2018年01月15日

熟年超人の日 stage3 26

[ 4月21日pm5:50 千代田区内幸町1丁目 T電本社10階会議室 ]
午後1時から始まった役員会議は、10分ほどの休憩を2回挟んで、そろそろ6時の終業時刻を迎えようとしている
議長を務めているH本部長は、最後に自身が提出した“F原発収束に関わる超人力活用に関する議案”への認証が、これほどの否定的論議に傾いたことに、あせりと同時に大きな挫折感を感じていた
反対派の主なる論拠は、超人という不確かなもの(特にそれが一個人であること〜宇宙人と言えども)を、会社として国にどう担保できるのか、ということであった
さらに反対派の主張は「その超人が仮に廃炉から炉心を取り出すことが出来、原案通り廃タンカー等に移す際に、飛散する放射能をどうするか」から、「もし核廃棄物を積んだ廃タンカーをうっかり取り落としたら、どうするんだ」などの小学生レベルの反論に始まり、「宇宙人の超人を信じられる根拠は」というもの、仲介のAなる者の人間性への疑念に至るまで、個の存在である“超人”への疑義を持つ者が過半数以上を超えていた

さらに、現在の廃炉処理過程が曲がりなりにも一定の安堵感を国民に与えており、その仕組みを支える企業団が存在している現状バランスへの、否定要素になり兼ねないとする意見も多数出た
完全廃炉に至る道程が全く明確でない現状に、焦燥感を抱いている復興本社のトップとして、また東日本一帯を覆う閉塞感を、でき得る限り早急に晴らしたいHにとって、東京本社に座して小田原評定を繰り返している役員たちに怒りを禁じえなかった
そのうえ、志を同じくしているはずだった社長のN見山が、大勢に押されて、超人起用案を明確に支持してくれなかった事実が、Hの気勢を大いに損じていた
「それでは、本役員会の最終議題である“超人力活用によるイチエフ廃炉問題打開案”は、当面見送りということに結論されました。最後に、N見山社長の総括をお願いして、散会といたします」微かな望みを託して、Hは最後の言葉を絞り出して、最高責任者にバトンを託した

「本日の激論を伺い、わたくしの脳裏を過ぎったのは、あの5年前のイチエフからの第一報の電話です。核という高次元の技術を持って、電力の素とする道を選んだ以上、誰しもが予測しておくべきだった災害に直面して、わたくし達の誰もが脳裏に浮かべた悲惨な未来を、この国にもたらしてしまったのか、という悔恨の念に苛まれた記憶です。
その後の五年間に渡る現地担当社員の苦闘、苦渋の選択をしてくださったF県民の皆さま、多大なる支援を頂いた国や県、市町村行政に関わられる皆さま、などなど今のわたくしどもが、幾重にも膝を折って御礼申し上げなければならない、そしてお詫びを重ねなければならない方々がいらっしゃいます。
にもかかわらず、文字通り天から与えられたかのような、此の度の僥倖を、簡単に手放す訳にはいかないと思います。ただ、諸氏の心配される点につきましては、あらゆる方法で安心の証明をすべきと心得ます。
よって、本議案を提案されたH本部長主導の、“超人力活用の廃炉作戦”プラス“安全保障計画”を早急に立案して頂いて、後日の役員会にお諮り頂くことで、本日の多岐に渡る激論を、真に実りある論議としたいと思っておりますので、その意をお汲み取り頂き、これにて散会といたします」
さすがN見山社長、うまく締めくくるものだとHは感心し、思わずほっと吐息をもらした
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2018年01月06日

熟年超人の日 stage3 25

私がビデオ遊びに興じている同じ頃、成田空港2階の入国審査カウンターを、なんの問題もなく通過した米国籍のデイヴィス夫妻は、手荷物を受け取った後、第1ターミナル1階の到着ロビーで、目印の黄色いパナマ帽を被った口髭のあるアメリカ人を見つけ、大げさに喜びを表しながら、近寄って行った

『やあ、久しぶりだなジョー!僕だよ、ロジャーだよ』その声に、出迎えていたアメリカ人は急に満面の笑みを浮かべてロジャーと名乗ったマシューに向かって、手を振る
『いやー見違えちまった、かれこれ20年ぶりだな。ところで、隣りの美人は君の奥さんかい』
『そうさ、我が愛しのアリスを紹介するよ。アリス、こちらが昔海軍で一緒だったジョー・ハドソンだ』
『どうも、始めまして、ロジャーの妻のアリスです』少しだけぎこちなく手を伸ばして、ジョーの手を握る
『いやぁ、これはこれは、こんな美人と握手するのは久しぶりだよ』少々不謹慎な眼つきでアリスとして紹介されたラトゥーヤに視線を向けた後、ロジャーと名乗ったマシューに視線を戻し、ここは東京から離れているから、専用電車で東京に向かうよ、と言った

