん?ほんと記者さん。A国のマスコミの人?」これは、なんとか理解できたので、うなづいて「イエス」とやったら、それで勢いのついたマスターが喋り始めたので、話の内容は全く分からなくなった
困っていると、新たな来客があった
店のマスターが、その客(顔見知りのようだ)に、なにか話しかけてから、カウンター内の小さなキッチンで(恐らく)スナックを作りにかかった
『A国の雑誌社の方ですか』かなり聞き取り易い英語で、新参の客が私に声をかけてきた
『はい、そうです。私はパラノーマル・ライジング誌のレグマンをやっています』少しほっとして、思わず警戒心を解いてその客に返答をしてしまった
『そうですか、私はローカルペーパー西三新聞の、I倉と言います』よりによって、新聞社の者だと、その男は名乗ったのだ
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2018年11月18日

熟年超人の日 stage3 61

日本では、いろいろあったな、と飲みかけのマグカップをぼんやり眺めながらマシューは、あえて報告書に記載しなかった出来事の回想に浸っていた

あのビルの管理人に会った翌日、キーマンのAを探すため、L.C.は彼が住んでいた(いる?)というK市に向かい、私は、昨日警察本部の廊下ですれ違った二人の刑事が交わしていた会話(むろん日本語の)からL.C.が聞き取ったAについての不確かな情報を検証すべく、N市の歓楽街の調査に向かった
二手に分かれたのは、我々の調査日程が本局の都合で短縮されたことにあった。本国では、いよいよ大統領選もたけなわになってきていて、人手が足りないというのがその理由だった

キャッスルという名のホテルは、その名の通り日本的な大きな城(しかしコンクリート製だ)の近くにある。朝食を済ませた我々(どちらも自制していて、相変わらず別室だった)が、今日の調査の段取りを確認していたところに、大使館のジョナサンから連絡が入った
『こちらで入手した情報によると、Aという男はあの事件の前に、N市のYOTSUYUという暴力バーで騒ぎを起こしていたそうだ。そのバーの経営には、例のS会が関わっていたそうだ。重要なのはこの後だ。その騒動の途中から、忍者が現れてS会の増援部隊を蹴散らかしたそうだ。ネットに上がっていた動画があったんで、君のスマートフォンに送っておくから見てくれ』
そして、我々はAを救うために(そうとしか思えなかった)、忍者が現れたことを知った

Aという男(ジョナサンの報告では60才を過ぎた5フィート半くらいの小男らしい)が、キーマンなのは確かになったが、日本のマフィア・YAKUZA連中とことを構えているとなると、その調査をする我々にもなんらかのトラブルが生じることは避けられそうもない
L.C.は、わたしも結構強いのよ、と言っていたが、やはり彼女には昼間K市に行ってもらい、私もできるだけ日中にN市のYOTSUYUという店と、その周辺を探索することに決めた
その後、各々の部屋で報告書を作成して時間をつぶし、ホテルのレストランで早目の昼食を摂ってから、それぞれの目的地に向かった

L.C.が地下鉄JRを乗り継ぎ、K駅からタクシーでAの住むアパートメントに着いたのは、14時過ぎだったという。Aが昔A国で女性と付き合ったことがあって、その時出来た子が、はるばる父を訪ねて来たというストーリーで、まずアパートの周辺から聴き込み、少したどたどしい日本語を話す彼女は、親切心と好奇心がミックスしている地方都市の住民に大いにアピールしたのだが、肝心の詳細な情報はなかなか得られなかった
それでも、Aがよく近くのMANGAカフェ「It's-ZUKE」に行くという聴き込みを得て、訪ねたその店のスタッフからAと警察の人間がときどき会っていたという重要な情報を得た
その店を出たL.C.は、もう一度アパートメントに向かったところ、途中で二人の男に尾行されていることに気付く。歩調を変えた途端、もう一人別の男が前方を塞いだ

「ちょっとお待ちを、外人のお嬢さん」前方の男の、日本語の問いかけを無視してすり抜けようとすると
『待ってくれと、言ってるんだ』今度は流ちょうなA国語が後ろの人物から発せられた
『わたしには、あなた達に用は無いわ』と言っておきながら、バッグの中のベレッタを指先に感じたとき、別の一人が仲間をたしなめた
「おいおい、お前たちが物騒なムードを出すから、お嬢さんがテンパってるじゃないか」…『すみません、貴方がどなたかなんて気にしてはいないのです、我々は。恐らくA国の情報局の方なんでしょうが、あの人はここに居ませんよ。我々は命を受け、あの人を陰ながらお守りしている者で、まだ外国の方との接触は避けるように命じられておりますので、どうか、お引き取り下さい』丁寧ではあるが、有無を言わせない口振りは、決してYAKUZAなどではなく、ちゃんとした組織の一員であることが明白だった

『そうなの、あなた達は日本の公安の人たちね。なにを言っているのか分からないけど、わたしはA国の科学情報誌の記者なの、わたしはただ信じられないものを見たという人から、話を聞きたいだけなのよ』
『そういうことならそれで結構ですから、とにかくお引き取りを』その迫力に押され、L.C.はその場を離れた
友好国の官憲とはトラブルを起こさないのが鉄則だから(この時は日本の警察の人間だと思い込んでいた)

一方、私の方と言えば、夕暮れを待ってそれまで時間をつぶしていたデパートメントを出て、N駅の西側に散在する酒場の中から問題のバーを探し始めていた
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2018年11月04日

熟年超人の日 stage3 60

「お宅ら、本当にA国の雑誌の記者さん?名刺かなんか持って無いの?」背が低いので下から上目づかいに見上げる目は、臆病そうではあるが油断のならないイタチの目だ
「そうです。わたしは、A国の科学情報誌パラノーマル・ライジングの通訳助手のアリス・デイヴィスと言います。彼は、取材記者のロジャーで、日本語が話せないので、わたしが代わりに質問したり、答えたりしてます。そして今日は、少し前にこのビルであった事件のことを調べに来ています」

そこまで聞くと、管理人の男は「はぁーん、こないだの事件って、上の階の?」と言うと、「お宅ら、ホントP連合から来た人じゃないだよね」と言って「ここじゃなんだで、まぁ中に入ってちょ」と手招きして、室内に招き入れてくれた(一部L.C.も分からない言葉だったが、録音音声に忠実に再現します)
部屋に入ると、ダイニングテーブルの椅子を我々に勧め、管理人自らヤカンに湯を沸かし、日本の茶を淹れてくれた。案外、好い人物のように思えてきた
「で、お宅らはA国のマスコミの人?」マ、ス、コ、ミ…ってなんのことだ
「そうね、マガジンリポーターは、マスメディアの一員ですね。わたしたちは、あの夜になにが起きたのかを調べています。貴方は、あの夜、その事件を目撃されましたか?」

「この取材は、謝礼があるのかね。なにも無いんじゃあ、話すことも出てこないんだなぁ」お茶を入れた持ち手のないカップを我々二人の前に置きながら、にまっと笑ってL.C.の顔を見る。私の方には視線が来ない
『この男は、金をくれと言っているのか』思わずL.C.に訊いてしまった
「イエス、わかってるわ、取材費の中に謝礼金も含まれているから。貴方のお望み通り、とはいかないかも知れないけど、話の内容によっては充分お支払する積りよ」L.C.が答えた
「あの晩、俺はこの部屋でビールを飲みながらテレビのくだらない番組を観てたんだ。そのうち、揺れを感じたんで地震だ、って思って廊下から外に逃げたんだ」

「外に出たのね」それじゃあ部屋で起きたことは見ていないんだ。当然、中の奴らとGの話も聞けてない訳だ
「それで、外に出て周りを見ても地震があったように見えなかったんで、部屋に戻ろうとしたら、3階辺りで大きな音がしたんだ。俺はてっきりP連合のカチコミだと思って、警察に電話しようと思ったんだが、ケータイを置いて来ちまってた。仕方ないんで、部屋に戻ろうとしたら階段の方から、なんだとー!なんだぁ!ってどなる声が聞こえてきたんだ。耳を澄ますと、あのおっさん知ってるのか、とか聴こえて、それからまた物がぶち壊されたようなどえらい音が響いて、なんかぼそぼそ喋る声がして、それからハジキ(拳銃)の音がして、ちょっとしてまたどえらく物がぶっ壊される音がしたんだ」
「それで、貴方は部屋に戻って警察に電話したのね」
「いんや違う、俺は少しだけ聞こえてくる話し声が気になったんで、こわごわ階段を上ったんだ」