三人は、予約してあった成田空港駅16:19発の成田エクスプレス36号に乗車し、約1時間後、東京駅に着いた
大勢の人々が忙しく先を急ぐ流れの中を歩きながら、ロジャーことマシューは、ここはニューヨークみたいだな、と呟く
キャスター付きのサムソナイト(マシューは黒、ラトゥーヤは赤の)を引っ張りながら、荷物を持たずに身軽に先を行くジョーの後を、はぐれないように進むのはいささか難儀だった
『おいおいジョー、妻が大変だから、もう少しゆっくり歩いてくれよ』
『すまない。だがもう少しで、大使館の車に着くから、もうひとがんばり行軍してくれ。奥さんには申し訳ないが』一瞬立ち止まって、作り笑顔でそう言うと、すぐ歩調を変えずに歩き始める
やがて、Yaechika Westと書かれた表示板があって、ジョーが係員にカードを渡すと、目の前の鉄製ドアの奥で機械音が響き始める
『この国は、限られた土地をとことん有効利用しなければならないんで、パーキングはこうした高層式のが多いんだ』ジョーが補足している間、ラトゥーヤは息を整えている
車の積まれたエレベーターが停止し、鉄のドアが開くと、黒塗りのキャデラック ATSセダンが現れる
『さあ、荷物はトランクに、そして君らはこちらに乗ってくれ』どこに居たのか、多分大使館の下級職員らしき人物が現れ、マシューたちのサムソナイトを車のトランクに収めてくれる

いかにもアメリカ車らしい、ゆったりしたシートに二人が腰を落ち着けると、車は動き出し、助手席に座ったジョーが、後部座席を振り向いてなにやら紙包を差し出す
『知ってるように、この国では銃器類は完全ご法度なんだ。で、こちらで用意しておいたこれを、使ってくれ』重い紙包みをロジャーに渡しながら、ジョーがさりげない声で言う
『それは、僕らも知っている。これは、グロッグとベレッタ、ナノだな。こっちでこれを用意してくれたってことか。どうも、ご親切にありがとう。アリス、この可愛らしいやつは、君のハンドバッグにでも入れるといい』オーストリア製のグロッグ19は、重さ595g銃の長さは174oで19発の9o弾を装弾できる。マシューが本国で愛用しているベレッタ92と比べると、随分軽く装弾数も4発多い
アリスことラトゥーヤに渡したベレッタ ナノは、女性の護身用ピストルとして普及しているもので、重さ562gとさらに軽く、全長143oとかさばらないが、装弾数は6発と、いざというとき用の仕様になっている

『君たちのほかに、ラングレーからはもう1名、デスモンドという情報本部の調査官が派遣されている。彼は言わば表の調査官で、日本の政府関係者と会ったり、原発収束作業状況の調査をする。君たちは、今回の事案のキーパーソンであるAという日本人と、その周辺を調査することになる。Aの周辺には例のスーパーマンや、日本のYAKUZA、そして日本の公安警察がからんでいるので、武器の携帯を認めた訳だ。もちろん、その銃はこの国を離れるときには、こちらに返却、もしくは廃棄処理してもらう』笑顔をやめたジョーの口調は、冷徹な響きを帯び、マシューとラトゥーヤにこの任務が、そんなに軽いものではないことを表していた
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2018年01月02日