「3階に着いたところで、通路廊下に顔だけ出して、耳を澄ましたらS会の兄貴分の奴の声と、もう一人声のいい奴の話し声が聴こえてきた。びびってたんだが、それでも気になってしょうがなかったんで、廊下通路に出ると、S会の若い衆が二人、部屋の方を見てるのが見えた。俺はあいつらに気付かれたくなかったんで、慌てて階段の方に戻ったら、ふっ飛ばされるみたいな音がして、それからメキメキっと物を壊す音が聴こえて来たんで、もう一度廊下通路を覗いたら、若い衆が二人でよろよろ逃げてくとこだった。部屋の中からは、音は聞こえてなくなったんで、恐る恐る部屋の方に歩いて行ったんだけど、部屋の中はぐっしゃぐしゃで、窓の所がぽかっと空いていて、S会の兄貴分のTとかいう奴が日本刀持って、ぼやっと立って窓の抜けたとこを眺めてやがった。あいつに見つかるとおっかないんで、俺は慌てて階段に戻ると、パトカーのサイレンが聴こえてきた、っというのが俺の体験談だ」

「ありがとう、じゃこれ謝礼ね」L.C.がバッグから封筒を出して管理人に渡すと「おっありがと。なんだ、これだけか、まあいいや」という声が聞こえた
「じゃ、部屋の方を見せてもらいたんだけど」とL.C.が言うと、「ああいいよ」と管理人は我々をエレベーターに案内して、3階に移動した
「あの部屋も随分ぶっ壊れちまって、S会の組本部も知らん顔かと思っていたら、どうやらオーナーんとこにその上の超大物から連絡があったそうで、近々修理が入るらしいんだが、今はご覧の通りだよ」
鉄製のドアは蝶番の部分で引きちぎられていて、ドア枠に立てかけられていて、我々はその隙間を通り抜けて室内に入った

室内は、3日前の夜に壊された状態のままで(警察からできるだけそのままに、と言われているそうだ)、ガラスの破片やきゃしゃな応接机が転がったままになっていて、日本刀や拳銃が落ちていたところには、テープで印が付けられていた
『こいつはすごいな』
『相当な力持ちみたいね』二人がA国語で喋っていると、管理人が気を揉んで話に加わって来た
「ひどいことになってるけど、結構丁寧に壊してるんだ」
「ていねい…、ああポライトリィね、ブロークンポライトリィと言ってるのね」この男にはそう見えるのか、と私は改めて破壊された室内を見廻した

引きちぎられかかっている鉄扉、そして室内を間仕切っている薄い壁に付いている、きゃしゃなガラス扉、その先にある安物の応接セット、までが一直線に破壊されている
応接セットのある方の部屋の壁は、他の部屋とは段違いに頑丈そうな造りになっているのだが、それにぽっかり四角な穴が残っている状態だ
警察本部にスーパーマンそっくりに、この部屋にあった大型金庫と執務デスクを運んだそうだが、その跡なのだろう。デスクの方は当然無くなっていて、その後ろの窓ガラスが枠ごと外されて、部屋の中に置かれている。そう、丁寧に、だ

ここまでのGについての調査を、以下にまとめてみた
1)Gは空が飛べる→方法は不明
2)Gは怪力である→N市の事件では非常に限定的
3)Gは日本語を話す→他国語については不明
4)Gは丁寧に物を壊す→繊細と言える
5)Gは人を殺さないようにしている→YAKUZAの攻撃を封じつつ負傷する程度に反撃している
6)Gは日本人のAという男を守ろうとしているかのようである→YAKUZAとの会話に登場している
7)Gは非常に冷静である→この事件全体を通しての印象
8)Gは拳銃の弾丸を跳ね返す→つぶれた弾丸が日本の警察に保管されている
9)Gは緑色に見える(それ故かグリーンマンと呼ばれている)
10)Gはフルフェイスのマスクをしているように見える(顔を見た者はいない)
補足→木製の大型デスクと金属製の大型金庫の運び方が、微妙に異なっていたという日本警察官の印象が我々の注意をひいた(詳細調査の必要を認む)