熟年超人の日 stage3 24

「Aさん、Gに頼めることは、日本国内のことだけなんでしょうか」おっときたぞ、それは、私も考えていたところだ
「それは、世界の難民や、独裁政権の横暴や、宗教がらみの爆弾テロみたいなことですか?…それについては、Gの伝えてくれたイメージのようなものからの私の推測ですが、そういった現在の人類の精神レベルで起きている問題には、不干渉とするのが宇宙の先進星人の行動原理のようなんです」このセリフは、ジュブブの言っていることからの推測ではあるが、今のところ判断を任されている私の個人的見解でもある
「そうなんですか…」Dの質問は、トーンダウンしてそのまま途切れてしまう
「で、その手のことはあんたが頼んでも、あいつはやってくれないって、そう言うんだな」重い声で、K刑事が呟くと、続けて話し始める
「まあいいじゃないか、やってくれることと、やってくれないことがあっても。とにかくF原発は片付けてくれるんだろ」と、重ねて念を押してくる
「ええ、現地にも行って、破壊された炉心から、デブリだけじゃなく、放射能汚染された廃材なんかも、タンカーみたいなものに積み込んで、太陽に捨てに行くと言ってました。いや言ってたんじゃなくて、そう感じました」一人二役って難しいもんだ
「そんなに具体的に、進んでるんですか」Dがようやく口を開くと話を続ける
「そう言えば、O倉さんもなにか知ってる口振りだったなぁ。なにか政府筋から、スーパーマンに関する民間のネット動画を消し込む作業が進んでいるとかで、F原発のこともN市の(や)事務所が壊滅した事件も、報道が伏せられてるんだそうですよ」なるほどそうか、それもあってT電のH本部長の歯切れが悪くなっているのか(と合点がいった)

「まあ、大きな事件が起きれば、上の方は必ずごたごたするさ。そういうもんだ。なにせ、どこかがうまくいきゃあ、それを放っておいた誰かが責任問われるし、うまくやりたい奴らは、後から船に乗り込みたがるからなぁ」K刑事がしたり顔で補足する
「そこに風穴開けて、大衆の声で正しい方向に持って行くのが、我らマスコミですから」Dの目に生気が戻る
「私もGに、そのあたりをしっかり説明して、こちらのごたごたで嫌にならないよう、うまくフォローしておきますよ」私のフォロー発言を潮に、ランチミーティングは終わり、三人は別れ、向こうの席に居た公安刑事は私に、それからいつ来ていたのか、もう一人公安らしき人物が、Dの後を追うように、一番最後にカフェレストランを後にした(K刑事はお構いなしというところか)

皆と分かれ、公安の尾行者を連れて、K市のアパートに戻る前にN駅に隣接しているデパートの紳士服売り場を覗くことにする(これから先、様々な人物と出会わなければいけなくなりそうで、超人化して以来、身が引き締まってしまったので、定年前の一張羅が身体に合わなくなってしまったからなのである)
さすがにデパートの紳士服は、ショッピングモールの吊るしとは違い、お値段が高めで気後れしたが、思い切ってウールの海外ブランドの服を何着か試着してみる
これも、T電のH本部長さんの100万円のお蔭だ。だが、リポーターのDさんが言っていた話が本当なら、この後どうなるか、いささか心配でもある。会社が設立できたら、当座の前金、というか手付金として1億円ほど請求してみようと思っていたのだが、さあどうなることやら(マスコミが報じるF原発収束にかかる費用概算からすれば、問題ない金額に思うがなぁ…)

代金を支払っているとき、公安の刑事さんがどんな反応をしているか、とても気になっていたが、目の前の紳士服売場の担当者に、私が超人力を発揮しているところを見せる訳にはいかないと、我慢する(一度試しておかないと、今後に支障をきたしそうだ)
そこであることを思いついたので、デパートを出た後、N駅西口前にある家電量販店に寄って、3万円くらいのビデオカメラと三脚を購入して、お買物袋を下げてアパートに戻る
部屋に戻ると、早速三脚を立て、ビデオカメラを装着して、ひとしきりカメラの前で周囲偵察、透視を試みてすぐに画像をチェックして、自分がどんな顔になっているかをチェックしてみる
その結果、周囲偵察時には手を額にもっていって、なにかを思い出そうとするポーズをとれば、表っ上の変化を隠せることが判明、また、透視眼を使うと、眼に異常に力が入り、変な風に見えること、聴覚に集中すると、表情が無くなって、やはり変に見えることが分かった(デパートでやらなくて正解!)

やってみて、結構おもしろかったので、シチュエーションを変えていろいろ試すうち、周囲偵察は歩きながらでも、普通の表情でやれること、聴力も慣れたら人目につくような変化は起きないことが分かる(透視眼は表情の変化なしは難しい)
その後、思いついたので素早く動くところ、影スーツとGスーツを着脱するところも録画し、どんな具合に見えるのかをチェックしてみた(変わる瞬間は想像通り、ボヤッと画面が揺れるくらいでうまく映らない)
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2017年12月24日