結論として、N市の事件ではGはマーヴェルコミックのスーパーヒーローそのものに思える
ただし、その行動はA国製でなく日本製と言えよう
デスモンド・ブライト調査官のF原発におけるGの行動軌跡とのコンシステンシーを至急図る必要を認む
以上
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2018年10月21日

熟年超人の日 stage3 59

L.C.と話し合って、Aという人物について知っていることを話してもらうため、再度県警本部のK刑事を訪ねると、Kは捜査で外出してしまったということで、代わりにD田という東京警視庁の男が現れた(その男はKよりも若く背も高く、階級も数段上のようだった)
『お二人は、パラノーマル・ライジング誌の記者さんとレグマン…、このレグマンというのは?』東部訛りの流ちょうなアメリカ英語を操るその男は、簡単な挨拶を交わした後、そんな質問を向けてきた
『レグマン(Leg man)は、取材記者、もしくは情報収集者です。彼女が日本語で取材し、私がその結果を整理して記事にします』英語が通じる相手だったし、どうやらただの警察官ではなさそうなので、私が答えた

『そうですか。お宅の雑誌を拝見しましたが、超常現象を専門に扱っているようで、本件のような話がそんな観点の記事になり得るとは思いにくいのですが…?』
『はい、今回の事件は大変面白い事象を含んでいると思います。更に、我々A国人が大好きなスーパーマン…おっとグリーンマンですか。ウチの読者が喜びそうな、超人が大暴れしたという話ですからね』
『そうですか。それで、いいネタは採れましたか?』微笑みながらだが、眼光は鋭い。それを隠さずに見せているのは、こちらの正体に気付いているからだろう
『そうねえ、Aという人物を守るために、YAKUZAの事務所を襲ったんだと、Gは言っていたそうよ』L.C.が会話に加わり、核心に迫る人物名をD田にぶつけた

『A、ですか。その人物は我々も把握しています。でも彼は一般人で、貴方方のお好きな“超人”ではありませんよ』平然と答えるD田の表情の奥に、微かにゆらぐものが見えた
『もちろん、そんなことは思っていません。ただ、Gにとってのミズ.ロイスだったら、面白いな、と思ったんです。
そう、なぜGが特定の個人名をあげて、YAKUZAに警告したのか、大いに興味深いお話だと、わたしたちは思ってるんです。D田さん、貴方はそのAという人物と、Gとの結びつきの根源が何かご存知なのですか?』L.C.が女性である特権を活かして、ずばり核心を突く

『およそは。そう、Aという人物は、グリーンマンの窮地を救ったので、その恩を返してもらう約束をしたようなのです』なるほど
『では、Aという人物が望めば、グリーンマンは、Gはなんでも叶えてくれるというのですか。アラジンの魔王のように』
『どこまで適えられるかは分りませんが、まあそういうことだと我々は判断しています。YAKUZAの末端組織を壊滅できる以上の能力を有しているであろうことは、想定しております』歯に衣着せぬという答えだ

『分かりました。それではぜひ、私たちがミスターAに会えるよう、お取り計らいをお願いできませんでしょうか』今度は私がD田氏にお願いしてみる
『それは、残念ながら適えられません。そもそもA氏は民間人なので、我々も任意の事情聴取くらいしかできていないのです。そして、彼は今、どこかに姿をくらましています』慇懃ではあるが、きっぱり協力を断る返答がD田氏の締めくくりの言葉であった
もちろん、それは充分予測された態度ではあったし、こちらも所属をあいまいにしての問いかけだったので、さほどがっかりはしなかった

警察本部を出て、今度はS会の事務所が入っていたビルの管理人(L.C.がインターネットでチェックした)に会うため、SHINKANSEN駅近くのTOWAという、あまり美しくないビルを訪ねた
管理人の部屋は1階にあるだろうと見当をつけ、L.G.が何軒かドアベルを押して廻った。3軒目で中から返事が聞こえ、住人の女性が顔を出した
「すみません。私たち、このビルの管理人に会いたいのですが」L.C.が丁寧(多分日本語としては丁寧なんだろう)に訊ねると、いかにも夜の商売をやっていそうな顔色の悪い女性が「通路の端の100号室だよ」みたいな素っ気ない返事をすると、すぐドアを閉めて引っ込んだ