熟年超人の日 stage3 23

「そのときの感覚をひとことで言うなら、安心感、みたいな感じ、と言いますか…。とにかく、よくSF小説に出てくる、頭の中を覗かれるような、ではなく、共感できて、分かりあえる感じ、…まあ、そんな感覚でした」
「それは分かりましたが、それでAさんは、その初めてのテレパシー状態の時に、F原発のことを念じた訳ですか」
「い、いやぁ、そのときは、念じたというより、Gのなにかやって欲しいことはないか、みたいな想いが感じられて…。私としては、なにか個人的なことを願う、というより、どんな大きなことでもやってもらえそうに思えたので、ふっと浮かんだのが、F原発事故の後処理でも、なにか手助けしてもらえるんじゃないか、ということだったように思います」
「それでは、Aさんがこんな具合に、こうしてくれ、と頼んだんじゃあなくて、彼が勝手にあそこで対応した、ってことなんですね」Dが、念押しするように言う
そうか、ここで私がF原発でGが行ったことには、全く関わっていないとすると、これから先、私はただの触媒みたいなもので、T電も私と交渉するより、Gと交渉すべきだと考えるかも知れない

「いや、F原発を思い浮かべた後、なにかその先にもGと意見交換したような記憶が微かにあるのですが…。確か、人間は放射能に弱いから、そこには配慮してくれ、みたいなこととか、みんな組織で動いているから、そこにも気を遣った方が良いとか、そんな思いを伝えたと思います」…これでいいかな
「しかし、Aさんが助けたときのG、ですか、彼はすごく弱っていたんですよね。そんな彼がスーパーマンだなんて、よく分かりましたね。それとも、なにかすごいところを見せてくれたんですか」鋭いDのツッコミ
「それは、最初の、助けてあげた後、だと思うんですが。そうGはもう元気になっていて、私をテレパシーのような感覚で包んでくれたとき、自分はこんなことができるんだ、みたいなデモンストレーションのようなことをイメージで、私に伝えてくれたんです。伝え終わったGが、まるで映画のスーパーマンみたいに空に飛び上がったのを見て、私は全部を信じたんです」
「もういいんじゃないの、Dさんよ。俺は、Aさんのこと信じられるよ。そこそこ刑事なんてキャリア積んでると、嘘は大体分かるんだ」K刑事が味方になった
「いや、すみませんAさん。この質問は、どっちみちウチのチームから出るでしょうし、警察さんも公安さんも、そこのところをしっかりしとかないと、これからどの方向に進めればいいのか、分からないでしょうから」本当にすまなそうな表情で、Dは頭を下げた

その後は、随分打ち解けた雰囲気になった。向こうの席の、公安刑事も気にはなったものの、思い切って私は二人に話しかける
「で、どうでしょう。私も少しずつではありますが、Gの力をもっと世の中の役に立てられるんじゃないか、と思うんですが、そうそう映画や小説のように、タイミングよく事件や大事故が起きる訳でもありませんし、かと言って、この日本や世界をパトロールして下さい、とも頼むわけにはいきませんので、お二人に、なにかGに頼めば問題解決が簡単、と思えるようなことを、教えて頂く訳にはいかないでしょうか」
「そりゃ、あんなスーパーマンにお出まし頂くことができれば、即解決、みたいなことがあればなあ…」
「そうですよねぇ、後のことまで考えると、ねえ。それに、彼に頼む場合の条件、みたいなものはないんですか?」二人共、真剣に考えてくれているのは分かるが、思ったより反応がにぶい
「どうなの、あの九州の大地震の手伝いにいってもらうとかは」KがDと私に意見を求めて来る
「あのお城をなんとかしてもらう、とか…。駄目かな、駄目だな、ああいう歴史的な建造物は、その知識がないと触れないだろうしなぁ。市民の家を直すとか、がれきを片付けてもらうとかも、それぞれぶんたんがあるだろうし、Gさんって、何人もいる訳じゃないんでしょう。こっち方面には」
「そうですねぇ、多分一人で、だと思います。それになにか担当区域が結構広いみたいで、私がテレパシーで頼めるのも、この太陽系近くにいるときだけ、みたいなこと告げられていますし…」そう、際限なく世の中の問題に関わる訳にはいかないだろうなぁ…
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2017年12月15日

熟年超人の日 stage3 22

「一体、なにが知りたいんです?」思い切って、核心を突いてみる
「どこまで、グリーンマン、ですか、彼、いや彼女ってこともありか、まあどっちでもいいですが、彼のことをご存じなんでしょうか。特に、彼が現れた理由について、聞いていらっしゃるんでしょうか」思いがけないDの質問に、虚を突かれてうろたえたのは、私の方だった
Gとの関わり合いの発端を、Gの危機的状況を救ったということにしていたが、私があまりにスムーズにその関係に浸っていることの不自然さを指摘されたようで、私は少なからず動揺してしまう
そりゃそうだよな、助けたお礼とは言っても、見ず知らずの異星人(宇宙から来たんだから異星人だ)の“感謝の気持ち”を、素直に信じていられるのか、少々説明不足だった。
更に言えば、Gの地球を訪れた目的や、なにゆえ危機的状況に陥ったかの理由を、私が詮索していないのは、なぜ?…と私だって思う。そこをしっかり補完しておかないと、今後の私は常に疑いの目を向けられそうだ

「それは、テレパシーって言うんでしょうか。頭の中にGの…、ちなみにGはグリーンマンのGですが、Gの考えが入って来たんです、はっきりと。それによると、銀河宇宙の周辺域の太陽系にある地球の、最近の変化を実証確認するために、遠い銀河中心域から調査に来ていたらしいんです。その後がどうも、よくは分からないんですが、地上調査時に彼らにとっての“禁忌環境”に接触してしまって動けなくなった、というようなニュアンスのイメージが頭に浮かびまして。その後のことは全く覚えていないんですが、どうやら契約のようなものを結んで、私がなにかやらされ、Gは危機的状況を脱することができた、らしいんです」…よくも長々とSF系マンガで見たような話が、出て来るもんだと我ながら感心する
(どんなにボロが出そうな時でも、なんとか言い抜けられるのが一流の企画マンである by M田井社長)

「そう、なんですか。要するに、なんらかの理由で彼が弱っていたところを、助けてもらうにあたって、なにか契約のようなものを結んで、その契約に従ってAさんの言うことを聞いてくれる、ってことですね。…するとAさんがキーパーソンってことなんだ」(最後は小さく呟いたようだが、私に聞かせるように言ったのかも)
「それで、あんたはF原発の事故跡を片付けてもらいたい、って頼んでくれたんだな」Kが話に割って入る
「そうです。その時は、ほかに思いつかなくて…。ただ、ご存知かどうか分からないのですが、当事者のT電さんに話せば良いのかと思っていたんですが、なかなか関係機関同士の調整があるようで、今は、連絡待ちの状態なんです」有償であることは、伏せておくのが良さそうだ
「で、どうなんでしょうAさん。グリーンマン、Gですか。Gは、今はなにをしているのか、お分かりなんでしょうか?そのテレパシーで、把握されていらっしゃるんでしょうか。…すみません、この会話は録音させて頂いてよろしいんでしょうか?」Dはそう言うと、胸ポケットからICレコーダーを取り出した

この席に着いてから、なにか変な感じがしていたが、これが作動していたからだったのか、と得心しながら同時に、一般人Aとして人と接触している時の危うさに気付いた(Kと逢った時から、超人感覚をほぼ閉じていたから)
「構いませんが、それなら食事を終わらせますから、ちょっとお待ちください」それはそうだと、Kも相槌を打ち、Dもすみませんと言い、私は1/3ほどになったハンバーグにナイフを入れる
私が食事を済ませるのを見計らったDが、コーヒーを3つ頼み、ウエイトレスが持って来たところから会話が再開される
「で、さきほどの…」Dに皆まで言わせずに、私が回答する
「先ほどのご質問ですが、テレパシーと言っても、正式にそういうものかどうか、私も分かってはおりません。ただ、昔読んでいたSF小説に、そういうのがよく出て来ていたもんですから、便宜上そう言っているだけなんです。で、常にGと繋がっている訳ではなく、私が強く念じたとき、それも神経が集中できる環境で、私がGに通話を呼びかけ、通じるとGの友好的な、暖かいような思念が私を包むんです」
「思念が貴方を包むような感覚、ですか」DもKも、離れた席の公安らしき人物も、皆が私の話に引き込まれている。上手くいくときのプレゼンの調子だ
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2017年12月11日