100号室のドアベル(日本語ではチャイム)は、鳴っているのか鳴っていないのか分からい状態で、3度押してL.C.が手を広げて、どうしよう、という風に私を振り返ったとき、急に中から外に鉄製のドアが開いた
管理人のK谷氏は、おどおどした感じの不健康そうな小男(5′2″くらい)で、上目づかいにL.C.と私を見ていたが、意を決したと言う風に、日本語で話しかけてきた
「なんだね、あんたたちは。外人さんみたいだけど、どっかのキャバクラで働くんで、ここに住みたい、って言うの?」
「いいえ、突然で驚かせてすみません。わたしたちはA国の科学雑誌の記者で、先日このビルで起きた事件のことで、管理人さんのお話を訊きたくて、お訪ねしました。わたしはアリスで、こちらは記者のロジャースと言います」L.C.の見事な日本語の応対に、管理人が驚いた顔になった
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2018年10月07日

熟年超人の日 stage3 58

かのスーパーマンと一戦交えたという日本の若きギャング(全くのチンピラだが)は、訪ねてきた我々がA国人だったことで緊張していたが、L.C.が若く美しく、おまけに日本語が話せることに気を良くして、多弁だった(もちろん私には何を言っているのか分からなかったが、L.C.が後で話してくれた)
彼は肋骨を3本折って救急車で外科病院に運ばれ、それからこちらの警察病院に転院したということだった
以下は、彼の語った言葉の要点をまとめたものである(L.C.に私的に語りかけた言葉を省略)

[俺はガラス戸の陰にいたんだ。ヤスコー(この男は警官たちが現場に駆けつけた時には姿を消していて、その後の消息は知れていない)が、ドアと一緒に引き出されて吹っ飛ばされちゃいやがったんで、びっくりした俺は、思わず勢いでバットで殴りつけたんだ。そしたら、次の瞬間には、もう廊下まで吹っ飛ばされちまってるんだよぅ、あっという間にだぜ]
「殴りつけたとき、どんな感じがしたの?そう、手の感触、というか…」とL.C.
[それが、よくわからないんだよ。確かに肩んとこに当ったんだが、手応え、っつぅの、それが無くって…でも空振りじゃなかった、確かに当ったんだ]
(その後、スーパーマンの見た目の特徴や、事務所の中で起きたことなど質問したが、大した証言は得られなかった)

次に、同じ警察病院の別室に収容されているE田という男に会った。E田は、30才前の組ランク4番手ということだが、左肩をやられた上に、吹き飛ばされた先にあったガラスの応接テーブルで、尻の辺りを大きく損傷していて、ケンコーに比べれば重症で、ぽつりぽつりではあったが、行方をくらましているナンバー2のT野とスーパーマンのやりとりを、かなり鮮明に喋ってくれた

[兄貴は最初、P連合の鉄砲玉か?と訊ねたんだ。そしたらそいつは、自分のことをグリーンマンとか言ってたと思う。俺は肩と応接テーブルにはまっちまった尻が痛くて、聞いてるどころじゃなかったんだが、それでも兄貴が度胸決めて話してるんで、そこに感心してやりとりを聞いてたんだ。
そいつは、Aって奴に手を出すな、みたいなことを言ったが、そのときS原が日本刀で切りつけやがったんだが、あいつのマントが動いて刀が取られたかと思ったら、俺と一緒で吹っ飛ばされて休憩室のドアにめり込んじまった。
その後、T野の兄貴とあいつがなにか話していたんだが、俺は肩の痛さで気が遠くなりやがって、兄貴がチャカ(拳銃のこと)をぶっ放した音は聞いた気がするが、もうその先は覚えてないんだ]
以上がE田の供述だ

さらに続けて、休憩室のドアに突っ込んだというS原という男が収容されている部屋にも行ってみたが、この男はドアに突っ込んだときに気を失っていて、ただ一言だけのコメントが取れただけだ
[Aに害を及ぼす者は許さない、って言ってました]
また、Aという人物の名が出て来た。
注目すべきは、YAKUZA連中がそれぞれ武器を持って、グリーンマンというスーパーマンを殺傷する気で襲ったにも拘らず、いずれも吹き飛ばされて戦線を離脱させられている、ということ
さらに、Aという人物こそが、グリーンマンなる者を差し向けた者に間違いない、ということだろう
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