熟年超人の日 stage3 21

N駅新幹線の改札口でK刑事と会って、Dリポーターが出て来るのを待つ間、小声でK刑事に
「Kさん、あっちの柱の陰に公安の人がいるのご存じです?」と、できるだけ自然な調子で話しかける
「ああ、分かってる。俺もどうやら公認されてるみたいで、署になにも言って来なくなったんだ。だから、まあ気にせんでいいよ」しらっとした顔でそう答える
なんだか、警察同士のなあなあにつき合わされているようで、私としては少々面白くなかったが、そこは大人の思いやりで、感じてないことにしておくことにする
「Dさんって方は、話の分かりそうな人なんですか?」含みを持たせてそう尋ねると
「ああ、年は若いんだが、最近のマスコミには珍しい奴で、まともなんだよな話が」と、真面目な顔で言う
そうなんですか、と話を続けかかったとき、K刑事の視線が改札に溢れ始めた人の群れの中に注がれているのが分かった。どうやら、そのDさんが現れたようだ

背が高い。大勢の降車客の顔より、ひとつ上に顔が見える。180p以上あるのは、まず間違いないだろう。少し面長な顔は、テレビで観ているDリポーターより、人が良さそうな好青年に見える
一瞬遅れて見知った顔を見つけて、片手を挙げ、やあ、どうも、と周りを気にしない大きな声をあげる
改札を出たDにK刑事が私を短く紹介した後、3人でN駅ステーションビル14階のカフェレストランに向かう。当然、公安の刑事も後を付いてくる
14階の各レストランは皆、お客で混んでいたが、どうやらK刑事は事前に予約をしていたようで、スムーズに席に着くことができた。私としては、まがりなりにもテレビに出ているDリポーターに人の眼が集まるのかと心配していたのだが、店のスタッフも周囲のお客も、誰れも気がついていないようだ

リポーターのDは、公安の監視に気付いていないようで、ウエイトレスの持って来たメニューをさっと目を通してから、隣りのK刑事に差し出す。Kがメニューを受け取ると、ランチタイムメニューを見て、私はこれでいいや、と言いながら向かい側の私の目の前に、メニューを置く
それじゃあ私も同じで、と言ってDにメニューを戻すと、Dがウエイトレスを呼んで、料理を注文する
それから急に真顔になると、テーブルの真ん中に顔を寄せて小声で
「Kさん、あっちの席にいる人、公安ですか?」と訊く(なんだ気が付いていたのか、さすがリポーター)
「そうだよ。まあ、ある程度いろいろ分かっちゃってるから、いいんだよ」これも小声で返答する
「Aさんは大丈夫なんですか」眉根を寄せた心配そうな顔
「ええ、私もあちらの上司の方には、もうお話ししてますから」さらっと返答しておく

そこへ料理が運ばれてきたので、会話は一旦中断する。わざと紙ナプキンを落として、さりげなく公安さんをチェックすると、どうやらコーヒーが運ばれているようだ
KとDを目の前にして、周囲偵察なんてできない(周囲偵察中にどんな怪しい顔になっているか私は知らない)し、K刑事が困らないと言うなら、放っておいてもいいだろうが、刑事ドラマ好きとしては、ちょっと見ておきたいのだ
「実は、私がリポートしている午後のニュース番組の企画会議で、Aさんが関わられているスーパーマンのことが取り上げられまして…」そこまで言って、最後のハンバーグの一切れを口に放り込む
「はあ…」と、生返事で出方を窺う私
「ほおー、午後トクだったかね、お宅が出てる番組」Kが話に入って来る
「いや、午後トクは他局さんですよ。私の出ているのは『昼報』の方です、O倉キャスターの」少し笑いながら、それでも真剣にKの誤りを正す
「それで、企画会議でなんと…」話を元に戻す

「いやぁ、企画会議で出たと言っても、まだネットで少しざわついてるくらいですから、どんな切り口で当るか、まだ分かってないんですが、私思うに、今の社会にはスーパーヒーローが必要なんだと思ってるんです」急に熱い口調になるD
「ちょうど、別件でこちらのKさんとお近づきを得て、Aさんがそのスーパーヒーローと連絡が取れる方だと伺って、なにか取材のヒントでも、と思っている訳なんです」話の筋は通っているようだが、なにか違和感を感じる私。(随分経ってから、あのときは別に考えていること“影との関わりも探りたかった”があったんですと、Dから打ち明け話を聞くことになるのだが…)
「まあ、Kさんからお聞きになられているなら構いませんが、まずスーパーヒーローの名は、グリーンマンと言います。私とは、ひょんなことから関わりができて以来、何と言うか、私の願いを聞いてくれるんで、今の日本で一番の問題だと私が思っている、F原発事故の収束に力を借りられるか訊いてみたら、早速動いてくれまして、今、T電の幹部の方と、具体的な方法や、実行日について詰めているところなんです」いろいろぼやかすところはばやかしながら、現時点の状況を説明する
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